日本におけるユニバーサルデザインを考える
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海外のユニバーサルデザインの例

改行マークユニバーサルデザインは、 語るネタとしては良いのですが、 形にするのは非常に難しい概念です。

改行マーク同じユニバーサルでもユニバーサルスタイルというものがありました。 これは形で言えば豆腐をきったようなデザインであり、 装飾を全て排除することによって、 どんなものにでも使えるという意味でのユニバーサルです。 ところが実際やってみると、 何の面白みもない、 何の深みもないデザインだったわけです。 そんなことでユニバーサルは、 良い意味では使われないのですが、 では、 それを人間に置き換えてみるとどんなデザインになるのかという視点からお話をしようと思います。

画像miya001 改行マークこれはパリのシャンゼリゼ通りです。 シャンゼリゼ通りは最近リニューアルされました。 その事業の中で歩道の真中にエレベーターを置いています。 日本でも障害者配慮のために、 スロープだとかエレベーターをつけるわけですが、 ど真ん中にぱっと出てくるということはあまりありません。 持って回ったように、 あっち行ったりこっち行ったりしながら何とか逃げると言うのが大体のやり方なのです。 この街のど真ん中にぱっと出てくると言うことが、 ユニバーサルデザインの一つの例だと思います。

改行マークこれは車椅子の人も、 視覚障害の人も、 一般の人も使えます。 あらゆる人にとって便利なわけです。 エレベーターの床のパターンが歩道のパターンと同じになっていて、 デザインも綺麗です。 プロダクトと言う意味からも、 デザインと言う意味からも優れたものだと思います。

画像miya002 改行マークこれは20年以上も前の作品です。 カナダのアーサーエクセンが設計した裁判所の前の階段です。 スロープと階段が、 形として非常にうまくまとめられている点を見てください。

画像miya003 改行マークこれはシカゴの植物園の中の、 何でもない階段です。 しかしこれは視覚障害者に配慮して作られた階段で、 緑のきれいな景観を損なうことなく、 視覚障害者を誘導することはできないかと考えられたものです。 そしてこれは高齢者にもやさしいものです。

画像miya004 改行マーク車椅子の人たちは、 水に親しむ事が難しいわけです。 それを、 これはいろいろなアイデアでクリアしています。 実はユニバーサルデザインはアイデアなのです。 アイデアで人びとが水に近づくことができるようにしています。

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改行マークこの写真でも、 実はいろいろなちょっとした工夫があります。 視覚障害者が通っても椅子にぶつからないように、 ちゃんと椅子がセットバックされている。 あるいは、 床のテクスチュアがいろいろ変わって自分がどこに居るのかが確認できる。 植栽の使い方でも、 自然に植栽の効果が出てくるようにしている。 知覚障害者も自分の場所がわかる。 これは決して偶然ではなくて、 100%意図されてデザインされたものです。

改行マークこれはそう言う場所ですが、 言われなければほとんど分からない。 だけど使ってみればちゃんと使える。 これがユニバーサルデザインの基本的なコンセプトです。

画像miya007 改行マーク手すりはいつも議論になります。 安全性のために手すりは付けなければならない。 しかし、 手すりをつけると景観も悪くなるし、 視覚的にも阻害されます。 そのマイナスを素材や作り方によって、 やわらげることができます。

画像miya008 改行マークユニバーサルデザインには情報という視点も重要です。 階段は車いすではおりられないわけですが、 より問題なのはそこに行ってから初めて階段があることが分かることです。 行く前に「階段がありますよ」と示す。 こっから先はスロープが何度ぐらいあると知らせる。 そうすると車椅子の人は自分の能力、 たとえば「5%以上になったらダメだ」とかいったことを大体知っていますから、 そこには行かないですむ。 このようにあらかじめ情報として提供しておく。 それがユニバーサルデザインなのではないかと思います。

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