平成16年4月24日 第480回研修会報告
4月研修会(第480回)は平成16年4月24日、京都府立医科大学図書館ホールにて、日本放射線技師会会長 熊谷 和正氏を招いて「これからの放射線技師が考えていくこと」をテーマに特別講演会を行いました。
はじめに栄養士、管理栄養士会のこれまでの歴史を例にとり、今の各医療職種 が将来の生き残りを考慮に入れ業務拡大していく変遷の過程と、「ケアマネージャー問題」「柔道整復師問題」に代表されるように時代に取り残された診療放射線技師をとりまく環境の変化について解説されました。
次に先の平成16年1月29日に政府の医療分野規制改革検討会からの報告があった医療資格者の今後の方針について報告された。そして現在行っている「生涯学習システム」の意義と必要性について説明がなされた。また、放射線技術学会や放射線医学会、工業界との関係修復さらには政府機関や組織、団体とも知己がつきつつある今の執行体制についての報告がなされた。それらの事柄をふまえ「ケアマネージャー」受験資格復権獲得を3年以内実現することを目途にする約束がされた。これの意義は受験資格復権もさることながら、前例をつくり将来において診療放射線技師にとって不利益が重ならない重要な意味があることが確認された。私たち診療放射線技師が今考えることは、目まぐるしい展開をしている医療社会の変化に乗り遅れないことが大切である。と結ばれた。
平成16年6月5日 両丹地区春季研修会報告
平成16年6月5日(土)雲ひとつない快晴に恵まれた丹後あじわいの郷にて(社)日本放射線技術学会近畿部会との共催で両丹地区春期研修会を行い51名(両丹地区36名技術学会15名)というたくさんの会員の参加を頂ました。
研修会は、まず技術学会近畿部会長・小水満氏と京放技副会長・北村真氏の挨拶からはじまり今後とも同じ技師仲間として両団体が連携しあって友好関係を持ち続けて行きたいとの内容の挨拶に会場内われんばかりの拍手がありました。
この後、研修会の演題・発表にはいっていきました。
以下に研修会の演題・発表者・発表の要旨をまとめます。
「CT画像再構成理論」
府立与謝の海病院 後藤宏成氏
ヘリカルCTの画像再構成はコンベンショナルCTと比較してどのように変化しているのか、それを理解するために基本となるコンベンショナルCTの画像再構成の理論を発表され、今後CTの更新時は、ハードウエアのスペックだけにとらわれず、使用されている再構成アルゴリズムにも十分検討される事も大切ではないかと提案されました。
「CRというツールを利用して」
大阪医科大学付属病院 西端豊氏
1、FCRでの「ノイズ抑制処理(FNC)」の発表では、体幹部の撮影ではFNCが有用だが、四肢等の撮影では効果が少ない。そしてFNC単独処理でなく、MFPと併用処理を行う事が重要でFNC+MFPで照射線量軽減が可能になります。
2、「長尺カセッテによる撮影と画像連結処理」ではFCRでのカセッテ長尺撮影と画像連結のやり方の紹介後、フィルムレス・モニタ診断に移行した時は長尺撮影を行っている施設は何かの方策を講じなければいけない事を訴えました。3「画像計測ソフト」では、人工関節作図ソフトを題材に手術シミュレーションの作成をモニタ上で行う工程を説明され、将来フィルムレス環境になれば、画像計測ソフトは必須でありフィルムが臨床現場からなくならない内に準備が必要である。
「シングルスライスヘリカルCTからマルチスライスヘリカルCTへ」
(基礎編)大阪市立総合医療センター 福西 康修氏
CT画像は、再構成画像であり、収集パラメータ・再構成パラメータによって画質が大きく変化します。そのパラメータの種類はマルチスライスCTになり格段にふえたので、使用装置の特性を十分に理解しかつ臨床的な知識を持って質の高い画像を医師に提供することが大切である。
(応用編)大阪医科大学付属病院 吉川 秀司氏
基礎編をもとに、大阪医科大CT室の造影検査のスキャンプロトコールと腹部領域検査の各臓器に対しての造影ポイントを報告され、最後に術前3D−CTA画像の腹腔鏡下手術への活用として、胃癌・大腸癌患者の術前シミュレーションや術中ナビゲーションにはきわめて有用である事や、患者さんのための検査であるという事を忘れないようにということを訴えられて全演題の発表が終了しました。
その後の懇親会には、32名(両丹地区17名・技術学会15名)の参加がありお互いに心が解け合って、なかなか質問しづらい事柄も活発に意見が飛び交い、楽しく和やかな雰囲気のなか懇親会も終了しました。
最後になりましたが、春期研修会を行うにあたりたくさんの方々にお知恵を拝借いたしました、
この書面をおかりしましてお礼申し上げます。
両丹地区理事 城下克明
平成16年9月4日 第483回研修会報告
平成16年9月4日(土)「すぐそばに四季の自然がある」を売り文句に、澄んだ水が流れ往く上林川のほとり、光と水の温もりを感じとれる心地よいこのあやべ山の家にて京都府放射線技師会主催の夏季研修会(第483回研修会)を行い65名(会員47名・賛助会員18名)というたくさんの会員の参加を頂きました。
当初は、4日(土)・5日(日)の両日での夏季研修会を計画していましたが、5日(日)の全国一斉のADセミナー試験のため4日(土)に5題の演題発表にて開催しました。
時間の余裕が少なく演者の方々や座長さんにはご迷惑をおかけしましたが、途中活発な討論や意見交流もあり有意義な時間を過ごすことができました。
発表をして頂いた演者の皆さん、また研修会に参加して頂いた会員の皆さんありがとうございました。
以下に研修会の演題・発表者・発表の要旨をまとめました。
座長 筒井 孝彦氏 舞鶴医療センター
演題
「CRシステムの使用経験 第2報」
与謝の海病院 山添 三知生氏
前年度CRシステムの使用経験として演題発表がありましたが、今回はその第2報で3点のユニークな取り組みが発表されました。
1) 骨盤計測における撮影の再考は、CRの特性を活かして、効果的な低線量で撮影を行う。
またグースマン法、マルチウス法について共に両面集光による高感度、フィルムレスによる迅速化をはかった。
2) 検査用着衣の写りこみについては、胸部撮影では原則脱衣とした。出来ない場合はそれを示すマーカーを作成し、検査衣着用が分かるように工夫した。
3) 明日から出来るフィルムマーカーの管理は、フィルムマーカーの紛失等の対策として、今年度2月より個人所有マーカー制度を導入した。現在まで紛失率は0%である。また撮影者が識別できるようになった事も有用であった。
「放射線管理士について」
綾部ルネス病院 安藤 博敏氏
放射線管理士で構成しています、京都府放射線管理士会の過去から現在までの業務活動を報告され、次に現在京放技のホームページ上でも掲載されていますリーフレットを紹介されて放射線の疑問や医療現場での放射線被曝等について親切丁寧に説明されました。
また、今後の活動(9月18日(土)19日(日)第31回くらしと健康展)についても述べられました。
最後に、平成16年度の放射線管理士認定講習会を受講されぜひ皆様にも放射線管理士認定を取得してこの会に入会してもらい、一緒に活動してもらう事をお願いして演題の発表を終了しま
した。
「マンモグラフィーの動向とコニカミノルタ・デジタルマンモシステムについて」
コニカミノルタ・エムジー(株)CSセンター 松村 茂樹氏
食生活の欧米化や未婚の増加また出産の高齢化等が起因して、我が国においても乳がんの患者が急激に増加しています。これに伴い、行政・学会等においてもマンモグラフィーの必要性が各地で謳われるようになっている。そんな流れの中、コニカミノルタは新しいデジタルマンモグラフィーシステムを発表した。それがPCM(Phase Contrast Mammography)です。PCMは、X線が屈折することに起因し発生する濃度差「位相コントラスト」を利用している。この技術を乳房X線撮影装置にて応用することで、最終的に作成される画像の画質において空間分解能・粒状性・鮮鋭性を向上させる事を実現させたそうです。
ここで10分間の休憩をとり、座長も変わり後半の2題の発表にうつりました。
座長 橋岡 康志氏 福知山市民病院
演題
「MRI造影剤を用いた冠動脈造影」
舞鶴共済病院 小川 武氏
冠動脈造影検査(CAG・PCI)は、ほとんどがヨード造影剤を使用しています。
ヨード造影剤は、0.04%の確率で(呼吸停止・心停止・アナフィラキシー様症状)などの、重篤な副作用が起きると報告されています。(年間250件)過去に重篤なヨードアレルギー症状を経験した患者は狭心症の症状が出現していても、確定診断としてのCAGや治療であるPCIが行えないのが現状である。
そこで、ヨードアレルギー患者であっても、MRIのGd造影剤を使用した検査では副作用が出現しないことや、Gd造影剤を用いたTAEなどの腹部血管造影を施行したという報告をもとに、ヨードアレルギー患者に対してGd造影剤による冠動脈造影を行うことを目的に、ファントームによるヨード造影剤とGd造影剤のコントラス比の基礎的検討を行い、臨床上での画像評価を報告されました。
「造影検査における腎障害について」
エーザイ株式会社 医療事業部医薬部領域二室 森川 由雄氏
造影剤による腎機能障害 RCIN(Radiocontrasut―Induced Nepuhropathy)については、ESUR(欧州泌尿生殖器放射線学会)の1999年のガイドラインによると、造影剤投与後3日以内に腎機能の障害(血清Crの25%あるいは0.5mg/dl以上の上昇)が生じている状態と定義されている。
この腎障害を防ぐための方法として、以下の項目に注意を払い検査をおこなうことが重要であると考えられます。
1. ハイリスク群(血清クレアチニンの上昇、糖尿病の患者様など)の除外
2. 造影剤量の低減
3. 十分なHydrationを行う
4. 薬物の投与(Nアセチルシステイン等)
5. 低浸透圧造影剤の使用
6. 術中、術後透析
以上5題の演題終了後、場所を上林山荘に移して懇親会に進みました。
懇親会には、45名(会員17名・賛助会員15名)の参加があり、お互いに心が解け合って夜遅くまで会員の懇親が続けられました。
翌日は、少しお酒が残っていましたが、ここあやべ山の家にてADセミナー試験が開催され、医療安全学 2名・看護学 16名・救急医療学 1名・医療学 14名の方々が受験されました。
当日の試験会場では、学術委員長の林さん、組織・調査委員長の久保田さん、弥栄病院の伊熊さん、京都ルネス病院の神谷さん、舞鶴市民病院の尾崎さんの5名の方々に試験を取り仕切っていただき大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
最後になりましたが、夏季研修会を行うにあたりたくさんの方々にお知恵を拝借いたしました。
この書面をおかりしましてお礼申し上げます。
両丹地区理事 城下克明
平成16年10月9日 第484回研修会報告
10月9日午後2時30分より京都府放射線技師会第484回研修会がぱるるプラザ京都において開催されました。当日は大型台風の接近で足元が悪い中(JRが不通になったら中止するつもりでしたが)、熱心な会員の皆様に集まって頂き、無事開催する事が出来ました。本研修会では『PACSの構築のしかたについて』
−DICOMってなぁに?−ということで、以前は病院に勤務されており、現在(有)ソフトクオリティの代表取締役をされている斉藤孝行氏にわかりやすく講演頂きました。要旨について資料を頂きましたので、報告として紹介します。
prePACS system の開発
(有)ソフトクオリティ 斉藤孝行
目的:フィルム診断環境でもPACSの利便性を享受でき、同時に将来のPACS導入に備え画像・レポート情報の蓄積可能なシステムを開発実用する。
方法:DICOM画像をモダリティから受信後JPEG画像へ変換し、同時にヘッダー情報から患者・検査情報を取得可能な受信変換システムを開発した。また、ファイルメーカー(以下FM)pro(ver7)にて、レポート作成兼画像参照システムを開発した。変換されたJPEG画像は自動的にFMシステムに取り込まれ、ヘッダーからレポート作成枠も自動作成される。これにより、フィルム診断時でもキー画像付きレポート作成、システム上での画像参照、画像・レポートのウェブ配信が可能なシステムを構築した。なお、DICOM画像は別途メディアに保存して利用可能である。結果:画像のJPEG変換、ヘッダーからのレポート枠作成は自動で行われ、PACS環境に近い形での参照画像付きレポート作成、画像参照、およびウェブ配信のいずれも実用可能と考えられた。また、受信システムと複数モダリティとの接続テストも特に問題なかった。考察:将来PACS導入を考慮しながら当面フィルム診断を行う施設は多い。本システムは、このような環境下でも画像参照、レポート作成、画像・レポートのウェブ配信といったPACSの利便性を実現可能であり、現状の診療に貢献する。同時に本システムではDICOM画像、レポート情報の蓄積も可能であり、将来PACS導入時には数年分の画像、レポート情報を持つことができ、PACSへの円滑な移行を可能にする。結論:本システムは、フィルム診断下の診療支援とPACS導入準備を同時に実現し、フィルム診断とPACSをつなぐ役割を果たすprePACSシステムとして有用であると考えられた。DICOM出力可能なモダリティを持ちながら機能を十分利用されていない施設において貢献すると思われる。
以上PACS導入準備をふまえた画像・レポートシステムを市販のデータベースソフトを利用しての身近な講演でした。会場からの熱心な質問が多く終了予定時刻を過ぎても、質問が飛び交う有意義な研修会となりました。
文責 林
平成16年12月4日 両丹地区秋季研修会報告
12月4日(土)、舞鶴赤十字病院にて両丹地区秋季研修会を開催致しました。今回の研修会は、マンモグラフィーを中心に講演や演題発表を企画したため、37名というたくさんの会員の参加を頂きました。また、講演には舞鶴赤十字病院・大江信哉先生(日本乳がん学会認定医)にお越しいただいたおかげで、会員どうし熱く活発な意見交流ができ大変有意義な研修会になりました。
以下に、演題発表の要旨をまとめました。
講演
「マンモグラフィーを併用した乳癌検診の精度について」
舞鶴赤十字病院 放射線科部長 外科副部長 大江 信哉先生
演題発表
座長 京都ルネス病院 神谷 聡氏 ・ 舞鶴市民病院 佐伯理恵氏
演題1 「マンモグラフィーの追加撮影における重要性」
京都ルネス病院 斎藤 徹氏
この30年間で乳がん数は3〜4倍に増加していて女性の癌罹患率で乳がんはトップである。その事をふまえて近年はマンモグラフィー検診が多くの市町村で行われるようになりました。
そのマンモグラフィー検診でのルーチン撮影(2方向)では評価しずらい病変が追加撮影を行うことで実際はどのように写るのか検討しました。
追加撮影法として、@他方向による撮影とAスポット撮影・拡大撮影(スポット)の方法で追加撮影を行った。まとめとして@他方向から撮影することでMLO、CCで分かりにくい病変もより観察可能となる。Aスポット撮影は正常乳腺と分離させるのに優れ腫瘤病変の診断に有効であり特に高濃度や不均一高濃度の乳腺では必須である。B拡大スポット撮影する事で腫瘤の辺緑などの微細な構造を観察できる。以上の3点により真の病変の有無、広がりを判断するには追加撮影が有用である事を報告されました。
演題 2「舞鶴市における乳癌検診」
舞鶴赤十字病院 桜井 勝則氏
舞鶴市の乳がん検診は、対象が40才以上の女性(約18,000人が対象者)で、検診方式はマンモグラフィー併用検診・実施内容は問診、マンモグラフィー及び視触診・検診間隔は2年に1回という内容で、舞鶴市内の5施設で実施されました。
検診受診者は約2,000人で、その内舞鶴赤十字病院にて受診された537人の方に乳房撮影前と後にアンケートを行い、その結果報告を行いました。
アンケート内容は、乳房撮影前の「検診を受けようと思ったきっかけは」や「乳がん検診の事を何でしりましたか」など乳がん検診に対する住民の理解度を中心にまとめられていました。
また、乳房撮影後のアンケートでは「乳房圧迫時の痛みについて」とか「撮影を担当した放射線技師の対応はどうか」や「撮影認定資格について」など検診を受けられた方の検査に対する意見や感想を中心にまとめられていました。
アンケート結果から今後の検討事項として、@ 検診と医療の違いを明確にする。
A ホームページやパンフレット等による乳がん検診情報の充実。
B医師・技師・施設認定のアピール。
C待ち時間の改善。D撮影時間の短縮・撮影時の
痛み軽減などを目指してスキルアップに努める。
の5点をあげ考察では、マンモグラフィー=女性技師ではなく、男性技師も受診者に安心して撮影に臨んでもらえるよう努力する必要がある事を訴えられ、最後に舞鶴市での乳がん検診は成功だったと言う事で締めくくられました。
なお、秋季研修会終了後にオプション企画として各施設で撮影されたマンモのフィルムを持ち寄りマンモグラフィーの臨床画像評価を行いました。臨床画像評価指導には、舞鶴赤十字病院 桜井 勝則氏と京都ルネス病院 神谷 聡氏と舞鶴市民病院 佐伯理恵氏の方々にお世話になりました。また、大江先生も参加され質の高い画像評価が出来ました。
最後になりましたが、秋季研修会を行うにあたり舞鶴赤十字病院の谷口技師長はじめ放射線科の技師さんにたいへんお世話になりました。この書面をおかりしてお礼申し上げます。
文責 城下
平成17年3月26日 第488回研修会 報告
平成16年度最後の研修会が平成17年3月26日(土)14:00からぱるるプラザ京都に於きまして開催されました。毎年恒例の地区合同研修会です、例年ですと各地区からの発表を2回に分けて行っていましたが今年は諸般の事情により全地区一度に行いました。発表演題は、
・北地区 演者:竹上 潤司(京都第二赤十字病院)
『ガンマカメラ入れ替えの経験について』
・中地区 演者:三木 利晴(財団法人京都工場保健会)
『内視鏡所見からみた注腸所見の考察』
・東地区 演者:小林 有(京都大学医学部附属病院)
『頭部領域の撮像 脳神経領域のプロトコール』
・西地区 演者:神内 満(洛西シミズ病院)
『LEKSELL GAMMA KNIFE model C』
・南地区 演者:安藤 寧浩(宇治徳洲会病院)
『X-Knifeの経験と検討』
・西南部地区 演者:熊井由昌(大阪医科大学附属病院)
『当院における躯幹部息止めSPECTの臨床例』
・両丹地区 演者:後藤 宏成(京都府立与謝の海病院)
『冠動脈ステント再狭窄評価の検討』
当日は臨時総会も控えており、あまり時間的余裕のない中、約40名の会員参加のもと熱心な発表及び討論がなされました。毎年思うのですが、多くの学会や、研修会では自分の好みや興味のあるもの以外のモダリティーや区分は参加する機会が少ないですが、この合同研修会では、内容が多岐にわたり、多くの分野の演題を聴くことのできる貴重な催しと考えています。来年度は例年通り2回にわけ、時間に余裕をもたせた開催にしようと考えます。すべての演題について紹介したいところですが、紙面の関係も有りますので、取りあえず、今回発表のあった演題について進行を担当していただきました担当理事より寄せられました講評をここに紹介して研修会報告といたします。
(学術委員会 林)
演題報告
『頭部領域の撮像 脳神経領域のプロトコール』
演者:小林 有氏(京都大学医学部附属病院)
当院における頭頚部位はMRI検査の約半数を占める。脳病変は多彩でありすべての疾患に対応できる撮像プロトコールを作成することは困難である。効率的かつ最適な検査を行なうため、疾患ごとにルーチン撮像法を作成している。
撮像法をについて検討を行なった。@スライス厚とノイズの関係Aマトリクス数の選択B矢状断T1強調画像の撮像C化学シフトによる影響D下垂体のDynamic撮影、以上5項目の検討を行なった。@Aよりマトリクス数よりスライス厚(3-4mm)を重視。B正中構造物の形態情報の把握、横断像の位置決め画像にも使用、他の病変の有無確認に有用である。C下垂体での矢状断T1強調画像は斜台などの脂肪髄と下垂体後葉との重なりを避けるために適切なエンコード方向の選択。D下垂体Dynamic撮影はGradient
Echo法では蝶形骨洞による磁場不均一性の歪みが生じるためFast Spin Echo法を用いる。
MRI検査は検査時間が長く、選択するパラメータも多岐である。疾患毎にルーチンを作成することで、検査時間を有効活用でき、質と再現性を確保できる。
(文責 久保田)
『LEKSELL GAMMA KNIFE model C』
演者:神内 満 氏(洛西シミズ病院)
平成16年1月19日に新規に購入された「LEKSELL GAMMA KNIFE model C」について紹介された。平成17年2月28日までに延べ400件行っておられ、疾患別では転移性脳腫瘍が約60%を占め、髄膜腫、聴神経腫瘍の順となる。治療は、フレーム装着(約10分)・位置決め撮影(約30分)・治療計画(約30分〜1時間)・照射(約30分〜数時間)となり、基本的に2泊3日になる。
長所として、機械的稼動部が少ないため位置精度が非常に高い、線源がCoであるため線量管理が容易、Automatic Positioning Systemを用いることにより高精度かつ治療時間の大幅な短縮と患者負担の軽減および0.1mm単位での照射が実現する。短所は、フレーム固定が侵襲的、分割照射が困難、腫瘍の数、大きさに
よって制限を受けることである。ガンマナイフの導入により、開頭することなく高精度に頭蓋内病変への治療が可能となったことを示された。
(文責 藤本)
『X-Knifeの経験と検討』
演者:安東 寧浩氏(宇治徳洲会病院)
X−KnifeとはSRSのことであり、5〜20mmのナロービームを受診者の周囲に円弧状に回転照射し、それを数回違った角度から繰り返す事で病変に高い線量を与えながら周囲正常組織への被爆線量を抑えることが可能となります。利点は、@病変に集中照射が可能 A1回高線量照射が可能 B治療期間が短い C痴呆や意欲減退が起き難い。欠点は、@精密な位置精度が必要、A座標決定のため固定が必要 B境界が判り辛い病変には難しい C一過性脳浮腫や限局性脳壊死の確立が高い D照射までの待ち時間が長く、また照射時間も長い D費用が高い。 当施設では、X−Knifeの経験数も年々増加しており、この手技を体幹部に応用して肺がん・肝がん等の治療も実施しています。
また、頭部の転移性脳腫瘍に対する放射線治療のほとんどが、X−Knifeを第一選択としており、頭部の外照射(全脳照射)は数少なくなりました。これはX−Knifeのほうが副作用も少なく、治療後のQOLに寄与しています。現在、術後再発に対する治療、頭部原発性疾患に対しての治療、体幹部の治療、位置精度の向上に取り組まれており、再発例も37例中2例と満足のいく治療成績を残されていると感じました。 (文責 川畑)
『当院における躯幹部息止めSPECTの臨床例』
演者:熊井 由昌 氏(大阪医科大学附属病院)
深吸気停止SPECT法(Breath Hold SPECT:BrST)のデータ収集及び処理方法の開発をされ、胸腹部領域の検査において、深吸気停止SPECT法によって深吸気停止時及び通常呼吸時のSPECT画像をそれぞれ作成し、Automatic
Registration Tool(ART)を用いてCT、MRI画像とのFusionマッチングを行われました。CT画像とFusionを行った場合に、深吸気停止時のSPECT画像がほぼ一致したという結果が得られたことを示されました。
(文責 村上)
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