日頃は、 鳳コンサルタント(株)環境デザイン研究所でランドスケープデザインの仕事に取り組んでいます。 構想から企画、 設計、 施工管理まで携わり、 ある場所をどうデザインしていくか、 最後に人が関わる空間に責任を持つスタンスで進めていきたいと思っております。 今日は都市環境デザインが大きなテーマになっていますが、 考える上で大切にしていることは、 様々な計画が実際の空間の中でどういう場所に結実し、 どういう形でそれを享受できるのか、 ということを計画の段階から具体的な空間性を考えながら提案することです。 都市の規模が大きくなっていく中で、 ややもすると大きなスケールを扱う計画論が具体的な都市環境づくりにとって有効に働かないものになります。 もう一度都市環境というものを小さい風景の重なりとして見ることが重要ではないかと思われます。
最近、 コラボレーションによるまちづくり等がよく話題に上がりますが、 その中でランドスケープデザインナーの立場として、 この小さな風景の重なりが、 都市環境デザインの目標像へつながるために重要なこと、 あるいは私が興味を持っていることと言ってもいい4つのテーマについてお話したいと思います。
一つ目は、 ランドスケープデザインが、 大地を扱う職能だということです。 我々が営んでいる生活空間の基礎となっているものはやはり大地です。 そこから離れた考え方、 空間づくりでは、 先に述べた小さな風景が断片化されます。 これをつなげて地域らしさを持つ豊かな環境を作るためには、 大地性の獲得が重要であると思います。
二つ目は、 意味のない境界をなくしていきたいということです。 土地所有や管理の概念による境界が優先され、 道路と建築敷地等の境界領域が意味なく分断されるようなことは避けたいものです。 人が関わる中で本当に必要な領域、 例えば植栽等の囲い込みによる空間が、 座るときに落ち着いたものとして感じられる場所になるというような、 人々の行動を基準とした領域感を生む境界を細やかな配慮で形成していくことが必要です。 これは、 都市的スケールにおいても重要なことで、 都市構成要素の関わりを考えていく上でも意識しておきたいところです。
三つ目は、 自然を現象として空間に持ち込むことです。 ランドスケープデザインは、 自然を扱っているとよく言われるのですが、 樹木を植えることが自然を扱うことになるのではありません。 緑、 光、 水などがもたらす現象を空間に取り入れて、 人々の感性に響く場所にすることを考えていきたいと思います。 さらに、 人がたたずんでいることも現象のひとつとして捉え、 人が一番美しく見えるような場所づくり、 人も豊かな風景として見えてくるような場所にしたいと思っています。
最後にあげたいことは、 「共有」についてです。 住む環境を「育てる」ものとして考え、 人々がそれらを「共有」して生活するためのシステム、 あるいは、 デザインとは何か。 これは、 明確な手法がなく、 曖昧でとらえ方も様々ですが、 これを模索することに興味を持っています。 それには、 まず、 都市を「自分たちのもの」と思えるようにしていくことが必要だと思っています。 まず、 皆が所有意識を持って、 自分の庭に人を呼んでくるようなイメージを都市環境に対しても持てるようにすること。 自分が所有して大切にしている、 しかし出入り自由な場所に人を呼んでもてなすという気持ちが「共有」という意識へつながっていくと考えています。 所有意識を持った上で、 誇りを持って育てていこうとするような空間デザインを模索していきたいのです。
以上の四つを自分のテーマとして考えながら、 まちを見たり設計を行っていますが、 実際に携わっている場所で、 どんな模索をしているのかを見ていただき、 また今日のテーマとなっている今後のボトムアップ式のまちづくりでデザインがどんな関わり方をするのかを考えてみようと思います。
今日は、 都市環境デザインに携わっていこうとしている学生たちが多く参加されていて、 将来の不安も持っていると聞いています。 鳳コンサルタントで設計しているプロジェクトについては、 雑誌等で発表されるものを見ていただくとして、 今回は、 同じ不安を持っている我々の小さな試みを事例としてあげて見たいと思います。
環境デザインにおける4つのテーマ
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ