the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta & Bali
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バリの女性は神事に忙しい(2)

辻本智子

(環境デザイン研究所)

 私はシャワーを浴びてすぐコテッジ探検を始めた。
 庭の隅の方からにぎやかな女の人の声が聞こえた。 声の方へ行くとそこには10人以上の女性達が一生懸命バナナの葉でたくさんの籠を作り、 その中にお米と花と入れている。 籠は5センチあるかないかの四角のもので、 作業は非常に細かい。 花はブーゲンビレアやプルメリア等で、 部屋に飾られていたハイビスカスに比較するとやや小ぶりの花を使っている。 これは神様への供物で、 そこに神が宿ると言う。 庭の各所に置かれたお地蔵さんや灯篭のような物に飾るだけでなく家の入口の地面にも置かれる。 これは悪霊が乗り移るので踏んでも良いと言うことを後に教えてもらった。 この供物づくりはコテッジだけでなく何処の町でも行われていたが、 いつも集団で行われていた。 女性達は朝、 昼、 晩と日に3回、 神にささげるために1日中供物を作りにかかっているようだ。 しかし、 みんな食事の支度も掃除もしなければならない。 「いつ農業をしているのだろう」「やはり、 神と共に生きる島ではまさしく供物づくりがおつとめなのか」「忙しすぎるよ」と色々考えを巡らした。 ティンブランの町中で供物のTake Out Shopを見つけた。 「やっぱり、 忙しい人はこれですます」と思ったが、 Take Out が昔からあるとは思えない。
 思い出して見るとコテッジの女性達は供物を作り上げた後、 全員一緒に食事をしていた。 神々への祈りのため、 バリの人は家族単位より村単位で活動するのではないだろうか。 村のなかには田んぼで農作業する人もいれば、 供物づくりや神へのおつとめを専門とする人もいるのであろう。 神への祈りを最大の義務とし、 農業も仕事もそれを支えるためのつとめである。 神事に差し障さわらない程度に働き、 その程度で済むくらいの暮しや食事をしているのかもしれない。 私のおやつにもならない量の食事を取っている女性達の姿を思い出せばなんとなくあたっているような気がする。 しかし、 こういうことになるとTake Out Shopを利用する存在はなにを意味するのであろう。

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