阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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これからの課題

小林

 まち住区やコンパクトシティという割合抽象的な話を、 まちづくり協議会の方々が自らのまちの話としてかなりリアリティのある話にしていただけたと思います。 最後に1、 2分ずつパネラーの方々からご感想をいただきたいと思います。


長い目で見たまちづくりを

難波

地域構造を残していくために

 2点だけお話ししたいと思います。

 一つは地域構造の話です。 県では町村合併を進めているのですが、 町村合併をして行政が効率的になって、 最終的にどうなるかというと、 僕は旧村が本当の行政単位として機能するようになっていくのではないかと思っています。 それは神戸でも同じだと思います。 住吉にしても真野にしてもそうなのですが、 神戸がどうするという話ではなく、 もっと小さい単位での話が重要です。 ところがその旧村の構造を破壊してきたのが、 国道2号であったり43号であったりしたわけです。 20世紀の都市づくりは、 そういった地域構造や生活単位を潰してきたのではないかと思います。

 それに対して京都は、 一条戻り橋が千年来一条戻り橋であるように、 ずっと残ってきているわけです。 そういう構造が神戸でも残っていく、 兵庫の各地で残っていく、 これからは潰してはいけない都市の構造を見極めてそれを潰さないようにしていかなければならないと思うのです。

 区画整理やニュータウンでは新しいまちができたようにみえますが、 古い地形や構造をどんどん潰してしまって、 何かおかしくなってしまって、 最もまちづくりが必要なところとして、 ニュータウンから手をつけないといけないという状態は、 やはりおかしいと思います。

まちづくり協議会のこれから

 もう一つは、 まちづくり協議会と自治会の関係についてですが、 私は自治会は管理するところで、 まちづくり協議会はあらたにつくるところだと単純に考えています。 いろんなしがらみの中で、 潰しながら新しくつくっていく、 あるいは展望を持ってやっていくという、 割合前向きなものがまちづくり協議会であって、 地域のなかで過去の財産とか伝統の継承をやっている自治会とうまくバランスをとって両立すれば申し分ないと思うのですが、 これは大変なことなのだとも思います。 でも、 できるだけ単純に考えた方がいいと思います。

 再開発事業の場合には一人リーダーがいれば事業はうまくいく、 リーダーがいないところでは再開発が成り立たない、 そしてリーダーになった人は体を壊すくらい地域に引っ張られるという話がありました。 これからのまちづくりには、 まちづくり協議会にもそういうリーダーが一人は要るんだけれども、 それで体を壊したら仕方がないわけです。 その辺りのバックアップをコンサルタントとかアドバイザーといった仕組みに期待できることが大切です。

 しかし、 コンサルタントやアドバイザーがいつまでも関わっているのではなく、 手を引くタイミングが一層大事です。 それこそ30年後か100年後かわかりませんが、 そういう状況ができて、 自立する協議会がたくさん出来てくることが望ましいと思っています。


見えてきた変革の方向

本荘

定着しつつある神戸のまちづくり

 コンパクトタウンということで、 住民発意のまちづくりのお話をさせていただいているのですが、 やはりそういう考え方だけでなくて、 実態として活動が伴わないとコンパクトタウンづくりも進まないのではないかと思います。 今日も4地区のご紹介いただきましたし、 またこれまでも研究会の中でいろんな地区のご報告があったということで、 やはり神戸ではコンパクトタウンづくり、 住民主体のまちづくりが定着しつつあるという感じを受けました。 そのまちづくりも、 都市計画の分野だけではなく、 福祉の分野も環境の分野も文化の分野もあるでしょうし、 非常に広がってきているのではないかと感じています。

 また、 それに合わせて地域の広がりについても、 従前のように近隣住区であるとか小学校区という、 ある意味で行政区域的な地域がベースになるのではなく、 「わがまち意識」を持てる地域が今後ベースになっていくのではないかと思っています。

区役所の役割

 また、 地域発意の、 また総合的なまちづくりを行政が応援する際に、 今後は住民により身近な区役所の役割が重要になってくると思っております。 本庁ですと、 どうしても縦割りになってしまい、 各地区での横断的な課題に応えにくいのですが、 区ですと地域の問題をそのまま受け止められます。 区役所はある意味で総合的な展開ができるのではないかと思います。

 ですから区が住民と行政のコーディネーター、 またまちづくりを進める際のコーディネーターという役割を果たしていくのではないかと考えています。 そういう意味では区役所の充実が今後の課題です。

弾力的に使えるお金を確保したい

 また、 地域で活動していただいているわけですが、 やはり継続的に取り組んでいこうとすると、 様々な経営資源の課題が出てくるのではないでしょうか。 人の問題もあるでしょうし、 先ほどのフロアからのお話のようにお金の問題もあるでしょう。 場合によっては集会所の問題もあるかと思いますが、 そういう課題への対応について、 復興基金はかなり弾力的に対応できたのではないかと思うのですが、 その復興基金も十年という時限があります。 今後、 これをどう一般化させていくのかが課題となるのではないかと思っております。


まち住区は究極の目標

宮西

 先ほど後藤さんはハードな意味でたたずまい、 たしなみのようなものを持ったまちにしていかねばならないというような話をされたのですが、 それは僕も正しいと思うし、 神戸には優れたまちづくり条例があって、 組織を認知しようという仕組みになっています。

 しかし、 まち住区とかコンパクトタウンといった概念と、 まちづくり協議会をイコールだと短絡して考えてしまうのはどうかと思うんです。 まちづくり協議会をつくって一生懸命やろうというところまで成長していくのは良いことだと思うんですが、 やはり段階があるのではないかという気がするんです。

 大きくはまち住区とかコンパクトタウンとかいう理念があって、 その理念に地域社会をどう寄せていくかという話で、 その寄せていった結果としてまちづくり協議会もあるかもしれないということではないかと思います。

コンパクトシティを育てるために

 地域社会のそれぞれの地域は当然いろんな問題を抱えています。 しかし震災前に行政が住民の代表の頭をなでつつつくった協議会は絶対駄目なんです。 それはもう今回の震災が証明したわけです。 やはり住民が主体になってつくっていかなければならないし、 震災後100幾つかのまちづくり協議会ができ、 もう終息しようという所もありますが、 素晴らしいところも十幾つかはあるわけです。

 神戸は色んな意味でフライングしてきたのですが、 やはりちゃんとスタートをきろう、 ちゃんとレースをしようとずっと練習をしてきて、 それが実ってきたのではないかと思います。

 コンパクトシティは、 住民にとっても大事な話です。 今回の震災はそれを教えてくれたわけですから、 それを育てて行くことは、 神戸が是非範として他の都市に示さなければならない部分だろうと思います。

 婦人会の話が先ほども出ていましたが、 そういう組織を優先にする自治体というのはおかしいと思わなければいけないわけです。 やはりそうではない、 本当に地域を愛する人たちがまちを育てていくということにならないと駄目なんです。 その理念を示したのが「まち住区」です。

 ひょっとすると政治家が変われば政策としての「まち住区」は変わってしまうかもしれませんが、 その中にもっている思いは名前がどう変わろうと関係ないはずです。 また、 名前がどう変わろうと関係ないものを、 私たちは育てていかねばならないのだと思います。


地域住民でないからこその活動

宮定

 このまま活動を続けて、 地域にいるけれども、 地域住民ではないので、 地域の変な壁を知らないふりをして破っていくような活動を続けられたらと今のところは思っています。 地域住民ならば難しいという所を、 いじくりながら広げられたらと考えています。


外での団欒をつくる

山本

 先ほどニュータウンの話が出たので、 住吉浜手の現状も重ねてお話ししたいと思います。 どこの地区でも同じだとは思いますが、 住吉浜手では世帯数はそんなに減っていないのですが、 人口がかなり減っています。 核家族が増え、 一世帯の家族の人数が減っているわけです。 そうなると一家団欒ではなく、 もしかしたらまちで団欒、 外で団欒できる機会をつくっていかなければならないと思います。


大きな理念を考えながらできることからやっていく

後藤

ますます重要になるまちづくり

 まち住区という言葉は我々の先生の持ち言葉だったので理解はしていたんですが、 今日あらためてコンパクトタウンという言葉を本荘さんも交えてお話しできたのは、 本当によかったと思います。 私たちは大学を出てから30年ずっと同じような調子で拡大成長路線の中で生きてきたわけですが、 ここにきて、 つくづく頭打ちだと感じています。 日本の人口も統計的にはあと数年で減少してくると聞いていますし、 ガソリンがなくなるという話もうすうす聞いているわけです。 エネルギー問題も変わってくるし、 食糧問題も変わってくると、 これからまちづくりは、 非常にわかりやすい時代になるのではないかと思います。 今まではごまかしてきたけれども、 これからはもうごまかしきれないようなコミュニティの崩壊や様々な問題が出てくると思います。

 そういう意味合いでまち住区とかコンパクトタウンというのは、 ますます重要になるのではないか、 大きな理念を考えながら出来ることからやっていくということなのだと思います。

コンサルタントとしてまちづくりにどう関わっていくのか

 それからもう一つは、 コンサルタントとしてどう関わっていくのかという問題です。 神戸市さんもどこで何を支援してくれるのか、 あまり期待もしきれないところはあるのですが、 「新しい公共」という流れのなかで、 まちづくり協議会の取り組みもそれなりになっていければいいかなとも思っています。

 また別の視点としては、 まちづくり協議会や神戸のまちづくりの取り組みというのは文化活動であるという意味合いで、 神戸の文化であるとも言えるのではないかと思っています。 行政も住民もコンサルタントも学校の先生もみんな集まって、 まち住区やコンパクトタウンと言いながらまちを良くしていこうということ。 文化という言葉の中には、 お金にはならないという皮肉を入れているんですが、 まちづくりは経済効率では計算できない、 一種の遊びなんだと。 この活動を震災復興から出てきた神戸の唯一の文化なんだという思いの中で、 我々は神戸で文化を担っているんだという意味合いがあると思います。

 あとは皆さんからご心配いただいているように、 まちづくりコンサルタントも仕事ではないかと、 霞を食って生きていくわけにはいかないということがあります。 税金を使うのは役所だけではない。 新しい公共といいますか、 公共の福祉のために、 地域のまちづくりを考えるのに、 年に50万や60万は出してくれてもいいのではないかという愚痴も出るわけです。

 ただまあそれだけではなくて、 実際には私などはハードな仕事もしています。 道をつくったり、 共同建替をしたり、 広場をつくったりするなかで、 仕事を自分でつくっていくという面もあります。 まちづくりをしながら、 まちを経済的に発展させながら、 そのなかから仕事をつくっていくということを考えています。 そういう二面があるわけです。

 まちづくりというのは、 文化活動であるという意味合いと仕事であるという意味合いと、 そのあたりを私たちがどうかねあいをつけていくのかは、 心のフラストレーションとして抱えつづけなければならない状況です、 そういうところでこれからも頑張っていきたいと思います。

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