ジャズプレーヤーの佐々木さんは、 音楽家の立場から今日の話を聞いてどう思われましたか?
僕は、 地域のためみんなが集まって話し合えるこういう場があること自体、 素晴らしいと思います。 僕が住んでいる神奈川県の地区と比べると、 レベルが違うような気がします。
このホールをどう使うかについてですが、 何が流行るかとか、 どう使えばうまくいくかということは読めないと思います。 音楽の世界でも、 何が流行るかなんて誰にも予想できません。 多分、 その時の世の中の動きや全体のイメージとマッチングしたものが流行ると思うのですが、 そうするとあまり既成概念にとらわれないで面白いと思うものをやってみた方がいいように思います。
ただ、 今の日本人は家庭の中のしつけとか文化的なものの考え方がないという感じで、 それが淋しくもあります。 ヨーロッパやアメリカではどんな家庭でもそれなりにちゃんとやっているように見えたので、 なおさらそう思うのかもしれません。 だから、 日本で文化を育てるのは駄目なのかもしれないという諦めの気持ちもあり、 どうしたらいいか分からないと言うのが正直なところです。
文化施設を調査していた中で、 いくつか疑問が出てきたので、 知っている方がいれば教えていただければと思います。
まず、 御影周辺の施設についてです。 サロン的雰囲気を持って地域から若い才能を育てようとしたり、 文化の底力を支えようとする施設が御影周辺には多いように思うのです。 それは何か理由があるのでしょうか。
庵原:
御影周辺のことをお話ししますと、 先ほどお話下さった世良先生も画家であると同時にピアニストでもあって、 若いピアニストを育てました。 ご自身も小磯先生に絵を教えてもらったりと、 確かに御影にはそういう気風があります。
それと、 戦前には御影では江藤さんの大きなお屋敷があって、 そこが芸術家のサロンになっておりました。 私の母の娘時代のことですが、 「まるで『風と共に去りぬ』に出てくるようなすごいお屋敷だった」と言っておりました。 他にもサロンが開けるようなお屋敷がいくつもあったようです。 だから、 阪神間の阪急沿線にはそうした意識の旦那衆が住んだということなのでしょう。
次にうかがいたいのは王子公園周辺をご紹介したときに触れたことです。 灘区ではそれぞれの施設では熱心に活動しているのに、 全体的な盛り上がりがなかなか出てこないのです。 これは広報に問題があるのではないでしょうか。 地域の連携や広報の仕方にいい知恵があれば、 おうかがいしたいと思っています。
庵原:
神戸市ではそれぞれの区で広報はしていても、 神戸市全体の広報はないのです。 あとは新聞を使うしかない。 ところが、 新聞は個人の活動なら載せるのに、 企業の活動は載せてくれないんです。 必ず広告のページの方に誘われる。 酒蔵の活動はもっと全国発信してもらった方が地域イメージもアップできるのに、 しないのです。
僕は神戸市の文化レベルは横浜よりずっと低いと思っています。 音楽祭を神戸市に持ってこようとしたことがあるのですが、 どこが窓口か分からず、 結局札幌へ持っていくことになりました。 広報を一本化して欲しいと強く思っています。 もう少し、 神戸市は文化戦略のようなものが必要なんですが、 お上が考えるものじゃなくて、 民間から起ってくるもので何かやっていただけたらと思っています。
小森:
広報についてですが、 私は尼崎でイベントを何で知ったかという調査をしたことがあります。 それによると、 リピーターが一番多かったのですが、 それ以外は新聞のローカル広告を見たという人が多くて、 行政の広報を見たという人はほとんどいなかった。 行政の広報は普通の人は読まないのです。 だから、 そこに出すよりは新聞などの媒体を利用した方がよいのではないかと思います。
それと、 今日のお話で出なかったテーマを一言言わせていただきたい。 やはり地域の文化もまちづくりが基本となりますので、 岡本のまちをどうするのかという話がベースにあってしかるべきだと思うのです。 「品格と個性あふれるおしゃれなまち岡本」というキャッチフレーズはなるほどなあと感心しましたが、 ケンタッキーフライドチキンの前が「ケンタ西通り」なんて名前はひどいじゃないですか。 この辺の感覚を私としては問題としていただきたいのです。
野崎:
広報の話が出ましたので、 灘区の方から何かご意見があればうかがいたいと思います。
山口良一:
灘区まちづくり推進課の山口です。 広報については、 私も文化施設の案内があればいいと思っていましたので、 これから提案していきたいと思います。
また、 王子公園付近の文化ポテンシャルが高いというお話が出ましたが、 今、 区役所でも周辺の魅力施設についてまとめたいと思っているところです。 学校や文化的な施設が多い地域ですから、 これからも文化的色合いのイメージを作っていきたいと思っています。
岡本の住人です。 先ほどこの好文園ホールの金〜月が空いていると言う話がありましたが、 ホールの賃貸料はいくらですか。 また、 なぜ商店街の理事長は出席していないのですか。 商店街の方からもぜひ一言ご発言いただきたいのですが。
後藤:
辻さんの質問に商店街に成り代ってお応えします。
まず料金ですが、 日曜日の午後を借り切った今日の賃貸料は約2万5千円ほどです。
また、 今日のお話をうかがって私が感じたのは、 「文化は独断と偏見から生まれてくる」のではないかということです。 ところが商店街組合は二百人の構成員でいろいろ議論しながら決めていく組織なんです。 そこが、 今日理事長が出席しなかった理由でもあると思います。
二百人の民主的で平凡な議論、 その結果これといった特徴のない結論が出てくる現状に商店街運営の難しさがあると思います。 この中で、 私達まちづくり協議会もいろいろと動いていますが、 今日は文化=独断と偏見の良さというものを認識できたと思うし、 我々も理事長と話して、 ここの運営をユニークなものにつなげていきたいと思います。
参加しやすいネットワークづくり
音楽家の立場から
佐々木昭:
御影周辺について
松原:
広報について
松原:
文化=独断と偏見の良さ
辻信一:
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