都市案内の研究
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2. 案内図分析
案内図分析は駅構内に掲げられる広告板に描かれている案内図を集め、 そこに見られる傾向を分析しようとしたものです。 案内図は372件集めることができました。 その案内先、 つまり目標地に至る目印となるポイントや通り名を案内図から読みとりますと、 2245件になりました。 大阪市内、 京都市内の地下鉄の他、 阪急千里線などの郊外地の案内板を集めています。 この作業を行ったのは震災直後でしたので、 神戸地域は収集できませんでした。
都心地域
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図12 案内図の例1 地下鉄御堂筋線・心斎橋駅/同・本町駅
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図13 案内図の例2 地下鉄四ツ橋線・四ツ橋駅/同・本町駅
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図12は、 地下鉄御堂筋線で撮ったものです。 上の案内板は心斎橋駅、 下は本町駅の案内図です。 大阪の都心の場合、 碁盤の目状に道路の構成がはっきりしていますから、 通り名が目印になっていることも多いのですが、 同時に建物名称を示すことで目印にしています。 図13は地下鉄四つ橋線の駅です。 上の案内図では通り名は大通りだけを記して、 あとは建物を目印にして誘導しています。 下の案内図も大きな道路名と建物名を示しているという構図です。
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図14 案内図の例3 地下鉄烏丸線・丸太町駅/阪急京都線・河原町駅
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図14は、 京都の地下鉄駅の案内図です。 京都も大阪と同様、 町の中心部は碁盤の目のようになっていますので、 主に通り名で誘導していますが、 大阪と違うのは細い道も記載していることです。 広い丸太町通りの他、 幅員の小さい衣棚通りや竹屋町通りもあげられています。 建物名はあげられていません。
大きなつかみ方から言うと、 大阪の案内板は通り名+建物名で構成されていますが、 京都の案内板は通り名のみで誘導していく傾向があるようです。
郊外地域
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図15 案内図の例4 阪急京都線・相川駅/同・総持寺駅
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図16 案内図の例5 阪急千里線・関大前
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では、 郊外地域の案内板はどうなっているかを示します。 図15は阪急京都線の相川駅と総持寺駅の案内板です。 道路体系がはっきりしていない土地柄ですから、 通り名ではなく建物の名前で誘導していく傾向にあるようです。 また、 商店街が通りの代わりにあげられることもあるようです。
図16は阪急千里線の山田駅のもので、 なかなか複雑で到達しにくそうですが、 沢山の建物名や施設名で目標へ誘導していることが判ると思います。
案内図で見る各都市比較
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図17 大阪、 京都、 神戸のJTB支店の案内図
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このように案内図も、 その地域性によって誘導の仕方が変わっていくことが、 お分かりいただけると思います。 図17は新聞広告にあったJTBの案内図ですが、 先述の傾向と同じく京都、 大阪、 神戸の違いがおわかりいただけると思います。 京都は通り名、 大阪は通り名+建物、 神戸は建物を目印とするパターンです。
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図18 大阪、 神戸、 京都のホールの案内図
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図19 目印施設の類型別構成比/4地域別―鉄道駅ホームの案内図分析
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図18は各都市のホールの案内図ですが、 これも同様の傾向を示しています。
そうした駅ホームの案内図分析をまとめたのが図19です。 大阪・京都の都心部では通り名で示すインフラ系がメインになっていて、 大阪では幹線道路の他、 ビル、 銀行が目印になる傾向が強く、 京都では幹線道路、 細い道路を組み合わせて誘導する傾向にあります。
これに対し郊外では主に建物、 それも公共的なものや商業的なもの(スーパー、 百貨店)が誘導の目印として使われることが多くなっています。 また、 ニュータウンでは交通分岐点も目印として多く使われています。
このように、 案内図の描写法には地域ごとに特性があり、 そのことは同時に各地域の空間的目印の違いや都市構造の違い、 さらに都市空間のわかりやすさの相違をも示していることがわかります。
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