診療放射線技師を詳しく説明させてください。
私たちは診療放射線技師です。今日、医療現場の中では放射線の利用は診断・治療に必要不可欠なものです。人体に放射線を照射することが許されているのは医師・歯科医師と診療放射線技師に限られています。診療放射線技師になるためには、高校を卒業後、文部省または厚生省が指定した大学、短大、専修学校で十分な知識と技術を身につけて卒業し、国家試験受験資格を取得しなければなりません。
いつも思うことがあるのだけど・・、原発事故などが起こると医療で使われている放射線も恐いものと騒がれます。もちろん、扱い方を誤ると危険なものです。
医療で使われている放射線について説明します。

放射線検査とは
放射線を使った診断や治療は現代の医療には欠かせないものです。
診断と治療に使われる放射線には、エックス線、ガンマ線、アルファ線、ベータ線などがあり、それぞれの目的に応じて使われます。エックス線はエックス線検査、CT(コンピュータ断層撮影検査)など、身体の中を透かして見る、いわゆる画像診断に欠かせないものです。また、ガンマ線を利用した画像診断にシンチグラフィ(アイソトープ検査)があります。

放射線検査の利点と危険性
放射線検査は患者さんにとって不可欠な場合に実施され、検査によって受ける患者さんの利益は大きいといえます。
放射線検査ではどんなに放射線の量が少なくても被曝がありますが、一般に画像診断で用いる放射線量はきわめて少量です。放射線の被曝による発ガンの危険性は、タバコによる発ガンや自動車による事故などの確率より、はるかに低いと考えられています。したがって、検査に必要性がある限り、放射線による危険性は無視できる範囲内であり、安心して受けてもらって結構です。

しかしながら、妊娠中あるいは妊娠している可能性のある女性の放射線検査では、胎児の被曝についても考慮しなければなりません。このような方は放射線検査に先立ち、医師や放射線技師にその旨申し出てください。放射線検査は、検査の必要性、胎児への被曝などを考慮し、総合的に患者さん(胎児)への利益が大きいと判断された場合にのみ実施されます。
一般的な撮影・透視では、腹部が照射される腹部・腰椎の撮影、骨盤部の撮影、注腸造影などでとくに注意が必要です。胸部撮影のように、腹部を直接撮影しないような撮影では、腹部に鉛のマットをかぶせるなどの工夫によって、胎児への被曝量は無視できるくらい少なくなりす。
検査を受けたあとで妊娠していることがわかったときはどうしたら良いか。
検査方法、検査部位、撮影枚数などにより胎児の被曝量が異なり、そのリスクも異なりますので、検査を受けた病院の専門医(放射線科)に御相談ください。

なぜ検査で用いられ放射線の量は安全で問題にならないと言えるのでしょうか?
危険の度合いは、放射線の量(被曝線量)によりますが、検査を受けることによりどれくらいの量を被曝しているか。
宇宙からの放射線や地面からの放射線による被曝が意外に多く、地域によって自然の放射線量が異なり、1回の胸の撮影より被曝が多い場所もあります。
人類は、これら自然の放射線から常に被曝を受けていますが、事前放射線で障害が発生したという報告はありませんし、またエックス線検査を受けて、障害が発生したという報告もほとんどありません。

放射線」の危険を考える場合、私たちの周囲に存在する各々な危険や、健康を害するものと比較すると考えやすいでしょう。
私たちの周囲には、タバコ、食品添加物、排気ガス、自動車事故とういろいろな危険や健康を害するものがあります。エックス線検査は、タバコの害にくらべて非常に少ないにもかかわらず、一般に害が多いと誇張されがちです。しかし、グラフに示すように人間の一生のうちで有害と考えられるものがどの程度寿命をちじめるかについて、日数で表した場合、エックスせん検査はコーヒーとほとんど同じです。また、グラフではエックス線検査によって発見された病気の治療による延命については考えに入れてない日数ですので、病気による寿命短縮を考えると、さらに少なくなると思います。
以上のことにより、一般にエックス線検査に使用される放射線量は害が非常に少ないことがおわかりになると思います。

放射線は本当に「怖い」ものなのでしょうか??
一般の人々の中には、放射線というだけで、怖いもの危ないものと考えている人が多いようですが、放射線影響の発生は、被曝した線量によって決まります。患者さんに対する医療被曝は、これまで記述しましたように、放射線影響の発生する可能性のある線量に比べて低く、患者さんにとって明らかに利益を 生んでいます。検査について不安がありましたら、医師や放射線技師に質問し、安心して受けてください。

放射線技師は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を守り患者さんの被曝線量を可能な限り減少させ、病気の早期発見やガンの治療などの成果が尚逸そう上がるように努力しています。
放射線の検査で造影剤を使うことがあります。これも薬、知っていてください。


造影検査について
エックス線写真をとるときに、写真にコントラストをつけて病変をより鮮明に写し出すために、体の中に造影剤を入れることがあります。造影剤にはエックス線を通すもの(空気や炭酸ガス)とエックス線を通さないものがあり、後者はバリウムとヨードがあります。バリウムやヨードはエックス線を通さないため、フイルム上に白く写し出されます。それが周囲の黒っぽい部分とコントラストをつくり、病変の診断に役立ちます。

バリウムについて
バリウムはおもに消化器(食道・胃・十二指腸・大腸など)の検査のときに、空気や炭酸ガス(発泡剤)などと一緒に、既知から飲んだりカテーテルという細い管から注入したりします。
バリウムの安全性は高く副作用はありませんが、長い間残っていると、ときに便秘を起こします。したがってバリウム検査のあとは水をたくさん飲んで、早くバリウムが出るように気をつけてください。

ヨード造影剤について
一方、ヨード造影剤は血管に注射して使うものです。CTでは、脳をはじめとして全身の臓器検査に使われています。また、腎臓などの病気を調べる経静脈性尿路造影などのエックス線検査にも使われています。ヨード造影剤の安全性はきわめて高いものですが、まれに注射後に、吐き気、じんましんなどが出る方がいます。また非常にまれですが、血圧が下がり、息苦しくなる方もいます。このような副作用はヨードに対するアレルギーによるもので、喘息などアレルギー疾患のある方は、副作用の出る頻度がやや高いといわれてます。
最近は、さらに副作用の少ない非イオン性造影剤が使われるようになり、安全性が強化されています。全体としてヨード造影剤によって何らかの副作用が起こる確率は3%程度で、何らの処置が必要となる副作用はさらにその1/100以下です。
一方ヨード造影剤には遅発性副作用といって、検査後1時間以上たってから皮膚に発疹がでることがあります。これもやはり喘息などのアレルギー体質の方に多いとされています。今までに造影剤で何らかの副作用が出た方や、喘息などのアレルギーのある方は、あらかじめ医師や放射線技師にその旨を伝えてください。

画像診断における造影剤の使用の是非は、病変がよりはっきり見えるようになり正確な診断ができるという長所と、その薬によって起きてくる副作用の確率のバランスによって決まります。専門家が必要であると判断した造影検査は、患者さんにとって大きな利点がありますが、一方、ご自分のアレルギーの状態などの情報を医師に詳しく知らせていただくことが、安全に検査を行なう上で大切です。

ヨードアレルギーテストについて
ヨード造影剤は上でも説明しましたように、まれにアレルギー反応を起こす方がいらっしゃるため、以前はテストとして約1mlだけを注射し、その反応を見た上で投与するかどうか決めていました。しかし、このテスト自体あまり意味がないため(テストで反応が無くってもアレルギー反応が起こったり、テスト自体で副作用を生じたりすることがありました。)、今ではほとんどの病院で行われなくなりました。現在、一般的に行われているのは、点滴の針を入れたあと、ごく少量だけ造影剤を投与し、少し時間をおいて問題がなければ全量を注入にて検査を行なう方法です。検査中、医師、看護婦から「ご気分はいかがですか?」などたずねられると思いますが、少しでもおかしいと思ったらすぐに担当者に伝えてください。

引用書
メディクイックブック 第2部 患者さんによくわかる検査・手術の説明と生活指導
発行所 金原出版株式会社(金原出版のご厚意により一部許諾を得て転記しています。