まちづくり実践ゼミ
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湊川町1・2丁目組合施行土地区画整理事業

小坂 清 (まちづくり推進員)


1.対象区域の概況と被災状況

改行マークいまわしい阪神大震災から3年が過ぎた。 全国のご支援のお陰で鉄道・幹線道路の機能は回復したが、 街の中に入るとその傷跡はまだまだ癒えていない。 復興の諸問題は益々複雑深刻化してゆく、 いうまでもなく震災復興の最重要課題は住宅再建である。

改行マーク兵庫区湊川町1・2丁目は兵庫区役所の北部、 中部土木事務所の裏側に位置している約1.5haの区域で、 ここは幅3m足らずの私道がめぐらされ戦前の木造家屋、 約200戸が密集していたが震災による火災で一物も残さず焼き尽くされ、 かなりの犠牲者も出た。 この地区は、 都市計画道路や公園計画もない土地で、 神戸市の復興事業の対象にもならず、 建築制限も受けない所謂「白地地区」である。

改行マーク被災者は「まちづくり協議会」を平成7年4月に結成し、 震災後毎週「復興勉強会」を開催し、 復興の具体的方策を熱心に検討した。 その結果、 各自の意向に応じ、 一戸建と共同住宅が調和した街づくりをしようと、 基盤整備は住民自らの手による組合施行で、 市街地における土地区画整理事業をやり遂げようと決意したのである。 即ち、 高齢者で資金も乏しく、 狭い土地の小さな家に住んでいた人は、 戸建住宅が建てられず、 集合化・空間活用によって、 比較的低廉に再建できる共同住宅以外に帰り住むことができない。 戸建住宅の再建も促進しながら共同住宅用地をまとめ集約するには、 土地区画整理の手法を採るのが最も効果的であると判断したのである。


2.再建組合準備会の発足

改行マークこの地区の住民は、 昔から共に喜び共に悲しむ、 人間関係の濃密な近隣社会であったのが、 地震はそのようなコミュニティを一挙に破壊してしまった。

再建組合準備会の人は、 住民みんなの合意を得るため、 手順を踏んで精一杯努力した。

改行マーク・・・ということが身にしみて分かってきた。 組合施行の本旨からも強制は避けねばならず、 粘り強く説得を続けるか、 時間がないため共同住宅の規模を再検討しなければならない。 各自の負担が増えても、 あくまで円満な合意事業として進めなければならない。 そうなると湊川町の街づくりは理想的なものでなく、 最低の合格点しかもらえないのも止むをえない。 その上、 現実は順調に行かず、 「一戸建の会」と「共同住宅で再建を望む人達」との間に理屈ではない感情的対立が顕在化していったのである。

改行マークコンサルタントが提示した議論の「タタキ台」としての「まちづくり構想図」をめぐりお互いに猛烈に反発、 再建組合準備会すら空中分解しかねない危機に直面したのである。 その後「兵庫区まちづくり推進課」の精力的な調整がなされ、 同課提案の「湊川町1.2丁目まちづくり計画の具体案」を※調停案として両者が受け入れることになった。 それは平成7年の年の瀬もせまるギリギリであった。 (※別稿「湊川町1.2丁目まちづくり計画の具体案」参照)

改行マーク震災から1年経過した平成8年1月21日この調停案を再建組合準備会臨時総会で議決し「一戸建の会」からも理事を選出、 役員機能を強化することによって、 街づくりが事実上のスタートを切ったのである。


3.土地区画整理組合の設立

改行マーク再建組合準備会は徹底した地権者個別の意向把握を行った。 一方「(財)区画整理促進機構」に業務代行者の推薦を要請し、 公募の末、 再建組合準備会の決議を経て飛島建設(株)を業務代行者に決定し、 1月21日の総会決議を踏まえ、 次に示す「震災復興まちづくり基本方針]を策定した。


(1)目標


(2)事業施行方針

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図1 区画整理前後比較図図2 事業計画図素案

(3)計画図素案

改行マーク図2は骨格的試案であり、 住民の意見、 道路管理の問題、 その他の事情によって修正されるべきモノである。

改行マークこの事業の最大の問題は事業費の見通しであるが、 平成8年3月末、 「被災市街地復興特別措置法」に基づき、 「地権者の大方の同意があれば、 幅員4mの区画街路の整備も、 例外的に公共補助事業の対象に認める」という方向が打ち出され、 組合施行によって、 都市改造的区画整理をすることになった。 直ちに前記「事業施行方針」「事業計画」「定款」案について、 有権者の同意をとるべく奔走した。

図3 土地所有者の同意状況

改行マーク諸問題解決は早期復興という時間的制約があるため、 可能な所から順次施行する、 所謂ステージ施行の方式をとった。

 平成8年8月8日神戸市長に組合設立認可申請
 平成8年11月7日「被災市街地復興推進地域」の決定
 土地区画整理組合設立の認可
 平成8年11月30日湊川町1・2丁目震災復興土地区画整理組合設立
図4 平成9年7月末の仮換地指定状況


4.土地区画整理事業と共同住宅建設事業

改行マーク共同住宅用地は関係権利者の同意を得た換地により定め、 共同住宅を前提とした短冊形換地にしなければならない。 地区内で土地交換が出来ない時は、 用地買収(任意)せねばならず、 共同住宅ゾーンの中で一筆でも未買収地が残れば、 共同住宅の建設は断念せざるを得ない。 敷地を出来るだけ広く確保するため、 一筆と数人の土地を交換することもあった。 交換を民事的に担保するため「土地交換の覚書」「所有権移転の仮登記」、 時によれば、 「使用貸借契約」を結んだ後、 土地区画整理法上の措置(仮換地指定)にもって行くのである。

図5 共同住宅建設計画(平成10年2月19日着工)
   施行主体:住宅・都市整備公団(グループ分譲住宅制度)

5.まとめと今後の課題

改行マークこの手法では、
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図6 湊川町1・2丁目震災復興土地区画整理事業計画図
などの課題はあるが、 協働の街づくりであり、 事業は比較的円滑に推進でき、 戸建住宅と共同住宅の調和が図られ、 施行前より優れた環境が同時に整備出来る。 生活再建が急がれるため、 理想的な街区形成が図れず、 現実に即応したインスタント的で変則的な苦悩の多い街づくりにならざるを得ない。 しかし、 この様な方途に種々の工夫・制度上の改善を加えれば平時の密集市街地における再開発(区画整理)において民間主導で早く街づくりが出来るのではないかと思う。

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