前に 目次へ 次へ表通りの喧噪と街区内の生活空間
小浦久子
(大阪大学)
自動車、 オートバイ、 自転車、 ベチャ、 人……。 様々なスピードが混在しながら行き交う駅前通りから、 小さなゲートをくぐり、 Sosrowijayan地区にはいったところである。 細い路地に面して店や住宅が並ぶ。 玄関先や店の周りに緑が豊かだ。 表通りの喧噪がうそのような路地である。
都心の一画にあり、 駅から近いこともあるのか観光地化している。 カフェやバティックの店等、 こぎれいな店構えや看板、 民宿も目につく。 それでもここには日常の生活が一緒にあり、 車の入らないヒューマンスケールの生活空間がある。 街区がひとつのまちになっていて、 店や作業場や住まいを路地がつなぐ。 路地はまちのなかの通路。
街区をひとまとまりのまちの単位と考えると、 表通りはまちの「そと」の空間であるのに対して、 路地は個々の家をつなぐ「うち」側の通路のようなものである。 「うち」の空間は、 家や店の表がつくる空間であり、 生活をつないでいる。 家の「そと」とまちの「うち」が重なり合っている。 この重なり具合で、 まちの中にはいってきたよそ者の居心地が違うのかもしれない。
日本のまちのなかにこの重なりによる共通の「うち」の空間が、 随分消えてしまったように思う。 ドアをあけると「そと」に直接つながり、 すぐに表通りに行きつく。 都市の重層的な構成が意識されなくなっている。