今後空地になっている要因が解決すれば、 住宅などの建築物が建設されることになるが、 道路等の基盤未整備な地域で、 個別に再建が進むと、 震災の大きな被害の原因となった密集市街地の再生につながることが予想される。 特に行政支援が少ないいわゆる白地地区と呼ばれる地域では、 何らかの整備手法が提示され、 導入されなければ、 後世に問題を再生産することになる。
この課題を解決するのに適する手法として、 「安全市街地形成土地区画整理事業」という小規模な土地区画整理手法の展開が期待される。 これは公共団体施行のように都市計画道路や幅員6m以上の区画道路を配置し、 換地手法でそれぞれの宅地を決めていく土地区画整理事業ではなく、 現況の少幅員道路にはりつく住宅を強制的に換地するのではなく、 現況道路を最低4mにし、 その道路上に存在する私的財産を移転補償するものである。 この手法は地域の権利者が建築基準法を遵守し、 4m道路になるみなし道路の宅地を提供(形式的には減歩になる)することに合意が得られれば、 基盤の整ったまちづくりが可能な手法である。
この事業の仕組みは、 一般の土地区画整理事業のように都市計画道路に係る用地費相当額で、 区画道路の移転補償や、 築造費を負担するのではなく、 公道となる道路に関わる移転補償と、 築造費を補助基本額に積算する画期的な仕組みを前提としている。 さらに従前の公共用地を越える(最低15%)*公共用地を整備する場合には、 その超えた割合の用地相当額を移転補償費や宅地整備費に充当することができる。 具体的にいえば、 建築基準法による前面道路が、 私道であろうと公道であろうと、 みなし道路である4mに関わる部分の物件の移転補償を行い、 公道とするためにみなし道路部分は減歩対象となり、 側溝や舖装の築造を行い、 最終的に換地処分で4mの公道に面する各宅地を確定するものである。 場合により、 細かい道路を廃止し、 新たに道路を付け替えすることも可能であり、 区域内の道路を4m以上にすることができればその用地費相当額で区画道路に抵触しない建物や物件の移転補償が可能となり、 換地操作を活用して、 公園や広場の整備ができる。
補助基本額={区画道路面積増加分の用地費}+{公園面積増加分の用地費×2/3}+{区画道路等公共施設の築造費}+{区画道路等公共施設に関わる移転補償費}+{公益施設敷地上の建築物等の移転補償費}
*従前公共用地率が15%以下の場合は15%として計算する
従来は組合施行の土地区画整理事業は、 新市街地(市街化農地や丘陵地)で、 事業後の土地の評価の増進が期待され、 保留地が産み出せる地域でしか活用できない手法であったが、 新たな補助制度の創出により、 保留地が産み出せなくとも、 面的整備が可能となったものである。
小規模組合土地区画整理事業制度
安全市街地形成土地区画整理事業中山久憲 (神戸市都市計画局アーバンデザイン室)
1.小規模土地区画整理事業の適用の可能性
震災復興事業や再建が進む中で、 市街地の中には空地が放置される状況が続いている。 空地が存在する背景として、 住宅を建てたくても経済状況や、 権利関係、 法的制約などで建てられない場合と、 当面住宅市場の状況を考慮して、 急いで建てるのではなく需要が向上するまで建設しない場合の土地とがあり、 これらの空地と、 自己再建が進む土地とがさみだれ的に存在しているのが現状である。
2.安全市街地形成土地区画整理事業の概要
この事業手法は震災後に、 防災上危険な木造密集した市街地を対象にして、 区画道路を整備することを主眼とする土地区画整理事業に補助金を充当するものとして制度化されたものである。 根拠法は「土地区画整理法」で、 「都市構造再編促進事業制度要綱」に基づいている。 対象となる地域は、 地域面積が0.5ha以上あり、 都市計画道路を地域内に原則として含まない、 従前公共用地の面積割合が20%未満の区域である。
3.組合施行土地区画整理事業としての安全市街地形成土地区画整理事業
組合方式の事業は住民主体のまちづくりとして、 基盤を自ら施行者となって整備することができる。 仕組みとして、 事業の成立の要件として、 事業計画案に区域内の所有権者及び借地権者の2/3以上の同意を必要とし、 組合事業の進め方は権利者の参加する総会で全てを決定するもので、 プロセスそのものが公開され、 民主的に運営される。 都市計画道路の計画もなく、 行政主導で事業化が困難な地域で、 小規模の事業を推進する母体としての組合方式の面的事業は基盤整備を求める住民の声に応えられる唯一の手法である。
4.安全市街地形成土地区画整理事業活用の条件
新たな制度としての安全市街地形成土地区画整理事業を具体的な地域に適用するにあたって、 課題・条件は次のようである。
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