神戸東部市民まちづくり支援ネットワーク
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街文化の研究

武庫川女子大学 角野幸博

間の魅力

改行マーク私自身も阪神間に住むようになって十五年になります。 住む前から阪神間の魅力は「間」にあると言っていたのですが、 住んでみると単に大阪や神戸に行きやすいといった地理的な便利さだけではなく、 もっといろんな「間」の魅力があると思いました。 例えば「山と海の間の魅力」「伝統的な文化とモダンな文化の間の魅力」「伝統産業のストックと郊外住宅の生活文化」など、 異なる要素が両方ありながら、 一緒に混ざってしまうわけではない。 隣り合って違うものが存在していることが、 阪神間の独特な魅力を育ててきたのだろうと思います。

改行マーク文化はそうした独自性から出てくるのですが、 その根源には住まいと生業とをセットでお持ちの方々のパワーがあると思います。 それを「公」に対する「私」の文化だとみなさんおっしゃっているのだと思っています。 これまでもそうでしたし、 これからも「私」の文化は、 できる限り住まいや様々な生業のすぐ隣にあって欲しい。 そうでなければ魅力は少しずつ衰えていくという気がします。


まちづくりのタネ

改行マーク阪神間のモダニズムの歴史について言えば、 素晴らしいパトロンがいて自分の趣味をお金を使って育てたり、 過去のストックを収集されたりしてきたことが、 現在の地域イメージにつながっています。 しかし、 そこにはタイムラグがあります。 今評価されているのは、 明治末期から昭和初期にかけてのストックです。 今のまちづくりは、 その遺産をちょっとずつ食いつぶしながらやっているといったところでしょうか。

改行マークだから、 まちのイメージとまちづくりには若干のタイムラグがあることを覚悟して、 今どんなタネを蒔いていけばいいのかを考えていかねばならないと思います。


民間ならではの魅力

改行マークもうひとつの課題は、 民の魅力を高めるにはどうしたらいいか、 です。 今までのお三方のお話や松原さんの資料を見ていても、 「ミュージアム+サロン」とか「資料館+レストラン」などのように本来の機能にプラスαされたものが多いことが分かります。 そういうプラスαの魅力付けを自由にされているところが民の施設の特徴だとも思うのです。

改行マーク多くの人がご存知でしょうが、 阪神間ミュージアムネットワークというものがあります。 これは公的ミュージアムを核としてそれに一部の財団系ミュージアムも参加しているネットワークですが、 兵庫県教育委員会がやっているので硬いのです。 しかし、 今までのお話を聞いていると、 民のネットワークの仕方はいろんな形があるのだと意を強くした次第です。 相互にお客さんを紹介し合うことから、 同じ酒造系のミュージアムでも「食べ物のことはあちらさんに任そう」とかいろんな形がある。 それがネットワークしていくことで、 結果的にはまちづくりそのものになっていくわけです。 空間をどうするとか、 人の流れをどうするかを考えつつ、 これからさらに中身の濃いものにしていく工夫が必要でしょう。

改行マーク今述べた阪神間ミュージアムネットワークは、 共通のパンフレットを作ったりホームページを開いたりしています。 おそらく今後は共同展や企画展をやっていく方向になるでしょう。 民のミュージアムやホールでもネットワークを組んでいく中で、 プラスαの魅力を備えた様々な参加の仕組みを呼びかけていってはどうでしょうか。 それは、 共同の企画展やお客さんの紹介に止まらず、 いろんな意味でお客さんが参加していけるような仕組みです。

改行マーク運営が大変なのは百も承知ですが、 大学生やシルバーボランティアによるスタッフも考えられるでしょうし、 それにちょっとプラスするようなもの、 「この場所を貸しますから何かやってみませんか」というようなものも良いのです。 公的な施設ではできない広い参加を求めることが民の施設では可能ではないかと考えています。


新しい建物は文化のタネになっているか

改行マークちょっと話は変わるのですが、 最近の神戸東部の分譲マンションでは、 この地域の魅力を全面に出して販売されています。 「近所にはこんなミュージアムがある」「伝統的なお屋敷街だ」「風景がこんなに素晴らしい」などなど、 以前の広告に比べると地域性を語るものがたくさん出ているように思うのです。 ここが商品価値のある環境や地域イメージの場所だということを、 売る側も買う側も意識し始めたということでしょう。

改行マークしかし、 当のマンションは、 確かに他地域のものよりグレードは高いのですが、 それ自身が「文化を育てるタネマキ」になっているとは思えません。 そこを考えていくべきです。 具体的に言うとマンションの一階にホールを作ってもらうとか、 それぞれのマンションにひとつは屋外アートを置いてみるとか。 とにかく新しい開発行為そのものを、 文化的ストックを積み重ねていくというレベルまで高めていけないかと思います。 それに共感できるお客さんは、 きっとそのまま地域のミュージアムのお客さんになっていくでしょう。 つまり、 うまくお客さんを選んで、 地域文化を支えてくれる人を集めていく方法もあるということです。

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