写真1 倚松庵 |
これは「倚松庵」、 谷崎潤一郎の旧宅です。 現在は「民間」ではないのですが、 谷崎のような文化人がここに住みたいと思う環境が、 阪神間、 神戸市東部にあったということを物語るものとして、 最初に紹介させていただきました。
〈写真2/3/4〉
ここからが「民間文化施設」です。 まず神戸東部を考えるときに決してはずせない、 灘五郷の施設をご紹介します。 最初は、 酒造会社が企業活動の一環として運営されている施設群です。 写真2に示しますのは、 「沢の鶴資料館」です。
ここは昭和五十三年に開設され、 震災の後、 平成十一年に復興オープンされました。 蔵自体が県の重要文化財に指定されており、 その再建にあたっても元あった建物の木材を五〇%以上使われたということです。
写真2 沢の鶴資料館
写真3 沢の鶴資料館内部
写真4 沢の鶴資料館の佐伯隆雄さん
写真5 白鶴酒造資料館 |
写真6 白鶴酒造資料館内部 |
次は「白鶴酒造資料館」です。 ここも平成九年に復興オープンされました。
この展示スペースは、 私達が見た中で一番広かったと思います。 蔵人の人形を各所に置き、 かつての酒造りの様子がよく分かるように展示されています。
写真7 菊正宗酒造記念館 |
写真8 菊正宗酒造記念館の酒造用具 |
次は「菊正宗酒造記念館」です。 先ほどの沢の鶴さんでは建物が文化財であったのに対し、 ここでは内部の酒造用具が国指定の重要文化財になっています。
展示されている酒造用具は、 震災で建物がつぶれた時、 手作業で掘り出されたそうです。 また、 日本酒ゼミや、 日本酒の通信講座など、 日本酒を広める活動を色々されています。
今見ました沢の鶴資料館、 白鶴酒造資料館、 菊正宗酒造記念館は、 展示スペースも広く、 施設として展示に力を入れておられると感じました。 また余談ですが、 各施設が共通して独自のプリクラを開発されているのを興味深く思いました。
写真9 神戸酒心館 |
写真10 神戸酒心館ホール |
また一方、 展示などと同時に、 飲食販売をどんどん取り入れていこうという立場もあります。 写真9は「神戸酒心館」で、 こちらの「豊明蔵」は震災後再建されたものです。 写真9には映っていないのですが、 左手の方に和食のレストランがあり、 美味しい料理をあまり高くない値段で提供されています。 展示とレストランと、 文化事業を複合的に展開されている例と言えます。
私共のまちづくりフォーラムも第2回目はこちらをお借りして開催しました。 つい先日も文楽の上演をされており、 文化活動も活発になさっています。
写真11 櫻正宗記念館櫻宴 |
「櫻正宗記念館櫻宴」です。 こちらは飲食と販売に力を入れておられます。 レストランとカフェがあり、 夏にはミニビアガーデンも開かれます。 一方展示では、 ラベルや顕微鏡など酒造に関わる小物類を扱っておられるのが特徴です。
写真12 浜福鶴吟醸工房 |
写真13 浜福鶴吟醸工房展示販売コーナー |
「浜福鶴吟醸工房」です。 こちらでは現在の酒造りの行程が見学できます。
展示販売コーナーも広く設けておられ、 施設の一階部分は写真13のようなかたちになっています。
写真14 瀧鯉蔵元倶楽部酒匠館 |
写真15 瀧鯉蔵元倶楽部酒匠館内部 |
次は「瀧鯉蔵元倶楽部酒匠館」。 こちらはNHKの「甘辛しゃん」の撮影にも使われていた場所です。 この建物は蔵のような外観をしながら、 インテリアは西洋風になっている面白い建築です。 こちらでは主として展示販売を心掛けておられるそうです。 興味深いのは、 会員の方を集めて「蔵元倶楽部」という会をつくり、 会員専用のお酒を造ってらっしゃることです。
〈写真16/17/18/19〉
今まで述べました櫻正宗さん、 浜福鶴さん、 瀧鯉さんは、 飲食と販売を展示と絡み合わせてやっていこうという施設ですが、 それとは違った立場で運営しておられるのが、 こちらの「泉勇之介商店」です。
写真16は震災で残った酒蔵です。 他に残った酒蔵が非常に数少ないということもあり、 震災後に公開することにされたそうです。 特に専用の展示物はなく、 係員もおいておられません。 また部屋を片づけたら広いスペースができたということで、 この蔵の二階部分をホールとして貸し出されています。 主として室内楽の演奏などをされているそうです。 貸しホールや工場の公開はあくまでもサービスの一環という立場をとっておられ、 こちらでは製造と公開展示、 さらに文化事業が渾然一体となっています。 ですから動線上の問題が難しいとお話しされていました。
〈写真20/21/22〉
酒造メーカーとは別の面白い活動をされているのが「甲南漬資料館・武庫の郷」です。 写真20の印象的な建物を中心に「甲南カルチャー倶楽部」と、 資料館を同時に運営しておられます。
震災以前は「甲南カルチャー倶楽部」と資料館とを分けておられたそうですが、 震災後一つにされました。 地域や阪神間の会員を中心に様々な文化活動を展開されています。 会員数は約七百名、 常設の教室が四十、 月に四、 五回のイベント、 年に何回かの大イベントと幅広く活動されています。 特に甲南漬け教室を開くと百五十人の会員さんが集まってこられる。 さらに毎日四、 五人の会員さんが必ずこちらに来ておられるということです。
事業部長の東さんは元々工場長をなさっていたのですが、 震災を期にこちらの運営に関わられるようになりました。 企画運営のプロを誰も雇わず、 一人でゼロから考えて何から何までこなされるという方です。 今後はちゃんと一年間を見据えて事業の計画やプログラムを組みたいとおっしゃっていますが、 その活動の幅広さは随一でした。
以上で酒蔵系の紹介を終りますが、 これらの施設は、 企業として、 商売としてやっていらっしゃるためか、 互いに違いを出さなくてはいけないと意識されていることが印象的でした。 展示の仕方、 文化事業の展開の仕方がそれぞれ個性的だと言えると思います。
写真16 泉勇之介商店
写真17 泉勇之介商店内部
写真18 泉勇之介商店内部
写真19 泉勇之介商店三代目当主、 泉勇之介さん
写真20 甲南漬資料館・武庫の郷
写真21 甲南漬資料館・武庫の郷内部
写真22 甲南漬資料館、 事業部長の東保人さん
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