では最後にコメンテーターの方々から一言ずつお話しいただきたいと思います。
先ほど運営の話をするのを忘れていましたので、 付け加えます。 本社の社員が二人資料館についているほか、 ミュージアムショップの販売もありますのでアルバイトの女の子を三人雇っています。 私の思いを形にした資料館ですから人件費も出ませんが、 評価されることもそのうちあるだろうという気分で活動しています。
今日のお話では官と民の違いの話がありましたが、 私は民間文化施設は曖昧なものではないと考えています。 どちらかと言えば公の方が曖昧です。 民の施設はどこもオーナーの思いがあって誕生したものです。 それがあまりに個性的であるが故に、 まとめようとすると曖昧になってしまうと思うのです。
好文園を作られた戸澤さんも、 自分の思いを表現されたらいいと思います。 運営される商店街の方々も、 自分たちの思いを大事にすべきです。 ネットワークはその次に考えればいいのでは? そうでないとやっていて面白くないのです。
私共は、 資料館で酒文化を伝えたいという思いを貫きたいと思っています。 そういう思いを大事にすることが、 文化施設運営の基本だと思っています。
まちづくりの仕掛けはできても、 それをずっと維持・管理していくマネジメントが難しいと申し上げました。 それをどう切り開くかが課題だと思っています。 マネジメントをどうするかを考えたとき、 不特定多数より広く薄く、 それと気づかれずという形のスポンサーあるいはパトロンをどう集めるかを考えています。
マンションで言えば、 コストを減らした分を広く薄く集めてひとつの仕掛けを維持する方法です。 例えば、 深江のマンションでは生活用水を地下から取る。 初期投資はかかりますが、 それは企業側で負担し、 後の月六千円ほどかかる水道代を三千円にして住人からちょうだいするやり方で水のパトロンになってもらうことを考えています。 こういった取り組みを事業にどう取り込むか、 それがパトロンへの切り口かなと考えております。
第2部で拝見した松原さんの写真で私が一番感激したのは、 それぞれの施設のオーナーや担当者の顔写真です。 それが民間文化施設の究極の姿というか、 特徴だと思うのです。 つまり、 倶楽部やサロンは必ずそれを仕切っている人がいて、 その人の個性に惹かれて他の人が集まってくるものなんです。 それは公立の施設ではやりづらいものなんです。
やはり民間の文化施設として世に売り出していくためには、 中心となる人が表に出てくるのが良いのではないかと思います。
私は、 岡本の商店街がどういうこだわりを持ってこの好文園ホールを運営していくか、 そういうところに期待しています。 岡本の商店街のイメージはいいはずです。 下駄履きの下町よりは、 ちょっとおしゃれをして行く町だと思いますので、 そのイメージを上手く利用できればいいのではないかと思います。
それではまとめに入りたいと思います。
今日は「まちづくりと民間文化施設」のテーマで話を進めてきました。 これまでの文化施設は旦那衆というパトロンがいて、 自分の思いを施設に込めて運営してきたのですが、 これからどういう形になるのかが大きな課題になってくると思います。 私はパトロン、 企画プロデュース、 参加の仕組みの三つのテーマに分けていたのですが、 結局は三つとも絡まってくる話です。
岡本にこういう施設が出来たということは、 戸澤さんのみならず地域に密着している人々のいろいろな思いの積み重ねの結果だと言えるのではないでしょうか。 これからは一人の力のあるパトロンが施設を作るのではなく、 土地の所有者、 住民、 まちづくりの活動といういろいろな要素が重なって施設が生まれてくるのだろうと思います。 地域で生活する人だけではなく、 和田さんのように民間ディベロッパーもその流れに乗っている時代だし、 小森先生のお話にあったように、 大学も地域文化を支えるパトロンになりうるのではないでしょうか。 かってのように力のあるパトロンが施設を作って、 プロデュースもやっていくというのは無理ですから、 これからは出来た施設をそれだけの自己満足に終わらせず、 企画プロデュースで頑張って活性化させていく。 それを支える庵原さんの東灘文化協会のようなネットワークの役割が大切だと思います。
岡本を始めとする神戸市東部がなぜ魅力的な土地柄なのかというと、 都会の利便性だけでなく、 自分の家のすぐ近所で音楽が聞ける、 演劇も見られるなどの場所があるからです。 自分の家の垣根を取り払って地域の中で楽しめる仕組みがたくさんあることが、 この地域のというか都会に住むことの大きな魅力だと思うのです。 震災後、 いろんなまちづくりが出てきましたが、 地域マネジメントの中核としてもそうした魅力のある施設がこれから考えられていくと思います。
しかし、 その時に簡単に箱を作るのではなく、 作るまでにみんなで思いを重ねていくことが重要だという気がします。 そのことが完成してからの企画運営の支えにもなるわけです。 今後の好文園の成功を祈りつつ、 今日の話をこれで締めくくりたいと思います。
最後に
オーナーの思いが施設運営の基本
西村:
広く薄くパトロンを求める
和田:
オーナーの個性を全面に出す
角野:
商店街のイメージを上手く利用する
庵原:
まとめ−地域の魅力について
野崎:
このページへのご意見は神戸東部市民まちづくり支援ネットワークへ
(C) by 神戸東部市民まちづくり支援ネットワーク
学芸出版社ホームページへ