うわさ話しの収集神戸協同病院 上田 耕蔵 |
震災後の経験はまさにカルチャーショックの連続であった。 あるいは予想に反した出来事がなんと多かったことか。
例えば、 (1)震災第1日目のおわり、 殺到した外傷患者さんが減りだして、 ああ、 これで災害医療は一段落だと思ったら、 3日後から内科の患者さんが急増した。 高齢者は怪我をしなくても内科の病気で亡くなる(震災関連死)のが分かった。 これが第一のショックであった。
(2)震災直後はボランテイアは被災住民に何をしても感謝された。 お互い癒し癒される桃源郷であった。 しかし時間が経つにつれて急速にあの昂揚感は薄れていった。 普通に戻っていった。 物がなければ均一的助け合いのコミュニテイが出来るのは分かったが、 物のない社会には戻れない。
(3)仮設が出来て避難所の患者さんは郊外の仮設へ移住した。 足の悪い高齢者は病院に通ってこれないと思ったが、 実際は8割以上の人が通院してくれた。 しかし患者さんは地域の友達と話しをしたい、 早く地元に帰りたいから通院していたのだった。
(4)震災の年の7月、 神戸市会議員選挙があった。 これは得票率が上がるぞと思ったら、 下がった。 え、 なんでや。 日本はおまかせ政治であるのを思い知らされた。
(5)病院の近くに地域型仮設住宅ができた。 トイレ・風呂・炊事場が共同であり、 アメニテイは悪い。 さぞ入居者は怒っていると思いアンケート調査したら、 1/3の人は「良い」と回答した。 人の繋がりと生活支援員の存在を評価していた。 (実はこの調査がきっかけとなり、 石東さんと知り合えた)。
(6)仮設の孤独死が報道されるようになった。 高齢者が多いから孤独死の頻発は当然だ、 と思っていたら、 大半は中年男性の孤独死であった。 よく考えてみたら孤独死は震災前からあった。 単に震災で孤独死が顕在化しただけであった。 なんでこんなに男性は弱いの?女性は強いの。
(7)仮設自治会とボランテイアが協力してコミュニテイを作った所では仮設孤独死は激減した。 しかし自治会がうまく機能したのは一部でしかなかった。 コミュニテイ形成にはリーダーと時間が必要である。 簡単ではない。
(8)21世紀の高齢者住宅の雛形だとコレクテイブ住宅の募集支援に取り組んだが、 応募率は非常に低かった。 人は確かにふれあいを求めている、 しかしタイトなつきあいには辟易している。 人は孤独とふれあいの両方を求めているということ。 ややこしい存在である。
(9)Aさんは不安神経症の患者さんであるが、 郊外の市住に入居できた。 不安になると深夜ならタクシーに乗って受診した。 約100万円の自立支援金が出たが、 あっという間にタクシー代に使ってしまった。 自立に使われていないケース。
(10)震災後たくさんのボランテイア組織ができたが、 ボランテイア組織同士は協力・助け合いが下手であった。
この5年間、 本当にたくさんの事を勉強させてもらった。 そのまとめが拙著「地域福祉と住まい・まちづくり/ケア付き住宅とコミュニテイケア」である。 福祉と住宅とコミュニテイの被災地での先駆的経験を中心に記述した。
この本の特徴であるが、 まず(1)抽象的な概念では人に伝えられない。 患者さん・住民が語る、 あるいはまちで語られた「うわさ話し」が分かりやすく、 説得力を持つ。 そこで耳を拡げ「うわさ話し」の収集に努めた。
次に(2)震災は「自立」と「助け合い」を教えてくれた。 しかし自立にせよ、 助け合いにせよ、 一体それは何なのか?時間が経てば経つほど疑問になってきた。 「助け合い」は人間を形成する必須条件であるが、 大きくは国家レベル→社会保障である。 小さくはコミュニテイである。 もっともっと小さくは人のこころの問題である。 それらを展開してみた。
上田耕蔵さんは、 医者と言っても神戸協同病院長です。 最も知的で忙しい職業と長をこなしながら、 小さなコミュニティの中の人の心の問題に行きつかれた上田先生に私は敬意を表します。 この度、 学芸出版社より上記の本(四六版、 191頁、 1700円+税)を刊行されました。 是非皆様御一読下さい。
天川佳美:
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堅実なコレクティブ居住をすすめている
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98年の春の入居開始時はわずか16戸の入居でしたが、 7戸の一般世帯は全戸入居になりました。 その後五月雨的に入居があり、 転居もあって、 現在は27戸(45人)の協同居住です。 一般世帯の家族構成(1世帯転居で6世帯)は60歳前後の夫婦、 老親と50代の子供、 18歳未満の子供をもつ母子の世帯がそれぞれ2世帯づつで、 比較的若い人たちも住んでいます。 また、 シルバーハウジングでは60歳代が少し多いですが、 70歳代、 80歳代の人もほぼ同数で、 合わせて28人です。
入居から半年ぐらいは自治会長の選出について入居者間に混乱を巻き起こしていた人がいて、 自治会結成ができずつらい状況にありましたが、 その後若い役員構成によって自治会が結成され、 今日にいたるまで堅実なコレクティブ居住の運営がなされています。 自治会役員は60歳過ぎの男1名(会長)の他はすべて女で、 50歳代2人、 40歳代3人です。
多世代共住ならではの知的で、 ゆるやかな協同居住が運営されているようです。
98年のクリスマスパーティーの記念撮影 |
98年の敬老の日/沖縄出身の居住者が琉球踊りを披露 |
・協同居住を充実させるために自治会が行っている定例活動は、 毎週月曜日のふれあい喫茶のお弁当づくり、 鏡開き、 焼き肉パーティ、 敬老会、 クリスマス会、 日帰り温泉旅行などです。 協同スペースの清掃などの維持管理にも多くの時間を費やしていますが、 40代、 50代は仕事をもっていますので、 自治会役員にどうしても大きな負担がかかってきます。 役員以外の人たちの中にも自分のできることを見つけてコツコツとやっている人も少なくないですが、 高齢者の中には若い人たちに対する感謝の気持ちをもっている人と、 若いんだから動くのが当然だという考えをもっている人がいます。
このような多様な行事や日々の協同生活の運営のために、 数少ない若い層による現在のような協力体制がいつまで継続できるのかどうかが課題です。
〈協同居住を維持していくにはエネルギーが必要で、 高齢者だけのふれあい住宅の居住者から既にしばしばこの点についての不安が指摘されています〉。
・共益費については、 県の入居前説明会で13000円/月程必要となるだろうと説明があり、 了解済みで入居したはずなのに、 入居直後からこれに対して不満を言う人が出て、 自治会結成が半年近くできませんでした。 他のふれあい住宅と同様に、 入居後しばらくして自治会の努力による協同スペースの維持管理の実情に合わせて、 8000円(うち1000円は自治会費)に下げることができました。
しかし、 復興公営住宅の家賃減額期間が過ぎると、 この共益費も大きな負担になって、 全員が払うことができるのかどうかが不安です。 共益費が少額になりますと、 協同居住の活動が続けられなくなります。 引き続き家賃の減額制度をお願いしたいです。
〈現在、 ほとんどの県営ふれあい住宅の共益費は、 自治会が検討して5000円〜7000円にしています〉。
・30戸のうち23戸はシルバーハウジングで生活援助員(LSA)さんが毎日巡回していますが、 1階にLSA常駐のための事務室があるのに全く使われていません。 設計段階では常駐型を予定していたのだと思いますが、 宝塚市の方針は巡回型です。 県住なので何かある時はすべて県へ申し出るようにと市は言っていますが、 LSAに関しては市の管轄というのは居住者にとって理解しがたいです。 コレクティブハウジングは必ずLSAを常駐させて、 居住者の心のケアーや協同居住のコーディネーターの役を担当してもらわないと、 先例のない協同居住は戸惑いが多く、 一部の居住者への負担が大きくなります。
・年月を経ると自立して生活ができない健康状態の人もでてきます。 とくに一人暮らし高齢者が自立生活ができるのかどうかの判断は誰がするのでしょうか。 自立生活が困難になった場合、 身内の元や特養などに移らざるをえませんが、 そのコーディネト制度が必要です。 コレクティブハウジングの需要は今後さらに高まると思われますが、 協同居住ができなくなった時の受け皿のことも考えた事業化が必要だと思います。
「ふれあい住宅居住者交流会・ふれあいネットレター9号(2000.5.15。 発行)より転載」 |
新しい居住形態の立派な住宅を建てても居住者間の人間関係を育む支援や身内の方々との理解や協力がなければ、 快適な協同居住を営むことはできません。
トアロード地区のまちづくり活動の概要
トアロード地区まちづくり協議会事務局 広瀬 今日子
トアロード地区の特徴
まちづくり協議会のエリア図 |
景観形成市民協定によるまちなみイメージ |
エリア別機能整備イメージ図 |
銭太鼓の練習/老人憩いの家 000724 |
夏まつり/大黒公園 000805 |
もちろん商店街や婦人会なども、 まち協と密接な関係の中でいろいろなまちづくり活動が進んでいるが、 それらをうまく潤滑させ、 ひいては都市計画など行政との地元集会などでの対決構図を和らげるのは、 女性の力が大きい。
5) 久米きみ枝さんは今も三味線をひき、 日本舞踊の高木さんとはカラオケ好き、 歌舞音曲仲間である。 インタビューに行った日(000724)も、 浪松老人憩いの家で9月の敬老の日披露を目指して、 銭太鼓の特訓中であった。
高木さんのひとり息子英行さんが今年の12月にご結婚とのこと、 肝っ玉お母さんが、 おばあさんになる日はそんなに遠くなさそうだ。 ずっと続いてきたまちの女性のパワーを受け継いでいくかのように、 高木邦子さんは今日も颯爽と、 野田北部の街を元気に歩いている。
NO. 11(00年2月号)の情報コーナーでお知らせしました、 「すまい・まちづくりに携わる人材の育成のための研修(CA2000)」が5月にスタートしました。
そこで、 今月号と次号の2回に渡り、 その模様を報告します。
この研修は、 いきいき下町推進協議会(※1)が「緊急地域雇用特別交付金事業」として神戸市からの委託を受け、 CA2000委員会(※2)を設置し、 平成12年度から2年間行われます。
研修は基礎コース(5〜10月、 全6回)、 理論コース(5〜3月、 全20回)、 実践コース(9月開講)の3つのコースからなります。
基礎コースは、 月1回、 主にこうべまちづくり会館で、 すまい・まちづくりについての基礎的な内容を、 実際の事例を交えながら講師2名による各1時間の講義形式で行う研修です。
基礎コースは定員50名を上回る116名の応募がありましたが、 会場がこうべまちづくり会館2階ホールなので、 全員受講していただくことになりました。
5月1日の第1回は、 89名の出席者と関係者を合わせて100名を超えるという大盛況のもと開催されました。 開講に先立ち、 西川靖一(神戸市住宅局長)、 小林郁雄(いきいき下町推進協CA2000委員長)両氏の挨拶がなされ、 その後、 「住民参加のまちづくりと進め方」(後藤祐介)、 「真野まちづくり提案の実際」(宮西悠司)の講義が行われました。
第2回(6月5日)は「阪神・淡路大震災のまちづくり課題」(後藤祐介)、 「ソフト面のまちづくり」(野崎隆一)、 第3回(7月3日)は「重点地区のまちづくり」(後藤祐介)、 「長田南部の復興まちづくり」(森崎輝行)のテーマで行われ、 それぞれ受講者は62名、 52名が出席しました。
第4回(8月7日)は、 いつものまちづくり会館を出て、 現地研修もかねて、 岡本地区の好文園コミュニティホールで行われました。
講義に先立ち、 16: 30から1時間ほど、 岡本地区のコンサルタントである後藤さんと地元の「美しい街岡本協議会」事務局長の田中さんの案内で現地見学会が実施され、 15人の受講生とともに、 岡本地区のまちづくりの成果を見て回りました。
今回は時期的に夏休みということもあり、 また折からの激しい夕立も影響してか受講者は37名といつもに比べると若干少なかったですが、 講義の前に、 田中事務局長から、 20年に及ぶまちづくり協議会の活動についての報告と今回の会場のオーナーである戸澤さんから震災後自宅の再建とともにコミュニティホールができるまでの経緯についてお話がされました。
その後、 後藤さんから「ルールづくりによるまちづくり」というテーマで、 住民参加のまちづくりの進め方とルールづくりによるまちづくりの推進事例として、 岡本、 新在家南、 安井の3地区の話がされました。 林英雄氏からは「街区計画と共同建替」というテーマで、 都市高速道路2号線の地下路線工事に伴なう道路拡幅と、 それに伴なうコミュニティの分断や高齢化、 商店街の再生など様々な問題や、 共同建替による再建など、 持続するまちづくりを展開している長田区大道通地区についての講義がなされました。 (吉川健一郎)
「すまい・まちづくりに携わる人材の育成のための研修(CA2000)」開講される
いきいき下町推進協議会 CA2000委員会
まちづくり会館での講義風景
岡本の現地見学会の様子
岡本好文園での講義風景
情報コーナー
神戸市民まちづくり支援ネットワーク/第5回フォーラム記録
フォーラムでの陳先生(2000年7/20、 こうべまちづくり会館) |
後半は、 「今後の市民まちづくりを探る」というテーマで行われました(コーディネータ/野崎隆一さん(遊空間工房))。 中山久憲さん(神戸市アーバンデザイン室)からは、 復興区画整理やまちづくり協議会の成果について、 中村順子さん(CS神戸)からは、 震災後の神戸市東灘区を中心とした多様なNPO活動−行政からの委託調査、 商店街活性化、 地域通貨の取り組み、 等々−と課題について、 森崎輝行さん(森崎建築設計事務所)からは、 ご自身の震災復興まちづくりの経験からこれからのまちづくりに対する教訓について語られました。 コメンテータは、 石東直子さん(石東・都市環境研究室)、 宮西悠司さん(神戸・地域問題研究所)、 若手ネットの田中正人さん(都市調査計画事務所)、 中川啓子さん(GU計画研究所)。
最後に、 台湾の陳先生(台湾大学)から台湾での震災復興まちづくりの取り組みの紹介がありました。
■ 阪神大震災復興 市民まちづくり支援ネットワーク 事務局
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担当:天川佳美、 中井 豊、 吉川健一郎
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