昭和45年に都市再開発法ができ、 以来、 市街地再開発事業が進められてきましたが、 考えてみますと、 この全てが中心市街地の活性化を目的としたプロジェクトであるということが分かります。
市街地再開発事業は全国で673地区で完了または都市計画決定が終了しています。 その面積は1,043haで、 1地区あたり平均で1.55haです(表1)。 現在の中心市街地活性化基本計画で考えられている何十haというものに比べれば、 きわめて拠点的な大きさです。 全国の市の数が670ですが、 それから見ますと、 平均して、 1都市に1地区ずつの再開発をやっているということになります。
さて、 再開発の目的は、 市の玄関・顔づくり、 あるいは駅前広場づくりであり、 土地の高度利用や商業の近代化・高度化などですが、 これはまさに活性化です。 それから、 市街地住宅の供給も再開発事業の大きな目的です。
主にどんな地区を再開発してきたのかですが、 駅前ターミナルと商業地区が圧倒的に多く、 まさに中心市街地でやられています。 地域間競争、 あるいは都市間競争、 あるいは大型店対策、 大型店とどう協調するのかを合い言葉に進められてきました。
一つは、 香川県の丸亀駅前の再開発です。 都市計画決定まで終わっていますが、 現在中断中です。 その原因は、 一部地権者の協調性の欠如が決定的でした。 それも有力な店舗、 土地を持っている不動産会社が協力しなかったということです。 その結果、 丸亀の商業集積地では、 売上高が平成3年から9年の間に33%に減少し、 空き店舗率が23%となっています。 自業自得といいますか、 再開発の機会を逃したために、 中心市街地は壊滅状態というところです。
この地区をよく調べてみますと、 富山市の公共投資が駅前、 あるいは駅北にかなり集中しており、 東地区は取り残されていました。 現在は、 商店街の中に空地とか駐車場が40%あって、 さらに、 空き店舗が14%あるということで、 相当寂れてきているというところです。
その後、 駅に近い側の商店街がアーケードをつくったり、 個別建て替えを進めました。 現在どういうことになっているのかというと、 汚い、 臭い、 暗い、 怖いというようなことで、 ほとんどの店舗で売り上げが下がっています。 再開発の話があったのに、 それを逃したがために、 現在、 無惨な状況になっているということです。
第二は、 地元の人に対しては面と向かって言いにくいことですが、 活性化のためには地域リーダーに定年制を設けて、 若返っていかなければならないということです。 一つの再開発事業はだいたい15年かかります。 そのように私が説明しますと、 皆さん60から70歳の方々ですから「そんなに時間がかかるのなら、 死んでしまう」ということをおっしゃいます。 役所でも、 民間の会社でも定年制があって、 次々に後継者を育てていっているわけですから、 地元もそういうふうに地域リーダーの後継者を育てて、 しかるべき年齢になったら、 バトンタッチするという体制をつくらなければ、 まちづくりのような長期プロジェクトには取り組めないだろうと思います。
第三は、 商業者の自己努力です。 マナーの改善、 定休日の統一といった商業者側の怠慢といえるような部分で、 中心市街地が衰退していっています。 商業者側がしなければならないことを、 やっていないというところがあります。 日常の人間関係、 コミュニケーションは当然のことです。 スーパーにはこの人間関係がないわけです。 商店街は人間関係があってこそ支持されるのではないかと思います。
第五は、 居住者を増やすということです。 特に高齢者用、 共働き夫婦用の住宅を中心市街地に作っていくことです。
第六は、 まちの個性です。 パティオ事業や高知のひろめ市場のように地元商業者の集りでできる規模のものをつくっていくことです。 それらは街の個性を発揮しているはずです。 ひろめ市場は全国的に有名になりました。 昨日又訪ねてみましたが、 味と値段から考えると、 だんだん飽きられると私は考えていますが、 ああいったやり方は活性化のためにはおもしろいと思います。
表2を見ていただきたいのですが、 過去1年間の雑誌に載っていた事業完了、 もしくは推進中の再開発事業のなかで、 公共公益施設を整理しました。 47地区で公共公益施設がこれだけあるわけですから、 ほとんどそれに頼っていることが分かります。 それも、 多種多様です。 再開発事業は当面はこういった公共公益施設に頼っていかなければできません。 地元商店街としては、 積極的に役所にお願いするという以外にないのではないかと思っております。
5。 中心市街地活性化と市街地再開発事業
有光友興
これまで行われてきた再開発事業
私は、 再開発事業のコンサルタントを30数年しておりますので、 そのグランドで、 中心市街地活性化を考えてみました。
それだけ、 この事業は中心市街地活性化の有力な道具として使われてきたと言えると思います。 今回の中心市街地活性化の基本計画は、 全国の各市町村で1地区ずつやりなさいということです。 市町村は3,255ありますが、 現在106地区で基本計画が進められています。 百万都市でやっているのは神戸市だけです。
再開発に失敗した3つの事例
現在、 中心市街地活性化が問題となっている地区は、 たいがい過去に再開発の話があったところです。 私が今かかわっているプロジェクトで、 3つほど具体的にお話しします。香川県の丸亀駅前再開発
丸亀駅前現況航空写真(1992年当時)
丸亀駅前C地区再開発事業パース(1990年当時)
1997年の「富屋町」商店街(左)と「通町」商店街(右)
富山の中央通東地区
もう一つは、 富山の中央通東地区です。 ここは、 商店街の真ん中にあった大型店が郊外へ転出してしまったため、 地元で再開発の勉強会が始まって、 大型店誘致を始めたものです。 昨年、 大型店誘致を断念してから、 私たちがコンサルタントとして入りました。大阪の鶴橋
それから、 大阪の鶴橋です。 これも研究会が始まったところです。 この地区については、 再開発法ができた直後に大阪市が再開発の基本計画をつくって、 地元に準備組合もできていたのですが、 まもなく消滅してしまいました。 それは、 その商店街のなかで当時流行っていた部分もあったのですが、 そこが無関心だったためです。
再開発事業と中心市街地の活性化
これから中心市街地活性化を考えていく上で、 どんな対策があるのかを考えてみます。人の問題
まず、 人の問題として、 公共的意識の向上、 「まちの全エリアが所有者の別に関わらず公共の場であり、 市民の共有する財産であるという意識」、 商業者・行政・住民の三位一体となったまちづくり体制の必要性です。 これは、 丸亀市の中心市街地活性化の基本計画の統一コンセプトとして出ているのですが、 この考え方の欠如が、 前回再開発ができなかった、 足を引っ張った原因です。 中心市街地の土地が市民の共有の財産であるという意識がまるでなかった。 自分のものという所有意識が非常に強い人が一部にいて、 そのためにできなかったということです。 今度はそういう失敗はしまいということでコンセプトの第一番目にあげています。まちづくりの方向性
第四には、 中心市街地に消費者が求めているものは、 単なる売場、 飲食店ではなく、 みんなが集まってこれる公園とか、 広場、 パブリックスペースだということです。 こういったものを作っていくことが、 これからのまちづくりの方向ではないかと思います。保留床の問題
今、 再開発事業で一番問題なのは、 保留床の処分です。 保留床を売って事業の採算をとることになっているのですが、 はっきり言いまして、 今は公共公益施設に頼らざるを得ません。
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