私がそもそもデザイナーになったのは、 理論を組み立てていくとか文章を書くということが苦手で、 絵を描いて形をつくりたいというところから入っていったからです。 ですから今日も理路整然と理論を述べるということはできません。 むしろ日本に帰ってから10年ちょっとの間に、 公園を造る時やモール(歩行者空間)をつくるような時に、 ぶち当たってきた課題や問題点、 未だに心に引っかかっているものを、 一つひとつお話ししたいと思っています。
今日お話するにあたって、 全体にはこんな話なのではないか、 というところを、 絵に描いてご説明したいと思います。
この席にはいろんな人がいて、 この空間には何が必要かといったことを、 いろいろと話し合ってゆきます。 そうした話し合いを経て、 しかしいざ設計という段になった時、 私のベクトルはどちらを向いているのかといいますと、 要求されたベクトルとは逆の方向(私の内に向かってのベクトル)にいかざるを得ないのです。 設計は、 こういった話し合いの場とはベクトルの向きがまったく逆なのです。
ところが、 全てが完了し、 ラッキーにもいい空間が出来て本当によかったとなった時には、 私の自分のハートに向かっていったベクトルが、 知らない間にぐるっとまわりこんで、 たくさんの人たちのベクトルと触れ合っているということに気がつくのです。
最初の、 私からたくさんの人に向かって発した外向きのベクトルをAの回路だとすると、 Bの回路があるような気がするのです。 そこに公共空間の、 設計・ものづくりに関して発見していかなければならない回路があるんじゃないか。 本当に抽象的な、 直感的なお話ですが、 そういう感覚を大事にしたいということを、 今日はお話ししたいと思います。
スライドをいまからご覧いただきますが、 主に三つの話題にわけてお話しします。 最初は佐々木さんと一緒に8年か9年ほど前に東京でやった展覧会で、 公共スペースについて個人的に問いかけた品川のプロジェクトです。 2番目には、 先ほどお話しいただいた「風の丘」という公園です。 そして第3番目にその他のプロジェクトをご紹介しながら公共空間の庭園化についてお話ししたいと思います。
話し合いのベクトルと設計のベクトル
設計をめぐるA回路とB回路
デザイナーである私がいて、 向かい合ってたくさん人がいます。 公共スペース(例えば公園)をつくろうとすると、 委員会のようなものがまずあるわけです。 そこで設計サイドである私に「三谷さん、 何をお考えですか」と尋ねられることから始まることが多いのです。 まず私からたくさんの人に向かってのベクトルが要求されるということです。 それは、 外に向かってのベクトルです。
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