17番目

《客注という落とし穴》

 客注というものは、 店にその本があれば発生しない。 店にないから客注なのだ。

 客注の事務処理は結構面倒臭い。 出版社の名前もあやふやで、 さらに書名さえもあやふや、 パソコンであれこれ調べ、 あげくのはてには2〜3週間お待ち下さいというと、 そんなにかかるのかと、 けげんな顔をされる。 ほんとうはもう少し早く入りそうなのだけど、 万が一遅くなってお客に叱られるよりは、 少し長めに言っといたほうが無難。 1500円のために住所の確認やらなにやらで20分もかかっていしまい、 これじゃサービス倒れだとブツブツ。

 まぁまぁそう言いなさんな。 数ある書店のなかから貴店を選んで、 本当はすぐに欲しいのだけど、 しょうがないから2〜3週間待つ覚悟で注文してくれたのだから。 確かに客注は割りの合わないものである。 いっそ止めたほうが、 ということで、 客注を受けない書店もあるそうだ。 しかしそこまでして読者が注文する本である。 そこにかなり重要な購入の動機なり理由があるはずである。 これをチェックしない手はない。 販売のキーワードが見付かるかもしれない。 客注というのは、 見掛けの繁雑さの中に「売り」の秘密が隠されているものなのだ。 これを無視すると、 とんだ落とし穴にはまるかもしれない。

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