路地から見たまちづくりの作法
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開会挨拶

路地空間の魅力について

住宅・都市整備公団

西斗志夫

 

改行マークJUDI関西の西です。 日頃は大規模開発の計画・企画を仕事としているのに、 なぜ路地をテーマに選んだのか、 その企画趣旨について説明します。 路地の魅力を私なりにまとめましたので、 今回の問題提起として聞いていただければと思います。


路地の魅力

(1)空間的狭さが魅力

改行マーク路地はまず、 空間の狭さそのものが魅力ではないかと思っています。 車が進入しない安全な空間であるうえ、 狭さ故の囲われ感、 安心感があります。 また一方で、 閉塞感、 不安感を呼び起こす心理的な面白さもあって、 それが人間の原初的な感覚に訴えるところではないでしょうか。 おそらく、 その辺の魅力が文学や映像文化に反映されやすい理由であるでしょうし、 人と人、 人と動物の親しみやすさの原因になっていると思います。

改行マークよく「尾道の猫は馴れ馴れしい」とか「人から話しかけられることが多い」とも聞きますが、 それもこういうことと関係していると思います。

(2)路地形状の複雑な曖昧さ

改行マーク路地という一種の道路的空間の形状の不整形さ、 境界の曖昧さ、 そして利用形態の複雑さと曖昧さも魅力に挙げられます。

改行マークこのような路地は特にアジア地域で目立ちます。 例えばアメリカに行くと路地はチャイナタウンにしかありません。 路地そのものが文化のありようとも関係してくるのだろうと思います。 今回パネラーの皆さんに世界各国の路地との比較を論じてもらおうと思ったのもここにその背景があります。

(3)長い時間をかけて形成されたまちである

改行マーク路地は非常に長い時間をかけて形成されてきたので、 住む人にとってなじみがあり居心地がいいと言えます。

(4)地形との一体感

改行マーク路地は複雑な地形になじむように展開していますので、 大地・地形との一体感という魅力があります。

(5)路地の持つ野性味

改行マークこれは近代都市計画の目で見ると「野蛮」と言わざるえない側面です。 いきなり階段になるとか車椅子も通れない細い道があるなど危険性をはらんだまちです。 それが路地空間にワイルドな魅力をもたらしています。

改行マークこれは価値観や美意識に関わる問題です。 非日常的な災害に対応できる安全なまちをとるのか、 日常的な楽しみをとるのかという現代人の価値観や哲学を問われることだと考えています。

 

改行マーク以上、 私なりの観点から路地の持つ特性や魅力をまとめてみました。 パネラーの方々にはそれぞれの問題意識で路地空間から見たまちづくりの作法について語っていただこうと思います。


都市環境デザイン会議について

改行マーク今回の主催者である都市環境デザイン会議は、 土木、 建築、 造園、 都市計画等の実務家や大学関係者によって1991年に結成されました。 分野を越えて空間づくりを考えるいわばボランティア的な集まりで、 中間領域的な部分を研究したり意見を交換していますから、 今回の尾道の路地は打ってつけの題材だと思います。

改行マークなお今年は尾道市市政百周年にあたり、 今回のセミナーも記念事業の指定を受けて尾道市から多大なご協力をいただきました。 改めてお礼申し上げます。

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