まちづくり実践ゼミ
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『まちづくり実践ゼミ』発刊に際して

いきいき下町推進協議会会長 安田丑作

改行マークあの阪神・淡路大震災から3年。 この間被災地では、 復旧から復興に向けてさまざまな住まい・まちづくりの取り組みがなされてきました。 とりわけ、 共同建替や協調建替による住宅再建や、 マンション再建、 街区や地区スケールでの復興まちづくりの現場では、 従来からのまちづくりの進め方や手法、 現行制度だけでは対応できない場合が少なくなく、 住民はもとより行政や専門家でさえもこれまで経験のないさまざまな問題に直面しています。

改行マークしかし、 その困難な情況のなかでの試行錯誤の結果、 復興住まい・まちづくりの現場では数多くの創造的な取り組みも生まれつつあります。 言うまでもなくこうした住まい・まちづくりの取り組みを広げていくためには、 それを支援する一人でも多くの建築やまちづくりの専門家の協力と参画が欠かせません。 またそのためには、 そうした住まい・まちづくりに関心のある人々に被災地での実践活動に根ざした経験や震災後創設された数多くの行政の支援制度についての理解を深めてもらうことが極めて重要であると思われます。

改行マーク「いきいき下町推進協議会」は、 震災前の1992年2月に発足した神戸の下町の活性化とそのためのまちづくりを支援するための組織で、 (社)兵庫県建築士会をはじめとする建築・まちづくり関係の諸団体の専門家、 地元住民組織、 行政によって構成されており、 住まい・まちづくりのための情報交換、 啓発、 調査・研究、 提案などを行ってきました。 同協議会とその構成員は、 震災後いち早く復旧・復興のための支援活動に取り組んできましたが、 直面したのは住まい・まちづくりの実践経験のある専門家など人材の絶対的な不足でした。 そこで早速、 同じように人材育成に取り組もうとしていた(財)神戸都市整備公社「こうべまちづくりセンター」の協力を得て、 これまでの震災復興の具体的・実践的事例をべースにした「まちづくり実践ゼミ」を開講することにいたしました。 これまでに、 1996年に2回、 1997年に1回、 主に若手の建築士やコンサルタントなどを対象にしてこうべまちづくりセンターの講義室で開講され、 延べ165人の受講者がありました。

改行マークこのまちづくり実践ゼミは1回につき6講座ずつ開講されましたが、 その講義内容は、 個別の住宅再建(敷地レベル)から小規模な共同化・協調化、 大規模共同化(再開発事業)などの街区レベルでのまちづくり、 マンション再建事業、 さらには地区計画などの地区レベルでのまちづくりや商業地のまちづくりなど多岐にわたっています。 それぞれのゼミを担当する講師の方々は、 いずれも現実の復興まちづくりに第一線で携わってきたプランナーや建築家あるいは行政担当者であり、 毎回内容豊富な資料にもとづいて行われた講義は、 単なる事例や制度の紹介といったレベルにとどまらず、 住宅再建やまちづくりの現場でのさまざまな経験に裏打ちされた計画論・実践論となっていました。

改行マークゼミが好評を得て終了した後にも、 これら講義の内容を何らかの形で公表してほしいとの要望が被災地のみならず全国のまちづくりの現場から数多く寄せられました。 それはこの3年間の被災地での住まい・まちづくりの実践活動の成果や貴重な経験などは、 単に被災地での特殊な個別の事情によるものではなく、 わが国の密集住宅市街地が共通してかかえる住まい・まちづくりに示唆するところの多い先進的・先導的取り組みでもあるからでしょう。

改行マークそこで、 このゼミを主催したいきいき下町推進協議会と(財)神戸都市整備公社「こうべまちづくりセンター」では、 1997年に実施したゼミの内容を中心にしてまちづくりのテキストとして発行することを企画しました。 幸い講師の方々にも、 講義内容を発行することにご快諾を得るとともに、 改めてご執筆いただくこともでき、 より充実した内容のものとなっています。

改行マークこのテキストがこれから正念場を迎える震災復興まちづくりの一助になり、 さらに全国で取り組まれている住まい・まちづくりの現場で活用されることになれば、 それに勝る喜びはありません。

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