神戸東部市民まちづくり支援ネットワーク
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

和田ホール

和田興産株式会社社長 和田憲昌

和田ホールができたいきさつについて

画像ma058
写真58 WADAホール
改行マーク酒文化を語った西村さん、 そして文化を育てていらっしゃる世良さん、 お二人のお話の後で、 コテコテの商売人がお話しさせていただきます。

改行マーク私が手がけているのは、 中央区栄町四丁目の多目的ホールです。 百人ぐらい入れる広さです。

改行マークこの土地は神戸市の土地と交換したものですが、 その際に、 当時都市計画局長だった現在の笹山市長さんから「何か文化的な施設も併設して欲しい」と依頼されたのがホールを作ったきっかけです。 神戸の旧居留地とその近辺はもともと文化的な風土ですし、 当時は企業メセナも話題になっておりました。 まして私達の土地の前には辰野金吾先生が設計した煉瓦造の建物がある土地柄です。 正直言うと「エライ所に来たな」と思ってしまいました。

改行マーク私の家は全くの神戸の地元民で、 奈良時代から和田岬に住んでいたようです。 大輪田の泊と言われるように、 海の交通の要所ですから、 唐舟が入ってくると通行料を払って貰い、 払って貰えないときは海賊になるというようなことをやっていたらしいのです。 そんな地元民でも文化施設を作らねばと思って、 和田ホールを作った次第でございます。


ホールの運営状況

改行マークホールを作ってから十年になりますので、 利用していただく人はほぼ定着しています。 もちろん、 ビジネスにはなりません。 せいぜい月に十五〜十六万円ぐらいでしょうか。

改行マーク利用していただく人の顔ぶれについてですが、 だいたい週に三回、 午前中はコーラスグループが使ってくれています。 女性のさわやかな歌声が私たちの事務所にも聞こえてきて、 今の奥様方の時間は余っているのだな、 こういう女性の力をビジネスにも取り込めないかなどと考えたりしています。 日祝日はだいたいがピアノの発表会です。 それ以外には、 本業の不動産業に活かすため「ワコーレ」という名前の不動産・建築関係の情報交換の会議に使っております。

改行マークしかし、 これだけ稼働しても月に十五〜十六万円の売り上げですから、 人件費と光熱費は持ち出し。 文化とは儲からないものだと思っています。 しかし、 人が集まってくるのが民間文化施設の大きなメリットだと考えています。


これからはメンテナンスをする時代

改行マーク私はまちづくりはやさしいけれど、 まちを維持・管理していくのは非常に難しいものだと常々考えています。 地域のマネジメントをどうするかが大事なのです。 その観点を持たないと、 まちは発展していきません。 私もまちづくりのプロとして言わせてもらうと、 まちをどうマネジメントするかが問われる時代になったと思っています。

改行マークまちはもともと民間が作らねばならない部分がほとんどで、 その後を公共が作っていくという風になっています。 公共と民間の接点の部分、 これは「共」という言葉でくくれると思いますが、 その部分がなるべくたくさんできることで、 まちのマネジメントができてくると考えています。 その一端ともなればと思ってホールを作ったのですが、 それが地域に根ざすかどうかが問題なのです。

改行マークこれについては、 先ほど松原さんが写真で各施設を紹介されましたが、 ああいうことで、 各施設の人びとは「私のやっていることは認めてもらっている」と力づけられるのではないでしょうか。 こういう紹介の仕方は大変いいことだと思います。


神戸の商売人の反省

改行マークまた、 野崎先生もおっしゃったように「まちは働いて稼ぐだけの場所じゃない」ということです。 「そこに住んで、 そこで人生を終えていくようなまちをこれからは作っていかなければならない」のです。 特に地震以降の神戸はそうです。 と言いますのは、 元町あたりでビルを再建したオーナー達が「しまった。 最上階に自宅を作っておけばよかった」ともらしているのを最近よく聞くからです。

改行マーク自分が商売をしているまちが二十四時間どう動いているか、 どう動かせばいいか。 それは住んでみないと分からないことですが、 それを忘れてしまうから死んだようなまち、 金太郎飴のようなまちがあちこちにできてしまったのでしょう。 それに対する反省が日本で一番多いのは、 多分神戸の商売人ではないでしょうか。 地震にあったからこそ、 そういう問題点がはっきり見えてきて、 これからのまちづくりはどうすべきかという所に行き着いたのだと思っています。

改行マーク市民が担う地域社会をどう作り上げるべきかについては、 まちづくりの仕掛けだけでなく、 その後をどうフォローすべきかも考えていただきたい。 本来はそこに住まわれる方々がやっていかねばならないのですが、 それがなかなかできないのが現状です。 工場では高価な機械を買えばちゃんとメンテナンスしながら使うのですが、 土地についてはそういうフォローが考えられてこなかった。 「土地は放っておいても値が上がるから」というのが戦後日本の神話でしたが、 もうその神話は消えました。 自分の土地・建物にもっと手をかけていかなければまちは生きてこないでしょう。 その中に、 文化施設ができてくると素晴らしいことだと思っています。


岡本のまちの素晴らしさ

改行マークそういう意味では、 この好文園コミュニティホールの試みは素晴らしいですし、 今後も有効利用なさってこのまちの活性化の一助となればと期待いたします。 今神戸で元気だと思うのは、 岡本、 南京町、 ハーバーランドの三つぐらいですが、 ここはハーバーランドのように大企業に支えられた町でないことが強みだと思っています。

改行マーク昭和三十年代から注目していましたが、 岡本には地熱的なものがある。 お店が二階、 三階まで貼り付いている商業施設は、 元町にもセンター街にもそうないのです。 これは素晴らしいことです。 我々のようなプロが手を入れなくて、 自然発生的にできたまちで、 地元のみなさんがここまで育てた町はこれからも生き続けるでしょうし、 またそうあって欲しいと願っています。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見は神戸東部市民まちづくり支援ネットワーク

(C) by 神戸東部市民まちづくり支援ネットワーク

阪神大震災復興市民まちづくりへ
学芸出版社ホームページへ