HARはる基金

阪神・淡路ルネッサンスファンドニュースレター

「HAR はる基金」1997年11月10日 第4号

■■ 転載自由 ■■

発行:財団法人 まちづくり市民財団
阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局


発災後3年を目前に、 復興支援の第2幕へ!

阪神・淡路ルネッサンスファンド副委員長 林 泰義(計画技術研究所所長)

 HAR基金は皆様の力強いご支援により、 発足以来2年足らずの間に4回の公募を行い、 住民や専門家による幅広い復興まちづくり活動に対し56件におよぶ助成することが出来ました。 ひとえに皆様のご協力の賜であり深く御礼申し上げる次第です。 発災以来2年10ヶ月を経て、 被災地復興の明暗がクッキリとした輪郭を描き、 困難な問題ばかりが積み残される状況が顕在化しきました。 復興支援は、 いよいよ第2幕に入ったと言われます。 HAR基金としても復興の実情と過去4回の助成の内容を振り返り、 今後の2年半、 この困難な状況を突破する糸口を拓く役割を果たしたいと、 その方向を検討したところです。 以下に今後の取り組みの考え方を述べさせていただき、 皆様からのご助言を頂くと共に、 一層のご支援をお願い申し上げる次第です。


1.HAR基金の今後の活動の方向

・1)一般助成の継続

 本基金の助成は、 縦割りの狭いまちづくりの範囲に縛られず「市民の視点からの総合的なまちづくり」(ソフトもハードも一体のまちづくり)を対象としてきました。

「市民主体のまちづくり」の重要性は、 今回の大災害により、 初めて社会的に認識されるに至ったものです。 この領域は、 復興市民まちづくりの現場では、 次第に「日常的なまちづくり活動へ」と移行していく状況にあります。 その足跡は、 日本各地の「市民主体のまちづくり」を先取りし、 開拓する重要な意義を持つものと考えています。 その意味で、 今後2年半、 この領域の活動への助成を継続し、 「市民まちづくり」の領域が日本で確立する基礎を作ることは意義深いものと考えます。


・2)一般助成の第二期支援

 本基金の助成は、 同一グループには3回までを条件としています。 これは初動期を支援することにより行政の助成などを活用できる事を想定しているからです。 しかし、 中には活動の意義の高さにも係わらず行政等の支援の得られがたいものもあることが明らかになりました。 これらの活動に対しては、 あらためて第二期支援の位置づけを与え助成を継続することが必要であると考えています。


・3)白地地区等再生活動支援助成の新設

 被災地の内、 白地地区あるいは灰地地区の施策不在地区では、 活発な自主再建活動が進む一方で被災空地が放置され、 行政の支援の手が届かない人々が多いのが実情です。 自力再建出来ない事情の在る地権者に対応する必要があります。

 また、 区画整理地区で建物再建困難な事情の地権者にも同様に対応する必要があります。 被災地での共同・協調建替の事例は今や100件近くあると言われます。 例えば、 この内容を調べて紹介する事例集を作り、 この地域の人々に情報として提供する活動等、 再生活動支援への実効性の高い提案を期待しています。 我々基金としては、 新たにこの様な地区への「再生活動支援」を助成対象に加えたいと考えています。 この場合も本基金の役割は、 その「初動期の掘り起こし作業」にあり、 掘り起こした結果軌道に乗るものは、 行政の事業制度等へと橋渡しするのが我々の役目だと考えています。


2.HAR基金第五回助成への寄付の呼びかけ

 HAR基金は、 第5回助成を97年12月に上記の方針に基づいて決定する予定です。 この助成のためには従来に増して皆様からのご寄付によるご支援が必要です。 復興第2ラウンドへの息の長い現地の取り組みに対して、 皆様からの共感と励ましが大きな力となるものと確信しています。 ご協力を心からお願いする次第です。


3.HAR基金第5回助成への応募の呼びかけ

 第5回の助成は、 上記の新しい方針に基づいて行います。 第2期支援、 白地地区等再生活動支援等、 新たな助成方針に対し、 ふるって応募して頂ければ幸いです。


第4回復興まちづくり助成
助成金贈呈式と活動の現況報告会

阪神グリーンネット 藤本 真里(兵庫県立「人と自然の博物館」)

 第4回復興まちづくり助成は、 6月28日の公開審査を経て、 16チームに合計735万円と決定しました。 去る7月19日(土)には、 神戸・鷹取カトリック教会内「ペーパードーム」で助成金の贈呈式と前回の活動現況報告会が行われました。 そのときの様子をご紹介いたします。

 まずは、 HAR基金特別委員会土井幸平委員(大阪市立大学教授)から助成決定の経過報告が行われました。 今回は公募に対して、 17チームが応募、 1チームの辞退で16チームでの審査となり、 すべてが助成対象となったことや7〜8の新しい助成団体があったこと、 審査会では、 様々なパフォーマンスがあり、 神戸復興紙芝居プロジェクトは水飴細工をおりこんだ楽しい演出であったことなどが報告されました。 次に広原盛明委員長(京都府立大学学長)から「お祝いと激励」がありました。 お話のなかで、 特に印象深かったのは、 「復興関連の会議は神戸で開催し、 常に原点に立脚しよう」という提案でした。 あたりまえのことのはずですが、 現実には忘れがちなことであり、 自分が関わる会議では被災地の現場にこだわろうと再認識しました。

 後半のプログラムである現況報告は、 いずれもペーパードーム周辺にその現場があり、 現地を見ながら、 お話を伺い、 HAR基金がまさに復興事業の最前線を支援していることを改めて感じました。 まず、 コムステイ実践研究会の森崎輝行氏とともに、 本庄町4丁目で完成した分譲マンションをはじめ共同建て替え事例を見学し、 活用した制度、 当事者達の動き、 合意形成の苦労などを伺いました。 次に、 野田北部まちづくり協議会の浅山三郎氏から「まちなみ環境整備事業」による細街路整備の進捗状況を伺いました。 この事業はセットバックした場合に補助金が出る制度ですが、 長楽町2丁目の私道に設置された道路の中心位置を示す鋲は再建後にできる道路に対する地権者たちの思いを示しているようでした。 ドングリネット神戸のマスダマキコ氏には、 今年の5月、 鷹取に移った新事務所を見せていただきました。 最後は、 野田北部まちづくり協議会の事務所で協議会メンバーとの交流会となりました。 そのときに配布された協議会発行のニュースで、 地区計画や細街路整備に関して、 制定の経緯や住民が受けるメリット・デメリットなどていねいに示されていたことが印象的でした。

 事務所の前の道には、 協議会と阪神グリーンネットでつくった移動式生け垣があり、 不法駐輪防止に役立っているようで、 最後にまた、 HAR基金が有効に活用されている場面をみることができました。

(編集者注:各団体の助成金額は各審査員が必要と判断した金額を平均して決められました)


第4回助成金の贈呈


協議会事務所の移動生け垣

第4回助成対象グループ一覧 (1997年6月28日決定)

活動のテーマ

活動グループ名

活動の目的

助成金額(万円)

地域型仮設LSA業務のシルバーハウジングと地域コミュニティへの応用

神戸福祉医療まちづくり研究会

地域型仮設の生活援助員(L・S・A)さんの業務を研究し、今後のコレクティブ、シルバーハウジングや地域のコミュニティワーク、まちづくりへ応用する

69

土地区画整理と整合性を保つ細街路整備推進のため

野田北部まちづくり協議会 *3

土地区画整理への整合性、細街路整備への推進実現のため

48

案内標識等の他言語化にむけての調査と実施

神戸アジアタウン推進協議会 *2

1.外国人住民に対する日常及び災害時の情報提供 2.街の魅力・個性の育成による街の活性化 3.外国人住民と日本人の文化交流

34

須磨浦通地区まちづくりに向けた共通課題への取り組み

須磨浦通6丁目自治会専門委員会

須磨浦通1〜6丁目に共通する課題についての実態調査、資料収集、報告書作成など

42

ドングリ銀行神戸震災被災地の緑の復興活動

ドングリネット神戸 *3

被災地での緑化活動に楽しみながら誰でもが参加できるシステムを提供し、今後の街の中での緑づくりをすすめる

74

神戸市西須磨地区における復興支援活動

コミュニティ・デザイン・チーム *1*2

自治会や商店会などの既存の住民組織の再建活動を支え、白地地区における復興への取り組みを組織的に行うために、住民の復興への要望を掘り起こし、復興のための基本計画の立案や、住民の主体的な活動を支援すること

31

住民の自主活動による地域緑化活動

緑花コミュニティ・四季 *3

震災後、荒地となったJR住吉駅〜住吉川に至る約200・の遊歩道を住民の手で緑化し、メンテしてゆく

45

専門家・地主・住民の連携によるまちづくりの支援

まち・コミュニケーション

住宅・生活再建が停滞している現状を具体的に確認するために、その原因を調べ、住民の意向を確認するとともに、打開に向けて住民・専門家・行政との橋渡し的役割を担う

42

きんもくせいインターナショナルプロジェクト

阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク *1

「きんもくせい」を英訳し、被災地で展開されているまちづくりを広く世界に知らせることを通して、諸外国の専門家とも交流を図り、今後の復興まちづくりに活かすことを目的とする

21

情報紙「ウィークリーニーズ」発行

すたあと長田 *3

他地域の仮設住宅に移転された元長田区民に「今」の長田のまちを伝えるとともに現長田区民にも、もっと長田の良さを知ってもらい、コミュニティの復興と新しいまちづくりの提案をする

27

第4回六甲アイランドW・F・O・A・P−のぼり部門

リ・フォープチーム

現代美術をキーワードとした仲間づくり

27

みどりと水のまちづくり阪神グリーンネット

ランドスケープ復興支援会議(阪神グリーンネット)*2

みどりと水のまちづくりコンサルティング

68

コレクティブハウジング事業推進広報活動

コレクティブハウジング事業推進応援団 *1*3

コレクティブハウジングという住まい方を広く知っていただくための広報活動

88

神戸の子供達に心の復興と紙芝居文化の伝承活動

神戸復興紙芝居プロジェクト

神戸復興の過程の風化防止

37

コムステイシステムの提案と実践

コムステイ実践研究会

被災地復興の過程で、いかんすれば、地元住民が前のコミュニティの暮らしを取り戻せるかを提案し、実践的な調査・研究を行う

52

仮設住宅で星空映画会を

仮設住宅星空映画ネットワーク

仮設住宅から恒久住宅への移動に伴うケアの一つとして

30

合計金額

735

三田ほんまち再生研究会は辞退されました

*1は第1回助成団体、*2は第2回助成団体、*3は第3回助成団体


活動グループの紹介

野田北部まちづくり協議会

(河合節二)
 野田北部まちづくり協議会は、 平成5年に組織され、 当初は旧市街地いわゆる下町の問題を抱えてのスタートでした。 (一人暮らしのお年寄りのケアや古い空き家等)大きな活動目標として、 大国公園と周辺の道路(コミュニティ道路)整備を進め、 事業として実現致しました。 それは当時の、 そしてこれからの協議会にとって大きなステップでした。 折しも、 平成6年12月18日公園と道路整備の完成を祝し、 協議会の主催でお祭りを行いました。 まさか、 その1ヶ月後に、 あの阪神大震災を経験する事になろうとは、 考えてもいませんでした。

 それから2年半が経ち、 震災以後は、 つい最近の事と感じるのですが、 あの楽しかった日は、 遥か以前の事のように思えます。 しかし、 時間は確実に過ぎており、 この間“一日も早くみんなで復興しよう”と取組みました。 野田北部地区でありながら、 鷹取東第1地区土地区画整理事業に組込まれた海運町をはじめ、 壊滅状態の本庄、 長楽町をそれぞれに合う復興を目指した結果、 仮換地指定・まちなみ誘導型地区計画・まちなみ環境整備事業に依る細街路整備等。 何とか先頭を切って具現化できた事が幸いでした。 また、 “まちづくりはダチづくり”の合い言葉の下に野田北部地区すべての人が、 祭り、 イベント(夏祭り、 盆踊り、 餅つき大会、 世界鷹取祭)を通じ、 心を一つにして楽しむことができました。 これからも、 地域のみんなが仲間となって、 互いに顔の見える“まち”にしていきたいと思います。

PS:今年もやりました!夏まつりテーマは、 この地へ未だ戻られない方、 そして新たに来られた方に、 野田北部に“おかえりなさい”と“ようこそ”の言葉でお迎えすることで、 多くの方に楽しんでいただけました。


野田北部まちづくり協議会との交流


神戸福祉医療まちづくり研究会

(代表:神戸協同病院 上田耕蔵)
 震災は日本の都市の矛盾を露呈したが、 これに対して数々の貴重な経験が積み重ねられてきた。 神戸市の地域型仮設の取り組みもその一つであるが、 住宅と施設の間を埋める試みであったとも考えられる。 21世紀超高齢(+独居)社会に向けて、 地域に支えられたあるべき「住みか」について示唆を与えてくれたと思う。

 我々は第2回HAR基金よりの援助を得て、 「長田コレクティブケアネットワーク」として地域型仮設生活支援員(LSA)の業務を分析し「21世紀高齢者住宅へのヒント」を報告した。 今年3月よりはLSAを含め「神戸市福祉医療まちづくり研究会」へと発展させたが、 第4回HAR助成金を頂くことができた。 深く感謝する。

 現在の「神戸福祉医療まちづくり研究会」の活動であるが、 @公的介護保険の動向、 ケアハウス、 21世紀の人口推移などについて学習会を行っている。 A地域型仮設のLSAの経験を実践集にまとめる作業をじっくり行っている。 建設モ入居が進むシルバー住宅・コレクティブ住宅に即、 生かせる手引き書を目指している。 完成は来年になる予定である。


高齢者住宅等における生活支援員


イベント案内

明治生命/JYVAボランティア講座特別企画・JYVA創立30周年記念
「NPOは地域を変える−米国・よみがえる廃墟の現場から−」国際シンポジウム
  【日時】東京:1997年11月20日(木)
      大阪:11月21日(金)
      13:30〜17:30(シンポジウム)
      18:00〜19:30(懇親会)
  【会場】東京:国立オリンピック記念青少年総合センター
      ・国際交流会館 TEL 03-3467-7201
      大阪:大阪国際交流センター
      TEL 06-772-5931
  【定員】180名(定員になり次第締め切ります)
     〈締切日〉11月10日
  【参加費用】参加費 1,000円  懇親会費 3,000円
  【申込み・問い合わせ】(社)日本青年奉仕協会(担当:増子 建)       国立オリンピック記念青少年総合センター内
      TEL 03-3460-0211 FAX 03-3460-0386
  【基調講演】ラルフ・ポーター(ミッドブロンクス・デスペラードス理事長)
      エミー・ブルジロフ(バンカーズ・トラスト財団副理事長)


公募等の日程(97年5月〜97年11月現在)

97/5/20第4回助成公募開始、申請受付
6/8NPO全国フォーラムへの参加
6/10申請締切り
6/28公開審査会〈こうべまちづくり会館〉
7/19第4回助成金贈呈式と報告の会〈神戸・鷹取カトリック教会〉
11/10第5回助成公募開始、申請受付
11/30申請締切り
12/13公開審査会〈こうべまちづくり会館〉
98/1/10 第5回助成金贈呈式、報告の会
HAR基金に関する詳しいパンフレットがありますので、 事務局までお問い合わせください。

お問い合わせ先

〈事務局〉
財団法人 まちづくり市民財団
〒102東京都千代田区平河町2-14-8 青年会議所会館内
TEL.03-3234-2607   FAX.03-3234-5770
〈現地運営事務局〉
阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
〒657 神戸市灘区楠丘町2-5-20 まちづくり(株)コー・プラン内
TEL.078-842-3563  FAX.078-842-2203
〈今号の編集〉
大阪市立大学生活科学部
藤田 忍
 〒558 大阪市住吉区杉本3-3-138
 TEL.06-605-2821  FAX.06-605-3086
東京都立大学建築学科 都市計画研究室
高見澤邦郎・岡崎篤行・鈴木万喜
 〒192-03 東京都八王子市南大沢1-1
TEL.0426-77-1111 ex.4786  FAX.0426-77-2793

HAR第5回ニュース
このページへのご意見は学芸出版社/前田裕資

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