まちづくり実践ゼミ
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共同化(大規模)に関する制度の概要
大塚映二 (神戸市住宅局)
1.共同化に関する補助・支援メニュー
建築物を共同化する際の補助メニューは、 大きく分けると(1)面的整備事業区域における補助と(2)市内全域で適用可能な補助制度がある。
(1)面的整備事業区域内における補助制度
第1の面的整備事業区域内における補助制度には、 「住宅市街地総合整備事業」(住市総)と「密集住宅市街地整備促進事業」(密集)の2つがある。
1)住宅市街地総合整備事業
住市総事業は、 拠点開発、 たとえば大規模工場跡地等の再開発と一体的に住宅供給を行い、 併せて周辺の住環境整備を行っていくことを目的としている。 神戸市内では、 現在8地区で事業中である。 キャナルタウン兵庫や東部新都心が典型的な地区である。
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共同化については、 この制度中「市街地住宅等整備」という項目で補助要件が規定されており、 一定の条件を満たす良好な共同住宅等に対して補助がある。 特に、 震災後の住宅再建にあたり、 合理的・効率的な土地利用を促進するため、 民間の共同化事業に対して手厚い補助となっている。
2)密集住宅市街地整備促進事業
密集事業は、 老朽化した木造住宅が密集している市街地の更新を図り、 併せて住環境整備を促進することを目的としている。 市内12地区で密集事業に取り組んでいる。 密集事業では、 老朽木造住宅の建て替えを促進することに重点を置いているが、 住市総事業同様に、 共同建替に手厚く補助するしくみになっている。
(2)市内全域で適用可能な制度
第2の市内全域で適用可能な制度には、 いくつかのメニューが用意されているが、 典型的なものは次の2つである。 一つは、 比較的大規模な共同化を対象とした「優良建築物等整備事業」(優建)であり、 もう一つはこの条件に合わない小規模な共同化を対象とした「小規模共同建替等事業補助」である。
「住市総」「密集」「優建」は、 いずれも建設省の制度要綱に根拠があるが、 「小規模共同建替等事業補助」は、 『阪神・淡路大震災復興基金』の中の補助制度のひとつであり、 小規模な共同建替・協調建替補助を通じて、 復興支援を行うものである。 補助限度額は、 戸当たり260万円と比較的少額だが、 共同化だけでなく、 隣近所同士で決めた協調建て替えルールにもとづく個別建て替えにも適用可能である。
2.優良建築物等整備事業
(1)事業のタイプ
補助対象となる事業には、 次の5つのタイプがある。
- 共同化タイプ(2人以上の権利者による土地の共同化)
- マンション建替タイプ(被災マンションの建て替え)
- 住宅複合利用タイプ(住宅のほか店舗、 事務所等と複合化したもの)
- 優良住宅供給タイプ(30戸以上の優良住宅供給)
- 市街地環境形成タイプ(敷地内に一定の空地を整備するもの)
神戸市では被災住宅の再建支援を優先し、 震災後は原則として1)及び2)のタイプに限定している。 以下、 主として1)の共同化の場合について要件等をあげておく。
(2)採択要件
- 土地を共同利用すること
- 2人以上の土地所有者等(所有権、 借地権、 使用貸借権を含む)が共同で行うこと。
- 2以上の敷地を合わせて、 一の構えをなす建築物を建てること。
- ただし、 2人の場合は、 200m2未満または不整形な敷地を含むこと。
- 敷地面積(震災復興のための特例運用基準※)が一定規模以上あること
- 区域面積(敷地面積に、 接する道路の幅員の1/2の面積を加えたもの)が、 おおむね500m2以上(※通常は1000m2以上)。
- 敷地面積がおおむね300m2以上。
- 被災住宅を含むこと
- 震災により滅失した住宅が存した敷地を2以上含み、 かつ、 事業の実施によりこの住宅の再建を行う場合に限り対象となる。
- 新築建物に関する要件を満たすこと
- 規模:原則として3階建以上。
- 構造:耐火建築物または準耐火建築物。
- 空地:敷地内に一定規模以上の空地を設けること。
- 接道:幅員6m以上の道路に4m以上接すること。
- 建設基準に適合すること
(3)補助の内容
共同化の場合の優建事業補助の内容は、 以下の通り。
土地所有者の同意状況
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全体事業費に占める補助金の割合は、 おおむね10〜20%程度である。
3.終わりに
共同化には大変なエネルギー=熱意と労力が必要であり、 共同化に参加する住民の方々はもちろん、 専門家の努力に負うところが大きい。 専門家のみなさんの活躍に期待したい。
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