このような状況下で、 建設省は1982年からHOPE計画を実施しました。 これは、 Housing with Proper Environmentの省略で、 地域の固有の環境を具備した住宅づくりを推進しようとする計画です。
ここで環境とは自然環境、 資源的環境、 文化的環境を意味しています。
また事業の具体的内容は以下の3点です。
しかし大都市においてはHOPE計画の実施は困難でした。 その中で、 たとえば大阪市は、 ハウジングデザイン賞を設けたり、 ハウジングデザインコンペを開催したり、 住宅史の本を出版したり、 HOPEゾーンを位置づけたり、 都市居住のフォーラムを開催したりしました。
京都では伝統的な空間のオーダーを継承することをめざし、 まちづくりのルールを作りました。
神戸では、 高品質の住宅地開発をすすめたり、 集合住宅に関する誘導や規制を試み、 さらにコミュニティの育成、 木造住宅地の再開発の誘導や規制、 住宅地の景観の育成に取り組んでいます。
というのもHOPE計画が他の計画や政策と連携されたからだと私は思います。 たとえば都市景観の計画や歴史的建造物の保存、 観光振興などと結びつけられています。
また緊密なヒューマンネットワークが大きな役割を果たしました。 市民参加や地方の建築家の参加、 地元の建設業者の参加を得ることができたのです。
その結果HOPE計画は、 人々の間に住文化への理解を広め、 とりわけ地方の大工さん達の住文化への関心を深め、 地方自治体の総合的な政策形成への傾向を強めました。
このような総合化は中小都市でこそ可能であったことで、 大都市では難しかったことだと言えます。
中小都市での実際の取り組みの例として出石を紹介します。
ここでは都市景観のコントロールのためのガイドラインが設けられ、 市民の会合がもたれ、 地方の建設業者や建築家のためのセミナーが開かれました。 またガイドラインに基づく建物の修復や建て替えには財政的な支援が行われています。
その結果、 観光振興に成功したのですが、 その成功があまりに華々しく観光客が増えすぎたため、 今では観光客を少し減らしてほどほどの観光振興ができないものかと戦略が再考されています。
景観計画とHOPE計画
HOPE計画とは
日本では、 急速に開発が展開する過程で、 都市景観に関する関心が高まってきました。 そのあたりの状況については、 私の編著である『都市デザインの手法』を参照していただければと思います。 地域環境において、 いくつかの有効な手法も生まれました。 たとえば、 生け垣がもたらす効果は大きく、 生け垣整備を景観整備の重要な手法としている地域も多くあります。
(1)地域の特性を踏まえた質の高い居住空間の整備
(2)地域の発意と創意による住まいづくりの実践
(3)地域住宅文化、 地域住宅生産等にわたる広範な住宅政策の展開
大都市での取り組み
各地におけるHOPE計画の検討は、 景観計画と呼応して、 様々な都市づくりに関する課題を浮き彫りにする効果をもたらしています。
中小都市の取り組み
中小都市ではHOPE計画はより大きな成果を収めました。
町家住区の屋根伏図
対象地区における両側町と街区
出石町における様々な空間の単位
間口2間の町家の改造プラン
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