基調講演の長澤さんの話にありましたが、 「やる気がないところには近づかない方がいいんだ」とかいった話は我々専門家には耳に心地よく聞こえます。
一方で、 そういうことだけでは収まらない問題を抱えているからこそ、 我々はこういうところで議論しているんだろうと思うのですが、 では、 一体そうでは済まない部分は何だろうかといったことを考えると、 基本的には都市の魅力とか、 アメニティに関わる部分だと思います。
中心市街地の活性化で成功例としてあげられる事例に、 例えば長浜の黒壁の例があります。 そういうのを見てみますと、 確かにある種の成功をしているのだろうけれども、 例えば、 黒壁による商店街の活性化が、 はたして市民の基本的な日常的な消費行動を変えているのだろうかを考えてみると、 どうもそうではないんじゃないかという気がするのです。
つまり、 成功と言っても、 例えば歴史的なアメニティを活かすだとか、 都市的なアメニティを作り出していくだとか、 そういうことに関わる部分についてで、 それは必ずしも市民、 住民の消費行動を変えていない。 これは鳴海先生が言われるホテル経営のような都市経営とも関連しますが、 こういうことによってうまくいくのは、 観光客だとか、 外来者を引きつけるという部分に過ぎないのです。
中心市街地の活性化の問題は、 農業問題とよく似ていると思います。 農業の経済そのものの構造からいくと、 負けてしまうかもしれない、 あるいは、 滅びるかもしれない。 だけれども、 例えば、 グリーンツーリズムだとか、 国土の保全だとか他の環境的な価値を入れ込むことによって、 はじめてそれを救済していく意味がでてきます。 それと中心市街地の活性化の問題もよく似ているんじゃないかと思います。
では、 どういう商店街が生き延びるのでしょうか。 例えば、 高知であれば、 城下町であり、 歴史的なストックが膨大にありますから、 これを活かせば当然ある種の生き残り方とができると思います。 徳島もおそらくできると思います。 先ほども申しましたように、 完全には市民の消費行動は変えられないかもしれないけれど、 商業活動以外のものを入れ込みながら、 ある種の都心の魅力を活かしていくことができると思います。
そういうものが全くない商店街は、 淘汰されざるを得ないものとして見る必要があるのではないかと思います。 割り切りすぎかもしれませんが、 あまりにも議論が見えないので、 私はしばしばそういう見方をしながら考えています。 そのあたり、 ご意見をいただけたらと思います。
3。 何が中心市街地の活性化なのか
丸茂弘幸
中心市街地の活性化の議論をうかがっていても、 将来の展望がどうなるのか、 なかなか見えてきません。 まず我々の都市における活動の内で、 最も計画にのりにくい、 あるいは計画にのせるべきではない部分が商業活動だと思います。 それが一つ基本にあるとします。
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