今日はバリアフリーとユニバーサルデザインの違い、 そして、 公園におけるユニバーサルデザインの視点についてお話しし、 後はお二人に任せたいと思います。
「バリアフリーからユニバーサルデザインへ」という流れをまずお話したいと思います。
バリアフリーという言葉は、 国際的な場としては1978年の国連の障害者生活環境会議で初めて使われました。 ところがバリアフリーは、 移動障害に視点が置かれていたため、 その点がすぐに問題になってきました。 障害は移動障害だけではなく、 言語障害も、 知的障害もあるのではないか、 「障害を除く」とか、 「除去する」と言うことよりも、 障害が全くない方がいいのではないかという話が、 特にアメリカを中心に1980年代にでてきたわけです。 そんな中でバリアフリーに取って代わった言葉がユニバーサルデザインです。
このユニバーサルデザインという言葉は、 実はノースキャロライナの工業デザイナーだったロン・メイスという人が提唱したものです。 ロン・メイスはこの間(98年夏)亡くなりましたが、 彼はポリオで電動車椅子に乗っており、 呼吸補助具がなければ生活ができないような重度の障害者だったのです。 彼が、 社会が必要とするのは、 ある特定の人のためのデザインではなく、 すべての人のためのデザインである、 それがこれからは必要になってくるんだと言うことを1980年代のはじめから言い始めたのです。
それを彼は「デザイン・フォー・ライフスパン」と呼びました。 それは一人の人間が生まれて、 乳母車に乗って、 成人になって、 体力ができてきて、 それが徐々に衰えて、 やがて杖や歩行器に頼らなければならないようになってくる。 そういう人生すべてを通して使えるデザインが必要なのではないかというものです。
もう一つ、 こういった縦のラインに対して、 知的障害、 車椅子、 聴覚、 視覚、 いろいろな状況にある様々な人たち、 そういう人たちすべてが使えるデザインが必要なのではないかとも考えました。
こういう水平と垂直の広がりを束ねるデザインが、 ユニバーサルデザインです。
この考え方は1990年代に入りアメリカで爆発的に支持されるようになってきました。 これは何もキリスト教などの宗教的視点で広がったのではありません。 大きな影響を与えたのは1990年にアメリカで出来たADAという法律です。
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