中心市街地活性化への対応
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7。 徳島におけるTMOづくり

島博司

三セクか商工会議所か

改行マークそれでは現在の状況についてご報告いたします。 99年6月段階で、 中心市街地活性化の基本計画が策定された市町村は、 だいたい140ぐらいあります。 その中でTMOが設立されているのが確か15か16ぐらいです。 このTMOの事業を商工会議所が引き受けるのか、 第三セクターが引き受けるのかについては、 難しい問題をはらんでいます。

改行マーク徳島は、 もう第三セクターを作らないという市の方針です。 第三セクターを作るということであれば、 商業者の方も出資をして、 それから運営費も負担していくということになります。

改行マークしかし、 そういった新しい組織を作って、 自信を持ってやっていけるのかというと、 これはなかなか難しいと思います。 今の段階では、 計画レベル、 事業構想のレベルで、 具体的な事業の詳細をつめられない、 お金の計算もなかなかできないという中で、 新しい第三セクターをつくるのは危険性が高いわけです。

改行マークですから、 既存の組織である商工会議所にお願いをして、 その上で将来は第三セクターをつくるなり、 新たに別の会社を作るなり、 そういうふうなことを見越して、 柔軟に考えておこうということです。 ともかくいったんは商工会議所の方にお願いができないかということで、 進んでおります。


TMOありきではなく、 もっと柔軟に

改行マーク本来考えてみれば、 こういう都市にする、 あるいは都心にする、 商店街にする、 こういう事業をやっていく、 こういう計画のレベルアップをしながら、 充実していきましょうというような全体のストラクチャー、 流れがあって、 その上で、 こういう組織がいるんだということになるわけです。

改行マークしかし、 公共側からすれば公共事業はこういうふうな仕組みでやっていきます、 民間のTMOからすればこうやっていきます、 商店街の振興組合はこうやっていきます、 それから市民活動団体はこうやっていきますよと、 市民と行政、 商業者の三者のパートナーシップが一連の事業群の中に入ってきて、 それでやっていくというのが基本的なスタイルです。 「これからはそれが普通だと思ってやっていかなくては無理です」というふうに話をしているのです。 これを当たり前のこととしてまちづくりを進めていかないと、 組織論はなかなか展開できないと考えております。

改行マークTMO組織一つに色々な事業群を背負わせるのはどだい無理なことだと思います。 例えば、 アーケードとかカラー舗装一つにしても、 TMOがそういった事業を引き受けるということではなく、 商店街振興組合が引き受けて、 そこにTMO組織が全体のマネージメントをしながら戦略的に動かしていくというのが、 中心市街地活性化組織論の考え方です。

改行マークしかし、 それだけでは無理だと思います。 個々の商店街振興組合がそれぞれ動いていく事業群を、 TMOが単に束ねていくだけではだめなんじゃないか。 商店街全体が集まった組織がないと、 商店街全体としての意思統一と共同事業群ができないと思っております。

改行マークそれぞれのハード事業をそれぞれの振興組合が事業主体となって行っていくのもいいのですが、 全体の大きな情報化に関わる事業の問題であるとか、 空き店舗の対策を個別に打つのではなく、 重点的な箇所をねらい打ちしていきながら振興していくとか、 市民活動団体にも参加してもらうとか、 そういうふうに考えていかないと共同事業がうまくいかないと思います。

改行マーク今の中心市街地の状況というのは、 個別商店街だけで活性化できる力は、 あまり残っていないという前提のもとでお話をしています。 一つの商店街で空き店舗が20あって、 これからさらに増えるかもしれないという状況の中では、 商店街振興組合だけで活性化できるのかといえば、 それは無理な相談です。 さらに大型店が郊外に立地していき、 地域が高齢化していっているという状況の中では、 そういった組織論を、 もう少しきちんと展開していかなくてはならないと思います。

改行マーク徳島市の場合、 活性化の基本計画とTMO構想が同時並行に進んだものですから、 今は、 そこの議論の整理をしているという状況です。 ただ、 仮に、 商工会議所がTMOをやらないとなってもかまわないと思います。 というのは、 TMOを焦ってやる必要はないということです。 ひとつひとつの事業を出発していくのが先ですから、 あらかじめTMOありきで、 色々なことが進んでいくのはおかしい。 TMOはあとからでもいいと考えています。

改行マークですから、 場合によってはTMOができなくても、 しばらくは別の組織で機能させていくというような柔軟なスタンスで考えていかなければならないと思います。 三者がお互いに無理をするのはよした方がいいのではないかと思います。 ただ、 商店街がTMOの運営費を負担するというような原則はできています。


市民とのリンクをいかに進めるか

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パラソルショップ
改行マークもう一つは、 市民の方々とどういうふうにリンクして、 ともにやっていくのかという話です。 中心部は往々にして市民団体の方々が活動している場です。 徳島の場合は、 駅と商店街の間に幅が5、 60mの新町川があります。 その川沿いには公園もあって、 先ほどお話ししましたパラソルショップがあります。 土日を中心にして、 1日3,000円で誰でもパラソルをレンタルでき、 その中で商売をしてくださいというものです。

改行マークはじめは、 商店街で運営をしていたのですが、 この春からパラソルショップを出店している方々が委員会をつくって、 若い方々が運営するということで進めています。 彼らは商売のプロではありません。 全くの素人です。 そういう方々は、 ユニークな発想をしますので、 そういった方々への協力と支援を続けていく必要があると考えています。 商店街の隣に、 しかもウォーターフロントに面して、 そういう方々がいることは、 将来の商店街の育成を考えた場合、 心強いと思います。

改行マークまた、 新町川を守る会という市民団体があって、 10年間河川の清掃など、 色々なイベント等をやってきました。 船が全部で5隻あって、 新町川のクルージングを無料でやっております。 年間にだいたい2万人の方々に、 中心市街地をめぐっていくクルージングを体験していただいております。 その市民団体が先週NPOとして法人登記しました。 社会的にも、 法的にも環境を整えて、 活動をレベルアップしていくという段階を迎えております。

改行マークそういった活動団体が、 商店街とタイアップしながら色々な事業をやってきているわけです。 市民の方々の会費や寄付や商業活動と共同あるいは競合させながらやっていくというようなことを、 川と、 川沿いと、 商店街とで重層的にやっていくというものです。

改行マークそれから、 先ほどのパラソルショップの話とも関係があるのですが、 福祉団体の方々がパラソルショップに出店するとか、 JAや漁協さんが出店するのも全くかまわないということになっています。 今あるものを少しずつ、 小さなビジネスを少しずつ積み重ねながら大きくしていくということと同時に、 市民参加の活動も一緒に考えていかなくてはならないと思います。

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