まち居住通信4
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『川崎市居住支援制度』を聞く

 

 

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 2000年4月から川崎市では、 高齢者、 障害者、 外国人等の民間賃貸住宅への入居を支援する目的で「川崎市居住支援制度」を発足させました。 まち居住研究会では、 6月の定例会にさっそく、 この制度策定に精力的に取り組んできた小林延秀さん(前川崎市まちづくり局企画課)をお招きして、 お話を伺いました。 今、 全国の自治体から注目されているホットな話題をお届けします。

 

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■川崎市の住宅事情

 川崎市には、 人が住んでいる住宅が50万戸くらいあり、 このうち、 市営住宅は約1万6千戸、 市民の半分近くは民間借家に居住しています。 民間借家に住んでいる高齢単身者なら、 ほとんど市営住宅の入居資格がありますが、 市営住宅の数は圧倒的に少ないので、 窓口では困っている高齢者に対して、 粘り強く市営住宅に申し込んで下さいと言うしかない状況でした。

 住宅統計調査や将来の予測から、 民間借家に居住する一人暮しの高齢者世帯が今後増え、 この住宅問題がかなり深刻になると認識しました。 また、 福祉部局のアンケート調査では、 在宅障害者の1/4が民間アパートに住んでいることも分かりました。 外国人世帯は川崎市に約2万人います。 このうち1万人は川崎区、 幸区などの南部の地域に住んでいる在日韓国朝鮮人。 バブルの頃に中国人、 ブラジル人が増え、 倍増しました。 この6割も民間借家に住んでいます。 これらの人たち全てが住宅困窮者とはいえませんが、 高齢者、 障害者、 外国人という理由だけで民間借家の入居を断られるという状況もあり、 こうした人々の居住の安定が深刻な課題でした。

 一方、 国は、 最近、 住宅政策の3本柱である低所得者対策(公営住宅)、 持家促進(公庫融資)、 中堅ファミリー対策(公団住宅)を見直し、 民間市場を活用した政策に大きく舵を切っています。 定期借家法の施行など、 民間市場に委ねるとしても、 この市場自体の公正性を確保できないと、 問題は解決されないことになります。

 こうした中、 川崎市でも独自の新しい住宅政策をしようということで、 住宅基本計画を99年に策定しました。 この中で高齢者、 障害者向け住宅は、 98年度末の984戸から2003年までに2400戸に増やす計画です。 しかし、 この住宅供給施策だけでは民間借家に住む高齢者等の居住の安定を図るにはほど遠い状況です。 そこで計画には、 今日のテーマである居住支援制度の骨格も盛り込みました。


■川崎市外国人市民代表者会議からの提言

 話は前後しますが、 そもそも、 住宅基本計画の検討に着手した96年頃、 すでに地価や家賃の下落が続き、 全庁的には住宅問題の重要性が共有されにくい状況になっていました。 これを打開したのが96年度、 設置された川崎市外国人市民代表者会議でした。 同会議は、 市長に対して提言でき、 市長はその提言を尊重しなければならないと規定されていました。 この第1回(96年度) 、 第2回(97年度)の提言として、 外国人をはじめ高齢者、 障害者等入居差別を受けている人に対して差別の禁止条項を盛り込んだ「住宅条例」の制定を検討すること、 保証人の確保が難しいこれらの人々のための公的な保証人機構の設立を検討することが求められました。 この提言がきっかけとなり、 マスコミ、 議会をはじめ市の上層部から住宅部局の取り組みが注目されることになりました。 今回の条例制定・制度創設の原動力のひとつに、 高齢者等の声なき声をまとめたこの提言があったことは間違いないと思います。

 提言を受け、 住宅部局は基本計画の策定検討に併せて、 民間住宅対策の一環として高齢者、 障害者、 外国人の民間借家居住について検討を始めました。 東京都や神奈川県、 横浜市、 川崎市などでは、 高齢者がアパートの立ち退きをせまられた場合、 新しい所に移ると家賃が当然上がるので、 新しい部屋の斡旋と差額家賃を補助する制度を、 福祉部局が始めていました。 96年には、 そこに外国人への斡旋紹介も加えることを提案しましたが、 福祉政策なので外国人は関係ないと断わられました。

 もともと単に住宅を斡旋してくれる協力店を紹介しただけでは、 強い発言力を持つ家主の意向を変えることはできません。 そこで、 家主が不安に感じ、 敬遠する理由に掲げている保証人の確保や入居後のトラブルの解消を目指し、 入居差別の理由をつぶすこと、 つまり外堀を埋めてしまおうと考えました。 そこで、 高齢者等の保証を行っている財団、 自治体、 民間企業の取り組みを調べました。 例えば福岡市、 北九州市、 福岡県の国際交流協会では、 協会という機関として留学生の保証を行っていました。 (財)内外学生センターでは、 保証人の不安解消を図るため、 留学生による保証人の負担を保証する共済的な制度を検討していました。

 こうした先進事例を集め、 分析し、 @市の財政・人的負担の適正化 A民間ノウハウの活用 B使いやすい一般的な仕組み(4年間で1000世帯程度を対象)の構築 Cモラルハザード対策などの観点から合理的な制度とするよう検討しました。


■「居住支援制度」とは

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入居保証システムと居住継続システム
 こうして、 今年の4月から川崎市住宅基本条例の施行に併せ、 「居住支援制度」として「入居保証システム」と「居住継続システム」をスタートさせました。

 この「居住支援制度」は、 高齢者、 外国人等で保証人が見つからない場合に、 保証人の役割を担い、 家賃の支払いや入居後の病気、 事故などの家主が抱く不安を軽減し、 入居機会の確保と安定した居住継続を支援するという制度です。 まず、 「入居保証システム」の内容は、 家賃を滞納して退去した場合に、 月額家賃及び共益費の7ヶ月分並びに原状回復費(3ヶ月分)を保証するものです。 方法は、 制度の利用者が、 家主と契約を結ぶ際に保証料(2年契約で月額家賃の35%程度)を保証会社に一括前払いするもので、 保証会社のリスクの一部は市が分担し、 住宅供給公社が滞納等の事故の際、 保証会社や協力不動産店・家主の間に入るというものです。 「居住継続システム」とは、 病気、 事故などのほか、 言葉の違いによるトラブルが発生した場合に、 市の施策、 市の関連団体、 ボランティア等による支援を行うというものです。 基本的には不動産店や家主が緊急対応、 通常管理を行いますが、 外国人の言葉の問題など、 不動産店の通常の管理では対応が難しい場合に支援要請を受けた公社が、 窓口との連絡調整にあたることになっています。 この制度をきっかけに外国人市民代表者会議のメンバー等も国際交流協会の言語ボランティアに参加し、 ネイティブの感覚でアドバイスできる仕組みになりました。

 当面は市に相談に来た人に協力不動産店を紹介するという方法で運営していますが、 6月12日の時点で94店が協力不動産店として名乗りをあげています。 担当は、 マンション対策なども含め、 新たに設置した民間住宅担当(2名)です。 6月20日現在、 この制度を使って契約した人は、 高齢者が6人、 障害者2人、 外国人3人です。

 まだ、 制度ができたばかりですが、 動かしながらいろいろ改善していきたいと考えています。 特にその中で、 福祉・人権などの施策とのリンクやボランティア団体との関係を築いていくことが重要であると考えています。

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