アジアの都市は一般的に、 木造の低層市街地によって構成されています。 近代の大都市である東京の区部でさえ、 容積率は慨算で100%にも満たないのです。 このことは敷地の半分を庭としても、 区部全体の平均した建物階数は高々2階建て程度にすぎないということを示しています。まとめ
アジア都市の空間的な文脈の発見と評価
典型的な木造低層市街地/20年前の京都 |
典型的な木造低層市街地/10年前の大邸 |
韓国の高層住宅1997年 |
香港の高層ビル1993年 |
ヨーロッパでは、 1960年代の終わり頃から、 高層住宅が忌避される傾向にあるのに対し、 アジアでは高層集合住宅が花盛りなのです。
写真は韓国と香港の高層住宅です。 この夏、 中国の南部を訪ねましたが、 いくつかの大きな都市はまるで香港でした。 またクアラルンプールもジャカルタもタイペイも同じように高層住宅が建っていますし、 スマランやスラバヤも数年のうちに同じようになるのではないかと思います。
なぜ高層住宅がヨーロッパで忌避され、 アジアで歓迎されているのかは、 一つの重要な研究課題ですが、 一方で、 市街地に建設される高層集合住宅がこれまでに存在していた市街地空間の文脈を再編し、 もしくは破壊していることにも関心を向けなければなりません。 そこで問われなければならないのは、 中高層化による変化をどのように誘導するかであり、 価値ある木造低層市街地をどのように保存するかです。
ヨーロッパ都市では、 1970年代の頃から、 地区の歴史的・文化的脈絡を維持していく修復型環境改善の試みがなされるようになりましたが、 アジアの木造低層市街地はヨーロッパの都市と同じようにはできません。 しかし、 アジア都市の空間文脈も評価すべき独自の価値を持っており、 その文化的な価値を将来にわたって維持していく必要があります。 そこで私たちは何を保存し、 維持し、 尊重していかなければならないかについて、 今こそ考えなければならないと思います。
木造であるがゆえに、 ヨーロッパの都市でなされているように建物それ自身をそのまま保存することは難しいとしても、 アジアの都市のユニークで特別な構造を保存してゆくことを考えなければならないのです。 それは、 コタ・グデの保存とも通じる問題ではないかと思います。 建物の保存もとても大切ですが、 空間構造をどのように保存してゆくかが問われているのです。