都心の話の最後に京都の事例を紹介します。
大都市の歴史的な環境の保存には神戸のように経済的に大きな圧力がかかります。 大阪が関西の経済的中心になっているため、 京都は比較的変化はゆっくりでしたが、 それでも困った問題が生じています。
というのも現代の日本のゾーニングシステムは、 歴史的中心市街地のような複合的な用途の土地利用にうまく対応できないからです。 地域制は用途の純化を目指してきました。 そのため複合用途の中心市街地は商業地域に指定するほかなく、 容積率が高く設定され、 高い建物を誘導することになります。 これは木造2階建ての町家が並ぶ歴史的中心市街地を否定することになります。
建築基準法からも、 現在の町家の街並みを全く同じようには再建できない。 現在の法制度は、 生きているまちの歴史的環境の保全には対応できない。 京都では、 都市計画として美観地区指定を活用して、 地域別のルールをつくり、 歴史的都心の環境保全を図ろうとしています。
また、 住居系地域でも京都の歴史的市街地では、 用途混在が普通で、 その場合、 やはり容積率は200%くらいになる。 すると小さな作業場や比較的大きな商家などの跡地は、 高い容積を利用してマンションになり、 低層の町家や長屋のなかに高層マンションが現れることになる。 法的には問題がないから、 止められない。
歴史的環境の保存とは何か
最後に歴史の遺産とは何かについて考えてみたいと思います。
それぞれの文化や環境を次世代に継ぐのが歴史の継承だと言えると思いますが、 一方、 ライフスタイルやアクティビティや様々なものが変化していくときに、 文化や環境の継承をどう考えるべきかが問題です。 フィジカルにそのままでは対応できないものもある。