私も屋根には思い入れがあります。 今私がいる阪大の環境工学科は実にひどい建物でして、 屋上には砂利が敷いてあって天井の懐がないものですから、 屋上で人が歩くとすごい音がするし、 夏場ともなればこの最上階だけひどく暑いのです。 これも屋根をかければ解決する問題なのですが、 文部省はやってくれそうもない。 学校に関しては屋根はひどいものだと言っておきます。
さて、 今日なぜ屋根をテーマに選んだかと説明しておきます。 我々都市環境デザインを手がける者は道路や広場、 公園など普段の仕事でできるテーマを考えやすいものです。 私たち以前作った本もそういう章立てになっています。 しかし、 ここ10年あまり各地で行われてきた景観行政や景観づくりでガイドラインを作っているのですが、 それは先に出来た事例を切り貼りしている物が多く見るに耐えないと思うことがしばしばでした。 屋根に関してもいろんな所に出てくるものの、 どう工夫していいかは何も書いてない。 役人がどう指導していいかについては、 想像もつかない事例が並んでいるわけです。
そこで、 我々のグループは専門家がたくさんいるわけですから、 汎用されようとしているガイドラインの類の重要なポイントについては、 我々が発言すべきだと思いました。 重要なポイントが単にガイドラインの中の写真の切り貼りで消えていってはどうしようもないわけです。
「屋根」は分かりやすいという理由で取り上げましたが、 ディスカッションをしていくことで、 これだけの考え方の広がりと工夫の可能性があるということが、 ガイドラインを作る側の人々にも伝わるとおもうのです。 他の問題にもそうしたことはたくさんあると思います。 今回はこういう実験的はやり方でみなさんに提示しましたが、 みなさんのコメントも大いに参考になりました。
次回は、 民俗地理学の森栗さん(大阪外語大)に来ていただくことになりました。 テーマは「しあわせの街はありますか」です。 柳田邦男の「しあわせの村はありますか」をもじったものですね。
柳田はこの質問を全国の何百という村でしたそうですが、 「しあわせです」と答えた村はひとつもなかったと言ったそうです。 現代の街はどうなんでしょうか。 コーディネーターは小浦さんです。 次回もよろしくお願いします。