都市の記憶
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

歴史の積み重ねから未来を

画像ki09
海岸ビルヂング(兼松商店)(明治44年竣工、 設計:河合浩蔵)
有村

改行マークさきほど、 異人館の話をしましたけど、 異人館だけじゃなくて、 居留地周辺には、 大体五十棟ぐらい、 戦前の近代建物があったんです。 それがどんどん壊されていって、 震災前は十棟ぐらいになったと思うのですが、 それでも震災前にはかなりあったわけです。

改行マーク私の事務所が入っていた海岸ビルヂングというビルは、 明治四十五年に河合浩蔵さんという方が建てられたビルなんですが、 この方がちゃんと地盤改良をし、 なおかつ第二次大戦後修復するときにちゃんとした建築家が耐震壁を入れた建物だったので、 ほかのレンガ造が潰れても、 この大きなレンガ造りのビルはひびこそ入ったものの倒れなかったんです。 河合浩蔵さんは明治の中期に耐震理論を一生懸命やっておられた方なんで、 河合さんの建物は二〜三棟残っていたんですね。 修復していくべきだと思いましたが、 やっぱり経済的な論理で全部取り壊されたわけです。

画像ki10
震災前の栄町通(撮影:高橋裕嗣)
画像ki11
震災後の栄町通の風景
改行マーク私は「記憶喪失のまち」という文章をある雑誌に書いたことがあります。 記憶喪失というのは非常に恐ろしいことで、 やはり、 歴史の積み重ねの中で未来をつかんでいくということが大切だと思うんです。 なくなってしまった街角や建物をもう一度なんらかの形で再現していくという運動を起こしていくべきじゃないかと思っています。 ですから、 写真を集めるとか、 ビルを建てる時に昔の面影を付け加えるとか、 いろいろ方法はあると思うんですけれども、 神戸を記憶喪失のまちにしてはいけないと思っています。

竹山

改行マークどうもありがとうございました。 僕が入っていたビルも同じ河合浩蔵の設計だったんですが、 基礎が抜けまして、 取壊しになりました。 また復元されるそうですが、 写真を見ると涙が出そうになるんですね。 そういう記憶は大事だと思います。 では、 小松さん、 お願いします。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見は「都市の記憶」シンポジウム実行委員会

(C) by 「都市の記憶」シンポジウム実行委員会

阪神大震災復興市民まちづくりへ
学芸出版社ホームページへ