the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta
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都市にとって変化と保存とは

丸茂弘幸

改行マーク上野さんの指摘はよく分かります。 私自身も一方で同じような疑問を抱きながら保存の問題を考えています。 仏教のもっともベーシックなコンセプトのひとつは「すべては流転する」ということのようですが、 町も風景もそうなのでしょう。 私は仏教徒といえるほどの宗教心をもっているわけではありませんが、 「失われてゆくものに対する執着を止めよ」という教えにしたがって、 そう割り切れたらどんなに心安らかになれるのだろうと思います。

改行マーク話が大きくなって恐縮ですが、 大雑把に言って、 貧しい社会は美しい環境を持ち、 豊かな社会は醜い環境を持っているように思います。 今世界を見まわすと、 大勢としては前者から後者へ必死に移ろうとしている流転の姿がイメージされます。 もしこれが必然であるならばわれわれはこれを素直に受け入れることで満足すべきなのかも知れません。

しかし私たちの半端な知識がそう簡単に割り切ることを許してくれません。 豊かでしかも美しい国だってありうるのではないか、 たとえばヨーロッパのいくつかの国はどうなんだ、 ヨーロッパにできたことがなぜアジアにはできないのだ、 とたちまち心が揺らいでしまうのです。 <豊かで美しいヨーロッパ>というモデルが私たちを苦しめているのかもしれません。

改行マーク<豊かで美しいヨーロッパ>が普遍的なモデルになれるのかが問題です。 ヨーロッパの経験はある意味で特別なのかも知れません。 歴史の専門家でもない私が言うのも憚られますが、 たとえば、 ヨーロッパは近代化の過程で新大陸アメリカというフロンティアを持っていました。 人口爆発や資源の枯渇あるいは環境破壊など、 近代化に伴うさまざまな矛盾はこの膨大な空間的な広がりの中で解消あるいは緩和することができたのかもしれません。 しかし今、 私たちは自身の国の中で近代化に伴うすべての矛盾をなんとかやりくりして解決しなければなりません。 やりくりの過程で犠牲になりつつあるもの一つが歴史的環境なのかもしれないのです。

だからと言って<豊かで美しいアジア>という理想を捨てろと言いたいわけではもちろんありません。 流転の趨勢に抗して私たちに何ができるか、 このセミナーのテーマもまさにこの点にあるわけです。

改行マークいずれにせよ上野さんの質問は、 私自身の中でくすぶり続けている疑問でもあります。

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