住宅統計調査や将来の予測から、 民間借家に居住する一人暮しの高齢者世帯が今後増え、 この住宅問題がかなり深刻になると認識しました。 また、 福祉部局のアンケート調査では、 在宅障害者の1/4が民間アパートに住んでいることも分かりました。 外国人世帯は川崎市に約2万人います。 このうち1万人は川崎区、 幸区などの南部の地域に住んでいる在日韓国朝鮮人。 バブルの頃に中国人、 ブラジル人が増え、 倍増しました。 この6割も民間借家に住んでいます。 これらの人たち全てが住宅困窮者とはいえませんが、 高齢者、 障害者、 外国人という理由だけで民間借家の入居を断られるという状況もあり、 こうした人々の居住の安定が深刻な課題でした。
一方、 国は、 最近、 住宅政策の3本柱である低所得者対策(公営住宅)、 持家促進(公庫融資)、 中堅ファミリー対策(公団住宅)を見直し、 民間市場を活用した政策に大きく舵を切っています。 定期借家法の施行など、 民間市場に委ねるとしても、 この市場自体の公正性を確保できないと、 問題は解決されないことになります。
こうした中、 川崎市でも独自の新しい住宅政策をしようということで、 住宅基本計画を99年に策定しました。 この中で高齢者、 障害者向け住宅は、 98年度末の984戸から2003年までに2400戸に増やす計画です。 しかし、 この住宅供給施策だけでは民間借家に住む高齢者等の居住の安定を図るにはほど遠い状況です。 そこで計画には、 今日のテーマである居住支援制度の骨格も盛り込みました。
入居保証システムと居住継続システム |
この「居住支援制度」は、 高齢者、 外国人等で保証人が見つからない場合に、 保証人の役割を担い、 家賃の支払いや入居後の病気、 事故などの家主が抱く不安を軽減し、 入居機会の確保と安定した居住継続を支援するという制度です。 まず、 「入居保証システム」の内容は、 家賃を滞納して退去した場合に、 月額家賃及び共益費の7ヶ月分並びに原状回復費(3ヶ月分)を保証するものです。 方法は、 制度の利用者が、 家主と契約を結ぶ際に保証料(2年契約で月額家賃の35%程度)を保証会社に一括前払いするもので、 保証会社のリスクの一部は市が分担し、 住宅供給公社が滞納等の事故の際、 保証会社や協力不動産店・家主の間に入るというものです。 「居住継続システム」とは、 病気、 事故などのほか、 言葉の違いによるトラブルが発生した場合に、 市の施策、 市の関連団体、 ボランティア等による支援を行うというものです。 基本的には不動産店や家主が緊急対応、 通常管理を行いますが、 外国人の言葉の問題など、 不動産店の通常の管理では対応が難しい場合に支援要請を受けた公社が、 窓口との連絡調整にあたることになっています。 この制度をきっかけに外国人市民代表者会議のメンバー等も国際交流協会の言語ボランティアに参加し、 ネイティブの感覚でアドバイスできる仕組みになりました。
当面は市に相談に来た人に協力不動産店を紹介するという方法で運営していますが、 6月12日の時点で94店が協力不動産店として名乗りをあげています。 担当は、 マンション対策なども含め、 新たに設置した民間住宅担当(2名)です。 6月20日現在、 この制度を使って契約した人は、 高齢者が6人、 障害者2人、 外国人3人です。
まだ、 制度ができたばかりですが、 動かしながらいろいろ改善していきたいと考えています。 特にその中で、 福祉・人権などの施策とのリンクやボランティア団体との関係を築いていくことが重要であると考えています。