the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta & Bali
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ジョグジャカルタの風

前田祐子

(Yu_Yu編集工房)

 今回のインドネシア行きを楽しみにしていたのは、 もちろんもう一度バリに行きたかったからである。 CDでは再現できないガムランの音色にひたりたかった。 だからこういうレポートを出す時も、 おそらくバリの話が中心になるだろうと思っていた。
 ところが、 こうやって書きながらインドネシアの光景を思いだそうとしたら、 頭に浮かんでくるのはなぜか2、 3日しかいなかったジョグジャの方なのだ。
 前回行った時も同じような感想を提出したような気もするが、 ジョグジャの町には風がふいている。 そんなの日本でもそうだろ、 という人は恵まれた人である。 密集した町に住むものにとっては、 気持ちのいい風を感じることはほとんどない。 日本では街を歩いていても窓を開けても、 風と言うよりほこりと騒音の方を感じることが多い。
 ジョグジャも車も多いし、 そう美しいと言うわけでもないが、 なぜ風を感じたんだろう。 多分、 前回はベチャ、 今回は馬車という乗り物を体験したことが大きいと思う。 考えてみたら、 えらく牧歌的な乗り物だ。 仕事でどこかへ行く人なら避けて通る乗り物なんだろうな。 しかし体験した人ならその心地好さはわかると思うが、 ゆっくり流れて行く景色、 肌に心地良い風、 これはクーラーのきいた車では味わえない体験だった。 慣れてないと値段交渉が大変そうだが。 車とベチャと馬車と人の流れ。 ジョグジャはまるで19世紀と20世紀が入り交じっている街だ。 日本ではとっくの昔に20世紀の主役である自動車に文字どおり道を譲ってしまったが、 ここインドネシアはまだまだ19世紀ががんばっているんだな。 ベチャと馬車がいなくなったらジョグジャの味わいも変質してしまうだろう。 どこまで頑張れるか、 ちょっと気になる。
 その点、 バリ(ウブド)はベチャも馬車も体験することなく、 一足飛びに現代に飛んできたという印象だ。 移動の足が車かバイクであるのは無論のこと、 観光客向けのお店、 イベントが盛沢山で、 観光客の立場からみるとジョグジャよりもよっぽど大都会という印象だ。 ただ、 至れり尽せり過ぎて、 それはそれで楽しかったのだか、 今思うと「田園」というわりには生活の匂いがあまりしなかった。 「ジュースの値段、 ジョグジャに比べて高いねえ」と誰かが言ったら、 うちのダンナがすかさず「ここはつまり、 『嵐山』なんだから仕方ないっしょ」と言ったが、 まさしく今のバリの性格を言い当てていたのかも知れない。 まあ、 京都・嵐山に比べたら、 まだまだバリの方が観光地としては優秀だと私は思っているし、 あと2、 3回は行ってみたいなと思う。

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