ドイツにはIBAという伝統的なまちづくりの手法があります。 これについてこれまでの流れをみれば、 ドイツの都市計画の歴史がかなりよく理解できるのではないかと思います。
IBAとはドイツ語のInternationale Bauausstellungの略語で、 わが国では一般に国際建設展覧会と訳され、 最近ではIBAベルリンが著名です。
これはある地域に国際建設展というイベントを持ってきて行なうまちづくりです。 町並みとか建築物の設計に、 国際設計競技で募集した超一流の建物を実際につくり、 展示します。 建設展のために作られたり整備された施設は、 従来の町並みに組み込まれ、 都市のストックを形成していきます。 これはちょうどわが国で、 国体が行なわれ、 その町のスポーツ施設が整うようなものです。 イベントによるまちづくりとも言えます。IBA(国際建設展覧会)とは
マチルデンの丘 |
その後、 第二次世界大戦が始まるまでにドイツでは数多くの国際建設展覧会がひらかれています。 この時期のテーマは、 急激な都市人口の増加と、 それにともなう住宅問題です。
1927年のシュツッツガルトのワイゼンホーフ・ジードルンク(住宅団地)では「人間的な住まい」がテーマでした。 建築と都市計画が組み合わせて考えられ、 今日なお模範例として取り上げられる著名なものの1つです。 これにはグロピウスやコルビジュエなど著名な建築家も参加しました。
ナチス政権時代に入っても、 この伝統は受け継がれ、 1931年にベルリンで「成長する家」が行なわれ、 さらに1933年と1934年の2年間に3回の建設展が行なわれています。
戦後では1952年にまずハノーファーで、 次いで1957年にはベルリン・インターバウで再び継続されました。 この時は、 戦災復興をめざす住宅建設と時代にマッチした都市構造がテーマでした。 ここで始められた、 住棟が平行配置された団地づくりが世界に流行していきました。
磯崎新も参加した1987年のベルリンIBAでは、 「居住場所としての都心」をテーマに、 住宅建設に「新」と「旧」の概念が取り入れられました。 「旧」部門とは再開発のことですが、 居住者の近隣関係を保ちながら保存改善され、 ゆるやかな再開発が行なわれました。 ここでは文化財として価値のない建物でも全体景観のために保存する、 という考えがあらわれたこと、 そして完成された建物の展示に加えて、 プロセスを見せながら環境改善をしていく、 という新しい概念が加わったことが大きな特徴です。
ここまでの建設展覧会は、 いずれも都市内部の、 住宅や都市構造が対象でしたが、 IBAエムシャーパークでは広域圏を対象に、 最近のドイツの都市計画の特徴である社会改造とエコロジーという構造改革を重点においた地域開発が取り上げられています。
このようにドイツの国際建設展覧会は、 住宅建設のデザインと技術革新の模範建築物の展示として始まり、 都市における地区の建設(団地など)から、 地区の再開発、 広域な構造改革へと推移してきました。
その特徴をまとめると、 以下のようになると思います。