まちづくり実践ゼミ
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ


道路整備型グループ再建制度
長田区重池町

萩尾利雄 (萩尾建築事務所)


(1)対象区域

◇位置・区域
・神戸市長田区重池町1丁目 約4,700m2

◇道路状況

画像3k1-01
図1
・地区内に2本の私道と1本の公道が混在し、 すべて巾員4m未満。
・公道…………
   巾員は、 2.0m〜3.3m。
   擁壁が各所で崩壊。
   平均勾配1/6。

・私道(南)…………
   一人の地主。
   対策の時期、 経済的条件、 地形等の条件が早期着工へ。
   巾員を4mへ拡巾。 片側後退。

・私道(北)…………
   複数の地主。 (過半数の人が他へ避難)。
   擁壁復旧。 道路擁壁、 宅地内擁壁。
   道路の原形もとどめない崩壊状況。
   平均勾配1/8。


(2)区域の特徴

◇地形上の特徴
◇町の人達の特徴
・古い地主さんの協力、 宅地の安全性への思いの強さ。
・強いリーダーシップを持つ人の存在。
・高齢者が比較的多い地域。

(3)被災の状況

◇斜面崩壊
・丘全体が崩壊。
・私道も宅地崩壊と共に姿がなくなるまで崩れた。

◇擁壁の崩壊
・宅地石積み等崩壊ヶ所 9ヶ所。
・道路擁壁の崩壊により宅地にも影響。

◇家屋の崩壊
・被災棟数 24棟。
画像3k1-02
図2 家屋の崩壊 擁壁の崩壊


(4)公道の復旧整備

◇取り組みの経緯
・平成8年8月地域の復旧に向けた住民の取り組み開始(初集会)
・平成9年1月コンサルタント派遣(道路整備型グループ再建計画)
・平成9年7月公道の2項道路中心線の仮鋲設置
・平成9年8月私道の拡巾整備工事完了(私道災害復旧助成)
・平成9年10月公道の2項道路中心線の確定
・平成9年3月〜10月私道に沿った1宅地と公道に沿った3宅地で道路拡巾にあわせた擁壁等移設工事(住宅再建型道路整備事業の市内第1号)

◇道路復旧と道路拡巾
・道路復旧に関しての住民の関心は高い。
・道路拡巾に関しては、 各戸の事情が表面化する。
・地主さんの理解と、 宅地・地域への思いにより一部拡巾が実現。
・既存不適格(道路中心後退に関して)の指摘と指導の問題。
・今実現可能な工事と、 将来の担保をどう確認するのか。

◇道路中心線の確認
・道路復旧に際しての、 道路と宅地との境界線の確認に併せて道路の中心線の確認を実施した。
・約5ヶ月を要して、 説明から各戸の合意取り付け、 現地での中心線仮鋲設置を実施。

◇擁壁の再建問題
・道路拡巾には合意出来ても、 擁壁の移設復旧については資金がない実態。
改行マーク→助成制度の活用。
・この度、 4ヶ所の擁壁移設が完成した。
画像3k1-01p
図3 擁壁移設


(5)私道の復旧整備

◇取り組みの経緯
・平成8年8月地域の復旧に向けた住民の取り組み開始(3回の集会を持つ)
・平成8年10月北側私道現地詳細調査実施、 工事費の概算を出す
・平成8年12月経過報告
・平成9年3月宅地内擁壁に関する調整
・平成9年7月北側私道災害復旧工事助成について会議
・平成9年8月北側私道災害復旧工事費の負担方法を決める
・平成9年8月南側私道の拡巾整備工事完了
・平成9年9月北側私道工事計画図書、 工事費の説明

◇私道復旧の助成制度
・自己負担金の重さ。
・助成制度(下水道関係を含み)による11/12の公的負担。
・権利者の合意形成  *私道の所有形態(共有・各宅地前)。
           *家屋が倒壊した人と残った人(仮設ライフライン)。

◇道路拡巾と経済効果
・公道の場合と同様。
・経済効果南側私道  *1地主の土地有効活用。
           *4m道路による評価アップ。
           *建売住宅として再建。
     北側私道  *経済効果が期待出来ない所は時間がかかる。

◇ライフラインの整備・復旧工事
・上水道―全面復旧。 二つのルートが考えられるが経済的負担の少ないルートで決定。 (水道局負担工事)
・下水道―全面復旧。 1戸だけ残った家の仮設排水もやり直す。 (下水道局負担工事)
・電気―全面復旧。 応急仮設の電柱を移設し新設する。 (関西電力負担工事)
・ガス―全面復旧。 1戸だけ残った家の仮設配管もやり直す。 (大阪ガス負担工事)

◇擁壁の再建問題
・道路下部擁壁は、 助成制度で可能な限り復旧を考える。
・宅地内擁壁の再建は、 目処が立っていない。
・公的な助成の条件の緩和と窓口の一本化。
改行マーク(調整が悪く公道復旧時に修正を要するヶ所が発生)

◇道路復旧と道路拡巾
・北側私道の場合、 道路の片側だけが権利者であり反対側の地主の協力が得られず、 拡巾については片側だけとなる。
・家が残っている所の拡巾は困難。
・更地の場所は建設時に中心後退を実施する。 ―私道復旧助成制度とのタイムラグをどう埋めるか?


(6)課題

◇地域全体の安全性
・地域全体の崩壊が発生したヶ所(断層に深く関係している思われる)の安全対策―土木専門家。
・個々の宅地の安全性だけではなく、 全体の安全性を調査する必要性。
・近隣のボーリングデータを参考に、 地域全体の安全性調査を提案したが受け入れられず。
・調査費用の公的助成。

◇斜面地の復旧対策
・擁壁の復旧助成の一元化。
・公的助成の拡大化―個人負担では限界。
・階段の解消方法―宅地とのすり合わせ問題。
・車両進入。
・宅地の有効利用との一体化が実現出来なかった。
           *取り組みが遅かった。
           *ヒナ段状の宅地形状と戸建住宅。
           *集合住宅の成立要件が不充分。

◇区画整理の導入
・道路と宅地の有効利用化。
・北側私道に関しては、 並行して区画整理を検討中。
・住人の高齢化、 各戸の事情により転売が発生―計画を複雑にする。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はいきいき下町推進協議会

(C) by いきいき下町推進協議会

阪神大震災復興市民まちづくりへ

学芸出版社ホームページへ