the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta & Bali
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ラビリンスなコタグデの街

千葉桂司

(住宅・都市整備公団)

 かつて、 ジョグジャカルタの王宮都市づくりの手本にされたというコタグデの街は、 今は都市軸とか街区とか広場といった都市計画的構成とはおよそ無縁の街、 ラビリンスな街である。
 ガングと呼ばれる路地は迷路となって街中を走り、 その幅たるや1mにも満たない所もある。 それでも路地はきれいに舗装され、 しかも清潔だ。 (私の知りたかった「カンプン改良事業」が行われていると後で聞いた)。
 曲がりくねった路地を歩くと、 段々狭まったり、 いきなり開けたり、 その先が分からない。 次々に思いがけない風景が目に飛び込んで来る。 この少し不安で、 しかし発見し感動する時の喜びや驚きと、 ある懐かしさのようなものが入り交じった感じが、 とてもいい。 路地歩きはいつも私をわくわくさせる。
 でも、 この狭苦しいラビリンスはどうやって出来上がったのか、 何のためにこれほどまでに狭められたのか、 誰しも知りたい最初の疑問点である。 2つ目の疑問は、 狭い路地両側の塀は、 なぜかくも高くがっしりしているのか。 高い塀で敷地を囲むのはジャワの住宅の伝統的なカタチであるようだが、 それにしても狭い路地がそれによって一層狭く感じられる。 (しかし、 それは少しも路地の魅力を壊すものではない)。
 さて、 この路地の狭さと不規則さに比べ、 一歩門を入った内側に並ぶ家並みの、 整然さと明るい開放的な空間はどうだ。 この大きな落差に、 又また感動してしまう。 半公共的な邸内路地を挟んで並ぶ伝統的な家々の構成は、 所有形態の変化や生活の近代化によって少しずつ変わりつつあるとはいえ、 まだ健在であった。
 銀細工職人が多く住み、 家内工業的な産業が支えているこの街は、 まだ活力があると聞いた。 それでも生活や生産の構造が急激に変化する時代は、 この国にも、 この街にも押し寄せる。 不便・不経済をタテに歴史的・伝統的・民族的な価値あるものを次々に潰していく近代化・開発優先の論理は、 インドネシアでも例外ではあるまい。 その中で数年まえから始まったと聞く、 ガジャマダ大学のコタグデの街の価値を再発見し、 保全修復しようとする活動・支援は、 ぜひとも張って欲しいと願わずにはいられない。
 コタグデの街を歩き回った後、 地元のプンドポで開いていただいた地元の方々との楽しい、 賑やかな交流晩餐会は、 初めて訪れた私の目にも、 まちづくりの息の長い取組みが根づいて来ている事を伺わせるに十分であった。

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