研修会報告
社団法人 京都府放射線技師会が主催する会員向けの研修会報告書
平成15年度事業 研修会報告

平成15年4月26日 第469回研修会報告
〈4列MDCT情報〉
「心臓領域におけるMDCTの臨床的有用性について」

平成15年4月26日、京都アスニーに於いて第469回研修会が行われました。今回はMDCT(Aquilion Multi 4列 東芝製)による心臓領域の検査においての心電同期再構成の基礎、心臓撮影のポイントをはじめ現在までの臨床的意義や臨床写真による症例紹介などについて済生会京都府病院 放射線科 後藤 正氏に講演していただきました。

●心臓撮影における心電同期再構成の概略
心臓は拍動しているため動きにより画像がぶれ、位置ずれを生じることから連続データの構築は不可能とされていた。MDCTの出現により時間分解能はめざましく向上し、一度の息止めのうちに撮影は終了する。それに加え心電同期をかけることで画像処理可能な連続データの構築が可能になった。
◎ハーフ再構成・・・再構成時に任意の心拍位相の画像再構成をする。
◎セグメント再構成・・・複数の心拍から再構成に必要なデータを集め画像再構成する。

●心電同期再構成による心臓検査のポイント
◎息止め・・・心臓撮影では息止めをすることが絶対条件となる。通常の検査よりも長く30秒から40秒の息止めが必要になる(撮影スライス2mmの場台)。息止め困難な人や全身状態のおもわしくない人、小児は検査の対象外となる。長い息止めを成功させる為には、酸素吸入、前もっての練習などがある。被検者本人に息止めの必要性と重要性を理解してもらえるように十分な説明も必要である。
◎脈拍のコントロール・・・心電同期をかけるため脈拍は安定していなければならない。
また今までの臨床データから、脈拍は遅い方が早い場合よりも血管の描出能が上がるという結果が出ている。脈拍60以下では血管描出能90%以上に対し脈拍80以上では描出能が65%にまで下がる。不整脈や脈拍が速い場合は冠動脈の描出は著しく低下する。
脈拍をコントロールするために高血圧や狭心症の鎮静剤として用いられているβブロッカー(抗不整脈、血圧降下、頻脈降下)を医師の判断により使用している。βブロッカーの使用により血管の描出精度は明らかに向上した。
◎造影タイミング・・・心臓は撮影時間が長いために、撮影開始から終了までの間、良好な造影効果を得るのは非常に難しい。タイミングが早ければ血管の未梢が描出されなかったり、遅ければ静脈が帰ってきて後処理が困難になる。しかも造影剤が体を循環するスピードには個人差がある。注入から撮影スタートまでの時間を固定しオ一トでスタートすれば再現性は良いかも知れないが、すべての人にタイミングが合うとは言い難い。被検者それぞれに対し良好な造影効果を得るにはそれぞれのタイミングで撮影を始めるしかない。そこで当院ではリアルプレップ機能を用いて肺動脈に造影剤が流れるのを確認してから手動でスタートする方法を取っている。この方法は術者によって判断がばらつくのが欠点である。どんな検査にも共通することではあるが、何度か撮影を経験することで慣れていくしかない。
◎心拍位相・・・心電同期をかける場合にはどの心拍位相で再構成するかも血管描出に大きく関わってくる。通常、心室拡張末期がもっとも動きによるぶれが少ないとされている。(心電図波形R‐R間隔の70〜80%)右冠動脈に関しては収縮期の方が動きが少ない場合もある(45%前後)。実際には70%前後でいくつか再構成をして見て、その中からよいと思われるものを選択している。撮影は早く終了してもその後の画像処理に長い時間を要することもしばしばある。慣れにもよるが他の検査と平行して合間をぬっての処理のため1時間2時間もしくはそれ以上かかってしまう場合もある。

心臓検査においては、完全な息止め、βブロッカーによる脈拍の安定、リアルプレップによる適切な撮影タイミング、最適心拍位相の選択、これらのことをすべてクリアすれば主要冠動脈のおよそ90%が描出可能となる。一方、CTによる心臓検査で病変(主に血管の狭窄)が見落とされてしまう原因としては、息止め不良や同期不良、石灰化を伴う血管などが上げられる。今までに行ってきた検査の中で、石灰化の多い血管やステントとステントの間、あまりにも末梢の血管に関してはCT検査は有効ではなかった。

当院ではMDCT冠動脈描出の適応として、狭心症におけるスクリーニング検査、CABG後のバイパス血管の評価が主たるものとなっている。画像処理にかかる手間や造影タイミング、適正心拍位相の決定、被ばくなど様々な問題をかかえつつも臨床的に十分対応できる検査として確立されつつある。患者さんに対する検査の適正をよく把握して対応することで検査の有用性は更に高まると考えている。また.16列MDCTによる撮影が確立することで、CTによる心臓検査は心カテをもしのぐ検査となりうるのではないか。
                                                                           文責 神谷


平成15年5月10日 第470回研修会報告
「MDCT(16列)の臨床使用経験」
 第470回京放技研修会を、平成15年5月10日(土)14時30分より第一製薬(株)会議室にて行いました。今回は、京都府立医科大学附属病院の轟 英彦氏を講師に16列MDCTについて行いました。
まず、心臓撮影における心電図再構成の概略と言うことで、前回研修会の復習を行い、心電図同期には、心電同期ハーフ再構成と心電同期セグメント再構成があるが、時間分解能の有利な心電同期セグメント再構成の利用を主に利用しているとのことでした。ここで、4列の場合は、心臓120mmでは、2mmスライスで、30〜40秒の息止めが必要だが、16列では0.5mmスライスで30秒の息止めで可能となっている。また、4列の時には脈拍の安定の為、βブロッカーを使用していたが、16列では脈拍の許容範囲が広がり使用していないようです。心拍位相の適応としては拡張末期の動きの少ない時期を選択するが、右冠状動脈のときは収縮末期に動きの少ない時がよいということでした。
また、冠状動脈狭窄目的以外の適応として、肥大型心筋症やMPRを用いた心機能解析などの臨床画像を織り交ぜながら話して頂きました。
そして、16列になってということですが、やはり今までに比べ薄いスライスデータで速く撮影が出来ると言うことでした。また、解析ソフトの活用で適用が広がるものとしています。そのなかで、実際の検査条件や適応を詳細に紹介してもらいました。
また、心臓撮影における問題点として、画像処理時間、造影タイミングの均一化、被曝、時間分解能を挙げていました。
小児領域の応用においても、症例を織り交ぜ説明していただきました。
また、多くの臨床症例において速く、薄く、広範囲と言う利点をいかした画像を提示して頂きまして、終了しました。
今後も多くの領域での活用の可能性に期待します。
                                                                           文責 原口


平成15年6月14日 第471回研修会報告
「耳鼻科における画像診断」
 第471回研修会を、平成15年6月14日(土)14時30分より、第一製薬(株)会議室にて行いました。今回は、京都南病院の耳鼻科医長である加藤 尚美先生をお招きして開催しました。
 まず、加藤先生の講演に先立ち、京都南病院の原口氏による耳鼻科領域のCTのルーチンワークの説明をして頂きました。
 CT装置は東芝Asteionマルチを使用しており、中耳ターゲット撮影のときは、撮影スライス0.5mm ヘリカルピッチ5.0 画像スライス1mmで撮影し、その後FOV100mmで左右それぞれ再構成しています。プリントについては外耳道下縁より20mm頭側(または、三半規管分岐より足側20mm)の範囲をウィンドウ幅3500 レベル300で行っています。また、ほとんどの場合ヘリカルデータによるコロナルを作成しています。
その時はスライス0.5mm 間隔0.2mmで再構成しています。
 副鼻腔については、撮影スライス1.0mm ヘリカルピッチ5.0 画像スライス5.0mmで撮影し、撮影後FOV150mmで再構成を行い、コロナルにおいてもヘリカルデータによって作成し、その時はスライス1.0mm 間隔0.5mmで再構成しています。
 ルーチンワークの紹介は、パソコンの不具合もありそこそこで終わり、加藤先生による耳鼻科の診療科から見た画像診断ということで、講演を行って頂きました。
 CTを中心に、中耳、喉頭や副鼻腔について各断面の解剖から始め、真珠腫、咽頭腫瘍や、耳下腺炎、外傷等様々な症例をもとに臨床の立場から、それぞれの画像についてどの部分を見ながら読影を行い診断しているのかを講演して頂きました。
 今後も、放射線技師が臨床現場の一員として、患者の治療にあたり、日々進歩する現代医療の中、どの様な画像を要求し、役に立つ提案を要望しているのかを広く理解していくべきではないでしょうか?      
                                                                           文責 原口


平成15年9月6日、7日 第472回研修会報告
平成15年9月6日、7日に舞鶴グランドホテルで夏季研修会(第472回研修会)が開催され、たくさんの会員の方々に参加して頂きました。
 6日の研修会は、午後3時30分から両丹会員の発表が行われました。マンモグラフィーに関する演題が3題、CTについて1題、ポータブル撮影について1題と5題もの演題を出して頂き、56人が参加されました。途中活発な討議もあり有意義な時間を過ごすことが出来ました。研修会の後、懇親会が行われ42名の参加がありました。
 研修会2日目の7日は、午前9時より2時間を使って造影剤を製造販売している2メーカーの担当の方に、「リスクマネージメント」と「包括評価」という2つのテーマで講演を行って頂きました。発表をして頂いた演者の皆さん、参加して頂いた会員の皆さんありがとうございました。研修会の発表演者、演題、発表の要旨を以下にまとめます。

「新設されたマンモ撮影装置の使用経験」 
舞鶴赤十字病院 櫻井 勝則氏
舞鶴赤十字病院に新設された日立製バイオプシマンモトームシステムの使用経験を報告された。特にこの装置はステレオ撮影を行って深さを観ることができ、この装置を使って効率的にバイオプシー生検を行うことが出来るとのことでした。

「当院におけるマンモグラフィ−の精度管理について」
京都ルネス病院 伊東 可芽里氏
 京都ルネス病院で行われている日常の精度管理について、ガイドラインに沿った管理と、さらにカセッテの掃除、埃を防ぐために行うフィルムの詰め替え等でより良いマンモグラフィーを撮影するためのいろいろな工夫や機器管理を報告された。

「当院におけるマンモグラフィー検診について」
福知山市民病院 吉見 祐哉氏
福知山市民病院で行われているマンモグラフィー検診の紹介と、実際に検診を受けられた受診者に行ったアンケートを使いマンモグラフィー検診を行う際に気をつけなければならない事項をまとめて発表された。

「coronaryCTの問題点と撮像の工夫について」
京都府立与謝の海病院 後藤 宏成氏
 Light Speed Ultra(8MDCT)を使って行う冠動脈CTの前投薬、心電図モニターの張り方等の前処置から撮像方法の詳しい説明、心臓カテーテル検査との比較を行った。比較の結果から求められる今後の問題点についても詳しく考察された。

「ポータブル撮影の一工夫」
舞鶴市民病院 田中 秀昌氏
 ベッド上で撮影するという事情もあり、特に座位や半座位の胸部撮影では左右差をきたしやすい。管球側にレーザーポインタとグリッド線を記載したプラスチック板を装着し、グリッドの隅に反射板を取り付けることで、レーザー光の反射を利用して斜入射がないか確認出来ると報告された。

「造影剤検査におけるリスクマネジメント」
第一製薬(株)京都支店造影剤担当課長 
嶋田 豊三氏
 良いX線造影剤の条件、放射線科におけるリスク事例、医療事故・過誤の判例について、造影剤のリスクマネジメント、副作用と危険因子について講演された。

「特定機能病院等の包括評価」
日本シェーリング株式会社営業部門営業推進部 
朝倉 己作氏
 特定機能病院等に包括が導入される背景・経緯、包括項目と出来高項目、入院日数に応じた評価等包括化に関する事項を詳しく講演された。
                                                                           文責 筒井


平成15年9月13日 第473回研修会報告
『超音波画像診断装置』
ーー超音波画像診断装置の機器管理ーー
第473回研修会を平成15年9月13日 14:00より島津製作所研修センターにて開催しました。講師は(株)島津製作所 医用機器事業部 技術部俵 秀幸先生をお招きしました。
今回の研修会は日本放射線技師会主催の放射線機器管理士(旧放射線関連機器管理責任者)認定講習会の超音波画像診断装置に則した内容で行われました。
●第一部:超音波画像診断装置の管理について装置導入時の受け入れ試験、日常に行う点検項目、定期保守点検、テストツールなどについて講義をして頂きました。
●第二部:会場内に超音波画像診断装置を持ち込み第一部で講義して頂いた内容の管理箇所や項目・点検箇所や項目について実機を用いてわかりやすく実習形式の講義を賜りました。
                                                                           文責 神谷


平成16年1月24日 第477回研修会(地区合同研修会)報告
平成16年1月24日(土)、ルビノ京都堀川に於いて第477回研修会を開催しました。
今回の研修会は恒例の地区合同研修会とし、北地区 辻謙司氏(社会保険京都病院)、進行西地区 松本真之氏(関西医大附属洛西ニュータウン病院)、南地区 河上和広氏(十条病院)、進行中地区 宮井明氏(京都市立病院)、東地区 金澤裕樹氏(京都第一赤十字病院)・前田健一氏(京都第一赤十字病院)、進行西南部地区 熊井由昌氏(大阪医科大学附属病院)、両丹地区 筒井孝彦氏(国立舞鶴病院)、進行学術委員、とそれぞれに講演、進行をして頂きました。

◎ 『日頃行っている膝のMRI検査の紹介』社会保険京都病院 辻 謙司 氏
主に膝内障のMRI検査について、ルーチン検査の方法や症例の紹介などの発表が有りました。使用装置はフィリップス社製1.5Tジャイロスキャン・インテラ、検査時間は15分。ルーチン検査としてはT1・T2サジタル像、グラディエントエコー法(FFET2)、サジタルコロナル像の計4回撮像されています。撮像においては損傷の多い前十字靭帯(ACL)を主眼におきポジショニング・プランニングされています。症例の紹介では半月板損傷、ACLの断裂や部分断裂、ACL再建術後など数多くの興味深い症例を紹介されていました。
松本真之 (関西医大洛西病院)


◎ 『Dual Slice CT の有用性について』 
 医道会十条病院 河上 和弘氏
現在使用されているDual Slice CT(Asteion/Dual(東芝))の特性、有用性をMulti Slice CT(Aquillion/Multi(東芝))と比較されました。Dual SliceCTはMulti Slice CTと比較して、撮影時間、範囲についてはハード面により制限を受けるが、物理特性としての体軸方向分解能、実効スライス厚、SD値について遊色のないものであり、鮮鋭さを要求される画像の作成には有用であった。又、購入価格も安価であり、コストパフォーマンスに優れた機器であることを示された。
                                   宮井 明 (京都市立病院)

◎ 『肝特異性造影剤(SPIO)の使用経験』京都第一赤十字病院 金澤 裕樹氏
超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)の肝腫瘍における有用性は、Feridexでの経験により確立されており、約1年前からFeridexに変わる製剤としてResovistを使用してきている背景を述べられました。当施設でのMRプロトコールの紹介・Resovist造影剤の使用目的や特徴の報告・問題点を述べられました。質的診断より存在診断に適していることを示されました。

◎ 『経皮的椎体形成術における3D‐RAの有用性』
京都第一赤十字病院 前田 健一氏
経皮的椎体形成術とは変形や圧迫に対し、その疼痛緩和と安定性の確保の為、イメージガイド下で経皮的に挿入した注射針から骨硬化剤であるセメントを注入する治療法である。そこで前田氏は3D―RAの有用性を以下の手順で検討された。@患者を腹臥位にする。A3D‐RAを撮影し穿刺位置を決定。B注入針を穿刺し、椎体造影を行う。C骨セメントを注入。D確認の3D‐RAを撮影する。当施設では4例とも良好な結果が得られ、穿刺位置の確認に3D‐RAが有用であることを示された。
熊井由昌 (大阪医科大学附属病院)

◎『MPR画像計測の基礎的検討』     国立舞鶴病院 筒井 孝彦氏
4列MDCTと3Dワークステーションを使って構築されたMPR画像を計測する際の、撮影条件及び画像のウィンドレベル値、ウィンド幅の設定について検討を行った。気管(頚部)の太さをMPR画像を使って計測する際は、その周囲のCT値をウィンドレベル値に設定し広めのウィンド幅(今回の実験では1500)を設定すれば、実測に近い測定値を得られるという結果がファントムを使って求められた。さらに撮影時はあまり薄いスライス厚ではなく通常の検査で使用するスライス厚(今回は3mm厚)で十分測定可能であった。
                                                                    林 浩二(学術委員会)


平成16年2月22日 第478回研修会(平成15年度近畿放射線技師学術研修会)報告
「Evidenceに基づいた画像を提供するために」
−最新の医療情報を得るためのノウハウを学ぶ−

平成16年2月22日(日)、会場は、なら100年会館で平成15年度近畿地域放射線技師会学術研修会と県民公開講座が開かれました。近畿地域放射線技師学術研修会のテーマ は「Evidenceに基づいた画像を提供するために」−最新の医療情報を得るためのノウハウを学ぶ−、県民公開講座のテーマは「心筋梗塞」でした。
参加者は大阪府放射線技師会41名、滋賀県放射線技師会24名、和歌山県放射線技師会23名、兵庫県放射線技師会29名、京都府放射線技師会19名、近畿外放射線技師会3名、その他31名、合計170名でした。公開講座では技師会会員に加え多くの県民の皆様が参加されていました。
内容:近畿放射線技師学術研修会のX線のセッションでは座長は明神 敏明先生(労働福祉事業団和歌山労災病院)がされ、講演者には京都府放射線技師会から「CT画像再構成理論」後藤 正先生(済生会京都府病院)、「3次元画像描出技術」 後藤 宏成先生(京都府与謝の海病院)が立たれました。また、DR(血管撮影)とX線管理のセッションでは平川 益三先生が(京都第一赤十字病院)座長をされ「DR画像の取扱いと画像管理」、「DR装置開発のコンセプト」、「放射線の管理と最新の血管撮影技術」の演題を収められました。また<特別講演>では(社)日本放射線技師会 熊谷和正会長から(新)生涯学習システムと技師格について、「これからの放射線技師が考えていくこと」と題して1時間の講演があり参加者は皆神妙に聞き入っていました。                  
                                                                          (文責 北村)


平成16年3月27日 第479回研修会報告
『変貌への鼓動』
第479回の研修会は、3月27日、京都府立医科大学北講義棟において1月研修会(第477回)に引き続き『変貌への鼓動』をテーマとして地区合同研修会が開催されました。発表は、西地区(進行:北地区)、 中地区(進行:南地区)、西南部地区(進行:東地区)でした。参加者は36名でした。 今回の内容は地区合同研修会ならではの特色がよく生かされ、日常の業務にすぐ役立つ知識となることと思います。

「放射線施設の縮小に伴う法的手続等について」
演者:藤井 裕一氏 (京都双岡病院)
放射線関連の医療機器の更新及び廃止には,医療法や障害防止法・電波法の規定により様々な法的手続が必要です。しかし手続自体、日々の仕事に追われ, 普段何気なく使用しているにもかかわらず,無知であったり、あるいは人任せになっているのが現状ではないでしょうか。そこで今回藤井氏は,貴施設の例をもとに,1)「診療用エックス線装置の更新・廃止」、2)「放射性同位元素装備診療機器の廃止」、3)「診療用放射性同位元素の廃止」、4)「MRI装置の廃止」における手続を順を追って説明された。初めに、1)「診療用エックス線装置の更新・廃止」ですが、貴施設ではX線TV装置とCT装置の更新をされました。これは、医療法の規定により設置後10日以内に<診療用エックス線装置備付届>・<エックス線診療室の平面図及び側面図>・<漏洩線量測定結果>を京都府保健福祉部医療・国保課医務係へ提出する必要があります。また、更新前の旧装置及び廃止装置については,これも医療法の規定により廃止後10日以内に<診療用エックス線装置廃止届>を同じく京都府保健福祉部医療・国保課医務係へ提出する必要があると述べられた。
次に、2「放射性同位元素装備診療機器の廃止」ですが、貴施設では骨塩定量分析装置2台を廃止されました。これは、主に医療法と障害防止法の2つの規制があり、廃止を届けるのに手間が掛かるという事でした。まず医療法についてですが、<放射性同位元素装備診療機器廃止届>を前述の京都府保健福祉部医療・国保課医務係へ提出します。続いて障害防止法関連の届出ですが、<この装置に関わった全ての従事者の被曝線量当量の測定記録>と<健康診断の記録>を財団法人放射線影響協会に引き渡す事になっています。今回は、その記録の引渡し手順をお話しいただき,続けて廃止に関する届出及び報告をよりスムーズに進める為のアドバイスとして、日本アイソトープ協会に密封放射線源を宅配便にて譲渡してから放射線影響協会への記録の引渡しを行い、その後文部科学省や保健福祉部への届出を行うのが良いと述べられた。次に,3)「診療用放射性同位元素の廃止」ですが、貴施設では頭部専用SPECTとγカメラを廃止されました。これについては、医療法関連の届出のみで障害防止法関連の届出は無い様です。<診療用放射性同位元素廃止届>と<診療用放射性同位元素廃止後の措置に関する届>を京都府保健福祉部医療・国保課医務係に提出します。最後に,4)「MRI装置の廃止」については、<高周波利用設備廃止届>及び<高周波利用設備許可状>を1ヵ月以内に近畿総合通信局にそれぞれ届出・返納しなければいけないと述べられた。以上で研修会報告は終らせて頂きますが、私自身こういった届出はかなり繁雑な印象をもっていましたが、今回の研修会では全ての届出に関して、実際の書類もまじえてお話し頂き大変解りやすく感じました。     (文責 辻 謙司)

「当院における冠動脈CTについて」演者:多冨 仁文氏 (三菱京都病院)
マルチスライスCT(MDCT)による心臓検査では、16列装置の開発で冠動脈像(Coronary Angiography)も臨床に用いられ得るレベルとなり、循環器系疾患の診断に多大な影響をもたらしています。従来は,石灰化病変・ステント内腔・バイパス吻合部の描出が困難であったが、16列MDCTの出現により描出能が向上し、それに伴い撮影範囲が拡大され,また適応心拍数も拡大された。 今回多冨氏は,16列MDCT(東芝製 Aquilion16)を用いて、CA-CTが臨床的にいかに有用か報告された。まず臨床で用いている再構成法としては,心電同期セグメント再構成・3次元のCTCA・曲面任意多断面再構成CPR(Curved Multi Planer Reconstruction)に加え,左室機能解析を挙げられました。
中でも心電同期セグメント再構成は、貴施設ではR-R間隔0%(拡張末期)70%(拡張中期)40%(収縮末期)の前後数位相で、スライス厚0.5mm スライス間隔0.3mmで再構成されています。報告では,ご親切にCA-CT撮影時の必須条件(長い息止め・体動が無い・急速静注可能)の説明に始まり,造影剤の注入方法も含めた実際の撮影手順、テーマ別に症例をまじえてCA-CTの有用性を述べられた。その有用性について、その一部を記載します。
まず、「CA-CTによる狭窄スクリーニングの有用性」と致しまして,カテーテルによる冠動脈造影とCA-CTの比較をすることにより、CA-CTは外来でのスクリーニングにかなり有用で、カテーテル検査前に狭窄の把握も可能となります。また、CA-CTで正常判定なら貴施設の症例上は狭窄が無かったと報告されました。次に,「CA-CTでCABG後のバイパス開存や狭窄評価の可能性」ということで、実症例で評価可能であったバイパスグラフトの割合(95・7%)と残りの不能であった症例の原因の大半が、クリップやステントによるアーチファクト及び心拍の変動によるモーションアーチファクトによる為であることを考慮して、十分CA-CTでバイパスの開存や狭窄が評価できると述べられた。最後に,「ステント内腔の評価の可能性」ということでは、ステント径・種類・病変形態により課題が残るが,今後MDCTの多列化が進めば克服の可能性があるという展望で報告を締められた。
多冨氏も述べられておりましたが、長い息止めの問題・画像処理にかかる手間や造影のタイミング等様々な問題を抱えてはおりますが、これだけ心臓カテーテル検査と比べ低侵襲で診断価値も上がった現在,臨床におけるその役割に驚かされました。今後も多くの領域での活用に期待します。        (文責 辻 謙司)

『ヒューマンインタフェースを使用したX線CTの評価』
 演者:片桐 邦彦氏(京都市身体障害者リハビリテーションセンター)
 この演題は、X線CTの使いやすさを客観的データの導入により評価を試みた。方法として・アンケート調査(協力施設の6社のCT装置の入力、操作、画像処理、環境等の満足点/不満点)・タスク分析(ビデオ撮影、写真撮影からの動作観察による)・CT装置オペレーティングの操作性に注目しその評価・キーストロークレベルモデルでの評価(操作する技師の技量を同等とし、マウスなどの各操作の所要時間の合計時間を予測する)。 結果として各社による操作時間の差はあり、実際の検査にかかる時間にも影響を及ぼすと思われる。
ヒューマンインタフェースの観点から、操作性、使いやすさの検討をすることは、装置の評価項目の1つとして有用であると考えられる。まだ、データ量は少なく、他の指標(例えば、合計所要時間短縮の限界や技師の業務経験の度合いによる所要時間の差)も考えられるので、これから多くの指標を横断的に解析し研究して発表して頂きたい。
(文責 新井 喬)

「乳房温存療法の放射線治療」
演者:熊井 由昌 氏(大阪医科大学附属病院)
我が国の部位別がん死亡率の推移を見ると、乳癌は女性の死亡の8.1%を占め、死因では第5位になっており、年々増加傾向にあり近い内に女性の死因第1位になるといわれているまた、罹患率を見ると、1995年を境に胃ガンを抜いて乳癌が女性の癌の罹患率トップを占めることとなった。まずこれらの状況の話がなされ、乳癌についての基礎的な講義から放射線治療にいたるまでの細かな作業が紹介された。また治療成績や乳房温存療法について解りやすく説明がなされ、その中で乳房温存療法とは「乳房温存手術と腋窩郭清の後に残存乳房に対し乳房照射を加えるもの」と定義されており、放射線治療を施行していない場合、すなわち乳房温存手術単独で行ったものは「乳房温存治療」として区別されている。等、多くの資料を提示され大変参考となる講演であった。  (文責 林 浩二)