前に 目次へ 次へTIMRAH 水を運ぶ少女の隊列
丸茂弘幸
(関西大学)
水を運ぶ少女の隊列には近寄りがたい厳粛さが漂っていた。 整然と進む彼女たちの、 結局は後ろ姿しか写真に撮れなかったのは、 彼女たちがあまりに足早であったからだけではない。 はしたなく駆け出していけば追い越して隊列の前に立つことも、 そしてどこまでもついてゆけば、 その正体を見届けることもできたかもしれないのだが、 それらをためらわせる張り詰めた緊張感がそこにはあった。
だからこの隊列がどこから来てどこに行くのか、 何のために何をしようとしているのか、 かいもくわからない。 しかしその凛として進む姿には、 学校教育が普及し、 家々にテレビが置かれているこの時代にあっても、 この村が依然として深い信仰に生きる村であることを改めて実感させる説得力があった。
われわれ外来者が見ているこの同じ景物が、 この村の人々にはどのようなものとして見えているのか、 その隔たりの大きさを想像せずにはいられない。