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図1 町鑑の例『京雀』(1665、 京都大学図書館蔵、 部分) |
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図2 諸国買物調方記の例『天保版買物独案内』(京都、 1692、 部分) | 図3 浪花料理屋番付『浪花料理屋家号附録』(1840、 部分) | 図4 『浪花市中はんじょう家玉づくし』(1840、 部分) |
そうしたものが発展したものに『諸国買物調方記』(1692、 図2)があります。 店名・地名・商標を記したものが職種ごとにずらっとならんでいます。 こういったものが各地で出版されました。 この他、 ハンディな料理屋番付(図3『浪花料理屋家号附録』)や名店番付(図4『浪花市中はんじょう家玉づくし』)のような狙いを定めたものも登場しています。
これらのことからは、 買い物の手引きというより買い物そのものを楽しむ傾向が出てきており、 町の有名店舗が名所になる状況が都市という場所で生まれてきたと言えるでしょう。 都市における店(ミセ)の存在価値が高まってきたと読みとれるのです。
この頃のガイドブックの特徴は、 それ以前のガイドブックのように名所旧跡や古い建物だけを取り上げるのではなく、 その回りの沢山のお店(飲食店、 みやげ物屋や一般物販店など)も紹介していることです。 それ以前はお店が紹介されることはあまりありませんでした。
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図5 1985年の「ブルーガイドパック・シティ」シリーズの分析結果 |
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図6 1987年の「エアリアガイド・タウンガイド」シリーズの分析結果 |
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図7 1998年の「エアリアガイド・タウンガイド」シリーズの分析結果 |
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図8 1998年の「エアリアガイド・タウンガイド」シリーズの分析結果-補正版 |
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図9 ミセの分布図-大阪市 |
図10 ミセの分布図-京都市 |
図11 ミセの分布図-神戸市 |
このような分析結果から、 京都では伝統的な名所旧跡と諸種のお店が紹介の中心ですが、 大阪・神戸では、 新しい建物が誕生するとそこが新しい名所となって店が集まってくるのではないかと考えました。 言い換えれば、 店は新名所と一体化して開発されるという構造があると言えます。
大阪・神戸ではそうした開発が都市の一部に集中していますので、 観光機能の観点からは都市域の一部しか使われていないようです。 それに対して京都では、 社寺などの旧名所の回りに店が広がり、 それ以外の市内にも老舗がぱらぱらと散在していて店そのものが名所化していると読みとれます。 それゆえ、 都市域を広く使い、 観光のエリアが広くなっています。
以上が、 観光ガイドブックを分析して読みとれた都市の姿です。