都市案内の研究
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1. 案内を根底から考える

究極の「都市案内」にみる案内の形式

改行マーク究極の都市案内として『サラエボ旅行案内』を挙げたいと思います。 これは史上初の戦場都市ガイドという非常に刺激的な本です。

改行マークご存じのようにサラエボは狙撃兵に包囲されて戦場と化してしまったのですが、 それを報道していたテレビマンがこれを作成しました。 体裁は観光ガイドを踏襲しているのですが、 中にはいかにしてこの都市で生き抜くかという情報がびっしり詰まっています。

改行マーク普通の観光ガイドの形式であるが故に、 サラエボの異常さ、 戦場の悲惨さが印象づけられるわけです。

改行マーク私が感銘を受けたのは、 本の中にチラチラ現われるユーモア感覚で、 例えば「電話をかける」という項目を見ると「国際電話はしばしば通じないだろう。 その時は笑うしかない」と書いてあります。 悲惨な状況をいかにユーモアで理解するかという形式があるわけです。

改行マークこれは都市案内の究極のスタイルだと思うのですが、 誰もが知っている都市を紹介するとき、 どんなスタイルで、 どんな情報を載せるかによって、 「伝えたい都市像」をより強く打ち出すことができると思います。

改行マーク判りやすい例では、 大学に新入生が入ってくる4月頃になると、 書店には「初めての一人暮らし」など都会暮らしのガイドブックが並びます。 戦場ほど過酷ではありませんが、 大阪で生き残ることも大変なのでしょう。 一人一人が都市に対して持つイメージは異なりますから、 人々が都市情報を求めるとき、 「案内」という形式があると安心して受け入れられると思います。

改行マーク環境デザインの点から考えると、 そうした都市案内の形式をどれだけうまく利用できるかを、 媒体としての可能性を考えていく発想が大切ではないかと私は考えています。

改行マーク都市ガイドの形式は、 先ほどの田端先生のお話で紹介されたようにかなり昔からあったし、 もちろん日本だけでなく世界の各都市に案内の形式がありました。 そのあたりを比較すると、 文明史的な考察もできるし、 案内という形式に関わる諸問題が明瞭になってくるのではないかとも思います。


案内をめぐる論点とは何か

改行マークさてここで、 もう一度駅構内の案内板に立ち戻ることで、 これからの社会における案内の形式について考えることにします。

改行マーク「案内」という言葉を辞書で引くと以下のような意味が載っています。

改行マーク(1)内部の事情を知っていること
 (2)内容・事情を知らせること
 (3)行くべき道や土地の事情を教えること
 (4)取り次ぎ、 「案内を請う」

改行マークそもそも「事情をよく知っていて、 それを知らせる」ことが本来の意味ですが、 駅の案内板という立場から見ると、 案内とは(3)の意味となり、 都市案内とは人の移動に際して便宜を図るシステムという意味が上位になります。 ですから(1)(2)の意味は、 地域情報への理解(空間認知)を補助するサブシステムとなるだろうと理解できます。

改行マークこのように駅の案内板を見るとき、 大事なのは多様な人がそれを見ることです。 地域、 都市に関わる情報は、 それぞれの人が持っている経験値と言ってよいと思いますが、 何度もそこを訪れる人は、 そのたびに地域の情報が更新されて詳しくなっていきます。 初めて来た人は、 白紙の状態から経験を重ねていくことになります。 経験値の違う人々が同じ案内板を見ることがあるのですから、 誰のための情報サービスかを考慮して案内板を考えるべきだろうと思います。 経験を重ねていって地域の情報を更新していく人を、 さらにいかに支援するべきかが、 都市案内の根幹にある役割ではないでしょうか。

改行マークそれについての自分なりの論点を考えると、 従来型の視覚情報(例えば地図)だけに頼った都市案内だけでは、 これからは十分ではないだろうと考えています。 様々な回路を通じて、 多面的に情報を伝える案内が生まれるだろうと予測しています。 その背景にあるのは、 高度情報化社会です。 その中で浮上するであろう「移動体への案内」「相互性・参加性」「更新」に論点を絞って、 考えてみたいと思います。

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