まちづくり実践ゼミ

中嶋知之　（神戸市住宅局）

1.震災後に設けられた共同化を支援する補助制度

震災後、 被災住宅の再建（マンション再建も含め）を支援するために、 既存の補助制度を改正し、 また、 新制度の創設を行ったりした。 現行の補助制度（融資、 利子補給、 税の減免等は除く）のうち、 主に利用されているものは、 下記のとおりである。

• 住宅市街地総合整備事業（住宅供給とこれに必要な施設を総合的に整備する事業）
  　→神戸市内8地区の区域内における共同化（市、 国補助）

• 密集住宅市街地整備促進事業（密集市街地の更新を目的とする事業）
  　→神戸市内12地区の区域内における共同化（市、 国補助）

• 優良建築物整備促進事業（優良な建築物の整備を促進させる事業）
  　→市内全域の共同化に適用（市、 県、 国補助）

• 小規模共同建替等事業補助
  　→上記制度の適用条件に満たない小規棋な共同化（復興基金補助）

これらの補助制度は実績として全体建設工事費の約10％〜20％を補助金で充当できる結果となっており、 不採算地区での共同化事業、 保留床の無い自力再建を支援する制度として有効なものとなっている。

震災特例として、 補助率の2/3→4/5引き上げ（小規模共同化制度を除く）が行われているが、 平成10年度も特例の継続が行われる。

2.補助制度適用における留意点

前述した補助制度の活用にあたって、 これまでの実例から留意点をまとめると、 次のような点が挙げられる。

• 従前の権利関係：共同化に参加する（事業に伴う転出者を含む）権利者の数により、 補助率が変わる、 共有者は1と数える等の制度上の仕組みを確認する。
  
• 敷地面積、 接道条件：共同住宅の敷地の面積、 前面道路の幅員、 空地率の上乗せなどの基本的な基準は、 まず最初に押さえる。
  
• 建設基準（空地要件、 住宅規模、 設計基準）：次のような事例に注意。
  1. 賃貸に供する床を小さな住戸ばかりにしたため、 過半の住宅の専用面積が50m2以上という基準に抵触した。
     
  2. 住戸内の手すりが不足。 特にメゾネットの住戸内階段や浴室の2カ所手すり。
     
  3. 屋外共用廊下の庇が無い。 最上階のものを日影条件を優先して設けなかった。
     
  4. 植栽を専用庭にしたため、 多くが補助対象外となった。
     

• 手続きのスケジュール管理：申請は1か月、 要望は4半期ごと（建設省）。 また年度末の締めが早いこと（12月ころ）に注意。
  
• 補助金後払いの原則：補助金支払いに施行者の経費負担確認（領収書等）が必要。 この先払いのために通常、 短期融資等を起こす必要があるので注意。
  
• 補助金の受け取りと配分：代表受取人への委任、 施工者の代理受領。 市、 施行者、 施工者間で3者協定が必要（公団民賃などでしばしば行われる）。
  

• 全員同意：共有者、 相続未処理者、 借地権者、 公有地に注意
  
  1. 借地権の有無の確認（建物の閉鎖登記簿）などを要求される場合がある。
     
  2. 水路、 里道などが区域内に含まれていると処理に思わぬ時間がかかる。
     
  3. 長期にわたって権利者の不明な場合は現有者の時効取得を裁判により処理する。
     

• 権利の確定：相続、 境界紛争、 未登記、 抵当権
  
  1. 道路対側の同意印がとれず、 額縁分筆して着工。
     
  2. 根抵当が当該地の評価をはるかに上回る額で設定されており、 容易に抹消できない権利者がいる。
     

支援制度が被災した住宅の再建を妨げることのないよう、 できる限り弾力的な運用ができる余地を制度要綱等にも仕掛けているつもりだが、 公平性の問題もあって無茶はできない。 また、 国費の入る制度は、 市の裁量がかなり制限される面もある。

制度適用の難しそうな事業は早めに（しつこく）市の窓口ヘ相談していただきたい。

今回は補助金交付制度について特化して説明した。 このほか、 融資、 利子補給、 税の減免、 事業代行制度（公社・公団、 定期借地や割賦分譲などの資金融通の工夫）、 専門家派遣等々を組み合わせ、 活用することによって、 より一層、 事業の円滑な進捗が図られるものと思われる。