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8 マンション再建


 今回の地震で大きく被災した神戸市内のマンションは70棟であり、 そのうち補修で対応したものが12棟(1998年4月現在、 以下同じ)、 建て替えの方針を決定したもが54棟、 残りの4棟が調整中または非再建である。 建て替え方針の54棟のうち着工済が51棟、 完成が30棟である。 マンションの再建には・被災マンションの解体除去・建て替え決議など区分所有法上の手続き・建設費用の調達・現行建築基準への適合・事業実施主体 など課題が多く、 戸建て住宅の再建に比し極めて困難な事業である。 神戸市ではマンション再建を住宅復興の最重要課題の一つとして位置づけ地震直後から多面的な支援を実施してきた。


神戸市による再建支援施策の概要

◇分譲マンション補修・建替相談登録センターの設置

 1995年2月14から1ヵ月の間、 第1次的な市民からの相談の場として「分譲マンション補修・建替相談登録センター」を設け、 整理したのち、 専門家ボランティアの支援ネットワークにつないだ。 支援ネットワークは建築・法律の専門家、 不動産関係団体、 集合住宅管理組合連絡組織により構成された。

◇コンサルタント派遣

 1991年7月から神戸すまい・まちづくりセンターの体制を充実し、 マンション再建に対してもコンサルタント派遣を適用することとした。 1998年2月時点での派遣実績は42件である。 派遣コンサルタントは建築関係にとどまらず弁護士・税理士・土地家屋調査士等である。

◇建設費補助制度の活用

 優良建築物整備事業・住宅市街地総合整備事業の国庫補助事業制度を活用し国・県・神戸市から建設費補助を受けたマンション再建事業は46団地であり、 被災前3,100戸余りの住宅が再建後3,400戸程になっている。 建設費補助は共用廊下や階段室、 駐車場の整備費を対象とし、 平均して戸当たり400万円程度である。

◇建築基準法の特例措置の活用

 建築基準法は過去何度となく改正されており、 建築物を再建、 改築をする際には最新(現行)の基準に適合させなければならない。 今回被災したマンションには建築年次の古いものが多く、 最新の建築基準を満たして再建した場合、 従前の床面積を確保することができない。 (「既存不適格建築物」と呼ぶ。 )一方建築基準法には敷地規模や空地率などの一定の要件を満たす場合には一般基準をこえた建築を認める特例措置がある。 「総合設計制度」もその一つであるが、 今回この制度の運用を柔軟に行いマンションの再建を支援した。 大きく被災したマンションのうち既存不適格建築物は33棟であり、 その内25棟が特例許可による再建を行った。

◇被災建築物の公費解体

 市民の自力再建を支援するため取り壊しの必要な建築物の解体処分を公費で実施した。 解体処分に要する費用は多額のためマンション再建の資金計画には大きく貢献した。 しかし被災後三年間という期限付きであったため本来なら大規模修繕で対応できたものが十分な検討を行うことなく解体・再建に走ったケースもあったとの批判が一部にはある。


マンション再建から学ぶこと

 震災復興の大きな流れのなかでマンション再建に対しあらゆる支援が行われ、 結果として大部分の再建が実現したが、 二三の地区では建て替え決議を巡って裁判がおこなわれている。 「区分所有法」の規定の不備は震災直後から多方面より指摘された。 平時での建て替え需要が大きく顕在化するのはそれほど先の話ではない、 震災の教訓を踏まえた法制度の整備が待たれる。 また既存不適格マンションに対する「震災復興型総合設計制度」などの特例許可の適用をめぐり、 周辺居住者との間で居住環境に関する争いも少なくない。 特例許可の適用がない限り既存不適格建築物の再建は極めて困難であり、 今後も特例許可の発動が求められるであろうが、 周辺住民ニーズとの間を調整するルールの開発が不可欠であろう。 今回の再建の過程でコンサルタントやディベロッパーの果たした役割も大きかった。 企業としての収益を度外視して職能に根ざした活動は区分所有者達を再建へ、 あるいは補修へとむかわせる大きな原動力となった。 まさに震災復興の局面だからこそといえるものである。 平時の建て替え検討時にこの役割を誰が担うのか、 費用は誰が負担するのか、 建て替え事業推進のためのシステムの構築は困難で大きな課題である。

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