観光都市は、 「案内人なしでも安心して往来できる観光行動」と「多様な楽しみ方が保証されるしくみ」が都市域に広く行き渡っていることが基本条件ではないでしょうか。
そのためには、 (1)都市の目印になるようなものがきちんと配置されていることや、 (2)名所的なもの(行けば楽しい場所)がその地域に数多く拡散的に広がっていることが必要です。 この二つの条件が満たされていれば、 観光都市として成り立ちうるというのが私の仮説です。
例えば、 京都のような都市は、 全体としては大構造としてのわかりやすさを持たない都市です。 町通りが無数に組み合わさって出来ていますから、 きちんとした単位がなくわかりにくい。 それを補っているのが、 道路名称をなどを示すきちんとした標識などのハードと町の人に聞いて教えてもらうというソフトな部分であるような気がします。 わかりにくさをソフトで補っているのも、 小構造の魅力でしょうし、 今取り組むべきこともソフトの充実だと思います。 都市の魅力の引き出し方としては、 そういう方向性も考えられるでしょう。
大阪に関して言えば、 人が集まる場所、 つまり観光拠点的な場所が狭くなっているということが指摘できると思います。 それ以外の場所にあまり人は行きません。 ですから都市の魅力という点からは、 都市域を広く魅力化する必要があります。 わかりやすい町ですが、 わかりやすさの減少は覚悟して新名所を各所に整備していくことが、 都市を広く観光化する方法として考えられるのではないでしょうか。
観光客がウロウロとしかし安心して歩き回れる町は、 住み手にとっても快適な町であると言えます。 見知らぬ人が訪問しようとは思わない閉鎖的で魅力のないまちから、 開放的なまちにしていくためには、 観光客を迎えるに足る都市整備が必要です。 そういったまちを都市域のすみずみにまで広げていくことは、 これからの都市のひとつの方向であろうかと考えます。
都市の魅力という点で見るとどれも一筋縄でいかない話なのです。 都市案内もいろんな材料(地図だけでなく町のサインや建築物、 カーナビ)がありますから、 もう少し網羅的に考えると都市の魅力を引き出す概念装置ができそうですが、 今日はとりあえずその前の段階で考えてみました。 以上です。
3. 都市の魅力化策
観光都市の条件
今お話しした案内板は「何かの目印で人々をうまく誘導していくこと」、 先の観光ガイドブックは「どういう場所が名所として認識されるのか」ということをお話したものですが、 これらをうまく組み合わせると観光するに足るような魅力ある都市をどのようにつくるかという構図が描けるのではないかと思います。
共存のしくみを持つ都市
地表面をウロウロと散策、 観光する人びとにとって、 どこに何があるのかが大まかにでもわかる都市の枠組みを大構造、 地区ごとにある細い街路や建築を小構造だとします。 大構造は目印となることができますし、 小構造はその地区の特性にあった個性や魅力を発揮すれば名所となりえます。 それらをうまく組み合わせると歩いていてもよく判り、 かつ心地よい都市空間になるのではないでしょうか。
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