Bさん:
Cさん:
会場から
私は神戸一中の四十二回生です。 ここのすぐ東にありました昔の御影第二小学校を卒業して、 神戸一中へ進みました。 その御影の第二小学校も第一小学校もこの御影公会堂も、 先ほどおっしゃいました魚崎小学校、 菊正宗の現在の本店、 東明にある甲南漬けの高嶋さんの古い鉄筋コンクリートの三階建、 そのすべてが今度の地震でひび一ついかずにしっかりしています。
御影公会堂(昭和8年竣工、 設計:清水栄二)
市立魚崎小学校(昭和4年竣工、 設計:清水栄二)
旧高嶋邸(昭和5年竣工、 設計:清水栄二)
いま申し上げた建物を設計したのは、 神戸一中の十五〜六回頃の卒業生の清水栄二さんとおっしゃる方です。 神戸一中から旧制の第二高等学校、 そして東大の工学部の建築科を卒業されて、 六甲道駅の南の辺で事務所をお持ちでしたけれども、 この阪神間で清水先生の右に出る者はいないといわれたような方です。 関東大震災後の耐震構造をよく研究なさいました。
この御影公会堂も戦災では焼けましたが、 神戸市がちょっと補修はしましたけれども、 ほとんどそのままで、 現在まで利用してきました。 今度の大震災では潰れるかもしれないと予想されていたのに、 ひび一ついかずに持ちました。 そしてこの東百メートルのところに御影高校があります。 これは、 見事に潰れたり、 散々にひびがいったりしました。 魚崎小学校周辺のマンションも散々な目に遭っています。 いかに、 この清水先生の建築が素晴らしかったかということです。
私は建築の専門家ではありませんけど、 マンションなんかのオーナーですので、 建築のことはよく体験しています。 建築の基準法では、 そこにいらっしゃる先生方がご存じのように、 大体250ガル(注)の振動に耐えたら大いばりでしょうか。 このあいだの地震では、 私どもの木造の平屋の家の柱がぽんと横へ十五センチメートルほど動きました。 これは、 980ガル以上の力で柱が持ち上がって横へ飛んでいった。 そうすると建築基準法の四倍以上の力が出ないことには、 この地震には持たなかったわけです。 私の一中の同期生に、 鉄筋コンクリートの建物を設計してもらったんですが、 その人は建築基準法の五倍は強くしなければ持たないと、 三十年前から言っていました。 そしてその方に設計してもらった建物はひび一ついかずに残っています。
(注)ガルとはcm/sec2で加速度の単位。
竹山:
気象庁震度5で80〜250ガル、 震度6弱で250〜325ガル
ちゃんと設計したものは残っているという話で、 設計者にとっては大きな教訓だと思いますが、 他いかがですか。
神戸の市会議員をしていますBと申します。 小松先生の連載、 毎週毎週楽しみに、 暗いうちからポストに取りにいっていました。 我々も何らかの価値観を変えて生きていかなければいけないと、 常に紙面を読みながら思っていました。 せっかくのこういう機会ですので、 小松先生、 これからの神戸人、 こう生きよというキーワードを何か一つおっしゃっていただけたらありがたいと思います。 よろしくお願いします。
この御影公会堂は大学時代からの思い出のある建物で、 これが健在であることに、 非常に心強いものを感じます。
ところで、 公費解体という点で考えると、 神戸の地震が、 大都市の地震での行政の対応のモデルケースになっているのではないかと思います。 つぶすのにはお金を出すが、 補修にはお金を出さない。 これによって、 本当につぶれた家を片づけることができ、 助かった人もいるでしょうが、 つぶれてもいない家まで、 全壊認定さえあれば、 タダで片づけてくれるということで、 つぶされていきました。 全壊認定は五〇%以上つぶれていれば出るのですが、 構造が五〇%以上やられているというわけではないのです。 そういう意味で、 構造の専門家を判定のときに寄越していただきたい。 上っ面だけ見て、 これはつぶれたのつぶれてないの、 これはだめだのということではなくて、 もっと構造的に確実な判定をしていただかないと、 わたしたちのマンションのようにせっかく直る建物が、 スクラップ&ビルドの経済法則により、 あわや瓦礫になろうとしています。
市会議員もいらっしゃるようですからお願いしたいんですけれども、 構造に対して調査費を出してください。 マンションの管理組合が構造への調査費を出すのが惜しいから、 建物の診断ができないというようなこともありまして、 大変苦労しました。
それから、 前にお並びの先生方は有名な立派な方ばかりですから、 どうか私たちを公費解体から救っていただきたい。 この建物は修理がきかないから公費で解体をするように、 これから考えていただきたい。 神戸市にもお願いしたいのです。 新しく建て替えたほうが資産価値が出るというようなことをすすめるコンサルをボランティアという名で派遣しないでほしい。 正しく判断できる専門家をコンサルとして派遣してほしいのです。
そして、 先生方は発言力をお持ちです。 いくら民衆が頑張ってもどうにもならないことがあるんです。 大蔵省や厚生省を回ってもどうにもなりませんでした。 どうか映画なり小説なり学会なり、 いろんなところで助けていただきたいと思います。 被災地からの叫びです。 よろしくお願いします。 (拍手)
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