the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta
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歴史的都心の形態的保存と都市活動への対応

改行マーク保存について今日は二つ問題が話題になっていたと思います。 フィジカルな保存と、 そこでのアクティビティです。 この問題を日本の都心について考えてみたいと思います。

改行マーク日本の歴史的都心は、 その時代の新しい都心機能の必要に応じて変化してきました。 大阪はもちろん京都や奈良でもそうです。 ヨーロッパのように古い中心が残るのではなく、 もとの中心の上に新しい都心が形成されます。 古い都心は壊されて、 近代的都市機能の要請に対応して新しい事務所ビルが建てられてきました。 大都市では、 こういった経済的な力や社会的な需要に応じて、 まちのかたちを変えてきたのが歴史です。


奈良町

画像koo02 改行マークこれは奈良町です。 平城京の東端に位置していました。

改行マーク大きなお寺があり、 平安遷都で平城京が廃墟になったときも寺町として生き続け、 江戸期には商業地となっています。 近代の奈良の行政・経済活動の中心地から少し離れているため、 開発圧力がそれほど強くなく、 歴史的な環境が残ってきました。

画像kos015 改行マークこの地区を伝建地区に指定するかどうかの議論があり、 そのときは、 指定は経済的な発展の障害になるという見方が大勢でした。 しかし高齢化と商業活動の衰退が進み、 その中で歴史的な環境の保存をめざすNPOの活動が起こり、 少しづつその成果が出てきています。

改行マーク駅から近い便利な場所で京都や大阪にも出やすいところです。 伝統的町家を使いたい、 住みたい人など、 この地域に関係のない新しい人々も受け入れながら、 それを刺激としてまちを良くして行こうとしています。

画像kos016 改行マークこれは古い町家です。 今もお商売をしておられます。

画像koo03 改行マーク奈良町は平城京のころの街割りを残しており、 街区の1辺がだいたい125mくらいの大きな街区です。 表通りに面して町家、 ショップハウスですが、 が並び、 街区の中は、 お寺があるか、 畑など空地になっていました。 お寺は残っていますが、 空地にはどんどん家が建て込んで、 今では木造密集市街地となっています。

画像kos018 改行マーク街区の内部にお寺が今もあります。 これは表通りから入っていくところです。

画像kos019 改行マーク表通りにこのような門(19)があって、 入っていくとお寺への小径(20)に続きます。 ここはまだ街区内に、 空地が残っていて、 桜がきれいに咲いていました。 空地を抜けて街区の反対側の通りへ抜けられます。

画像kos021 改行マーク小さな道に面したお店です。 車を店の中に入れていますが、 道に駐車しているよりもましかもしれません。 駐車場を街区内部にとり、 表通りの街並みの連続性が維持されている通りもあります。 ここでも車との共存が課題です。

画像kos022 改行マーク居住系地域は今もまだそれほど開発圧力を受けていませんが、 駅に近い商業地区では、 より容易に建て替えられてしまいます。 これもそうです。 平屋や2階建ての木造の街並みの中に、 箱形の小さなビルがめいっぱい建てられると、 まちの表情も変わってしまいます。


神戸居留地

画像koo04 改行マーク次に大都市の中心市街地について考えたい。 この地区は神戸の旧居留地と呼ばれているところです。 150年ほど前に神戸の開港に合わせてつくられたまちで、 街路や街区構成、 地番などまちの骨格は変わっていませんが、 建物はすっかり変わっています。

画像kos024 改行マーク居留地時代には、 木造2階建ての商館が並んでいましたが、 昭和初期頃に、 ほとんどが洋風石造建築に建て替えられていきました。 多くは当時の神戸経済を支えていた海運業の事務所ビルでした。 これらは木造2階建てと違ってある程度の規模があり、 戦後の都心機能の変化にも対応でき、 今も事務所や店舗などに使われています。 この重厚な洋風石造建築が並ぶ街並みを歴史的都心景観として守り育てる動きが生まれていました。

画像kos027 改行マークこのような歴史的環境を守りつつ、 都心としての活性化を図る動きのひとつが、 この商業施設です。 由緒あるビルを修復し、 店舗に利用することで賑わいを創り出す最初の頃の例です。 低層部に店舗をいれ、 歩行者空間を整備し、 まちづくりが始まっていました。

画像kos026 改行マークしかし、 震災によって多くが破壊されました。 これは明治の居留地当時の建物のなかで唯一残っていたもので、 国の重要文化財に指定されています。 震災で完全に崩壊しましたが、 文化財ですから、 国の資金でもとどおり再建されました。 文化財指定されている場合は、 多くの補助がでますが、 その他の破壊された洋風建築は自力再建しかありません。 修復や元通りの再建は、 新築より高くつくことが多く、 元通りの再建をオーナーに求めるのは難しい。

画像kos028 改行マークこれは地震後の再建に当たって、 前の建物のファサードと一部を新築の高層ビルの低層部に再建した例です。 この再建には国の助成などはいっさいありませんでしたが、 オーナーがかつての建物の雰囲気を残すことにこだわったためにできたことでした。 高層化して床面積を増やさないと事業にならないのです。

改行マーク歩いていると後ろの高層部はあまり気になりません。 街並みの維持には貢献しています。 これも都心部の機能更新に対応した建て替えにおける歴史的環境保存のひとつの方法かもしれません。

画像kos030 改行マークこれも地震で壊れたビルの再建です。 全く新しいビルになっていますが、 先ほどの例と同じように、 低層部のデザインは、 地区のこれまでの街並みの空間構成要素やそのスケールに配慮したものとなっています。

改行マークこの建物もセットバックして高層化しています。

改行マーク奈良町と異なり、 神戸の都心では、 新しい都市機能へ対応した更新と土地の高度利用の要請は大きい。 ここではオーナーが、 更新は必要であっても歴史的街並みを守り育てることが地区の魅力になることを認識し、 工夫していることが歴史的環境保全にとって大きい力となっている。 震災がなくても、 建物の更新は予想されており、 歴史的環境は現状を保存することではなく、 歴史を継承することとしてガイドラインが検討されていました。


京都

画像koo05 改行マーク都心の話の最後に京都の事例を紹介します。

改行マーク大都市の歴史的な環境の保存には神戸のように経済的に大きな圧力がかかります。 大阪が関西の経済的中心になっているため、 京都は比較的変化はゆっくりでしたが、 それでも困った問題が生じています。

改行マークというのも現代の日本のゾーニングシステムは、 歴史的中心市街地のような複合的な用途の土地利用にうまく対応できないからです。 地域制は用途の純化を目指してきました。 そのため複合用途の中心市街地は商業地域に指定するほかなく、 容積率が高く設定され、 高い建物を誘導することになります。 これは木造2階建ての町家が並ぶ歴史的中心市街地を否定することになります。

改行マーク建築基準法からも、 現在の町家の街並みを全く同じようには再建できない。 現在の法制度は、 生きているまちの歴史的環境の保全には対応できない。 京都では、 都市計画として美観地区指定を活用して、 地域別のルールをつくり、 歴史的都心の環境保全を図ろうとしています。

改行マークまた、 住居系地域でも京都の歴史的市街地では、 用途混在が普通で、 その場合、 やはり容積率は200%くらいになる。 すると小さな作業場や比較的大きな商家などの跡地は、 高い容積を利用してマンションになり、 低層の町家や長屋のなかに高層マンションが現れることになる。 法的には問題がないから、 止められない。

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