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企画のプロデュース

運営者である商店街のこだわりがポイント

庵原

改行マークそれについては、 商店街が何をイメージしてやろうとしているのかがポイントになります。 企画にはお金もかかるし、 採算を合わせるのも簡単にはいかない。 しかし、 その前に施設の使い方をきちっと決めることです。 まずは、 グレードをどうするのか。 ここは下町ではなく、 高級住宅地のイメージです。 住んでいる人や訪れる人が何を望んでいるのかをまず調べ、 よその商店街にはできないことを考えて欲しい。

改行マーク安易に実行すれば、 こういう場所がカラオケボックスになってしまうこともよくあるのです。 カラオケが悪いわけではありませんが、 ここにふさわしい企画なのかどうかを判断していただきたい。

改行マークまた、 ひとつ付け加えるならば、 ここではロックのライブはしない方がいいですね。 一生懸命な彼らには悪いけれど、 施設は必ずいたみます。 やりだしたら彼らは壁を蹴ったりします。 音楽のジャンルも考えた方がいいと思います。

改行マークやはり、 この町の人びとにとってどんな施設がふさわしいのか、 それに合う企画は何なのかを常に考えていってほしいものです。 私個人としては、 若い音楽家が利用できる場所が欲しいと思うし、 上手に企画すればグレードを上げることも可能だと思っています。 単なる貸しホールにだけにはなってほしくない。 それは商店街の方たちにも考えて欲しいと思います。

改行マーク今思い出したのですが、 岡山県のある山里の温泉ホテルで、 年に五回、 宿泊客だけのためのコンサートを開いているところがあります。 ギャラは多くないのですが、 なかなか楽しい催しです。 その催しでホテルのリピーターをしっかりつかんでいます。 そういうやり方もあるのです。


民間施設でしかやれない企画がある

角野

改行マーク公の文化施設は公開するのが原則ですが、 民間の場合、 民であるが故に非公開でもいいんです。 逆に言えば、 民であれば公にはできないやり方ができるということでもあるのです。

改行マーク例えば、 茶道具は公の美術館に収められると、 ガラスの向こう側で展示されたものを眺めることしかできません。 しかし、 民間の美術館ならそれを使ってお茶会をしても怒られることはないはずです。 展示だけでなく、 実際の暮らしの中で美術品の本来の使い方ができることが民間文化施設の最大の魅力ではないかと思うのです。 絵にしてもサロンの中に飾って、 そこでお茶を飲んだりコンサートを開いたりする。 そういう民間でしかできない企画がないかと思うのです。

改行マーク指定文化財の場合、 国や県のうるさい規定があるとは思いますが、 指定外のものでも良いものはあるはずです。 私は、 お茶道具なんて展示されたとたんに、 その本来の使命は終わったと思ってしまいます。 本来の使い方ができるような企画をすると、 それに対してお金を払おうという人はまだまだいると思うのです。 そういう企画では、 入場料を払うという発想ではなく、 美術品に触れるその瞬間だけでもパトロンになるのです。

改行マーク今の美術品のあり方は本来のあり方とあまりにかけ離れているのではないでしょうか。 例えばお寺にしても、 座敷の襖絵が文化財に指定されたとたんに、 そこに座ることも許されなくなってしまう。 それはとても淋しいことです。 本来のあり方で美術品に接する機会があればいいと思います。

改行マークしかし、 そうした企画の際、 「何でもできる」型の施設ではきっと難しいだろうと思います。 そういう空間では、 企画や美術品本来が持っているパワーが発揮されないという気がします。 だから、 まさにサロン型のパトロンが出てきてくれないかと考えています。

改行マークもうひとつ考えているのは、 参加すること自体が喜びとなるような企画です。 例えばこのホールはフル稼働しても、 赤字かトントンでしょう。 だったら入場料を収益とするのではなく、 参加すること自体にお金を払ってもらえるような企画はどうか。 例えば日本舞踊の世界では、 演じる側がお金を払っていますよね。 そんな企画のあり方がないかと思います。


公と民の役割の再構成

角野

改行マークそれを追求していくと、 民がとことんやりたいことを追求するなら、 公の役割は一体何かとも考えてしまいます。 やはり、 公の役割は不特定多数の人を相手に、 安い料金で本物に出会えるチャンスを作ることでしょう。 それはそれで必要だと思います。 今までは、 公と民は全く別の組織でやってきていますが、 それを上手く相乗りさせる方法もありそうです。 イメージとしては、 PFI(プライベート・ファイナンシャル・イニシアティブ、 公共事業を民間で作る)を考えているのです。 例えば、 このホールを一定期間だけ公共が運営してみるのもひとつの手法だと思います。

改行マーク公と民が共同運営している例をひとつ紹介しておきます。 新潟県のある村で、 ひとつの建物の中でホテルとユースホステルが共存している所があります。 客室が違うだけなんです。 ユースホステルの方は料金が安い代わりに、 客室や料理はそれなりのレベルとサービス。 しかし、 露天風呂など共用空間は利用できるのです。 これからの施設のあり方のヒントになればと思ってご紹介しました。

野崎

改行マーク入場料を払うのではなく、 そこに来る人がパトロンになるというお話ですね。 アメリカではNPOが美術館やオペラハウスを作るという話があるのですが、 それに近い話だと思いました。

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