Impressions 2003 vol.3







■ * 華麗なるピアニストの競演  ヴェルビエ音楽祭10周年記念
■ * チェン・ミン Xmas Dinner Show 2003  @ホテルグランヴィア京都








*■■■ 華麗なるピアニストの競演 ■■■ ヴェルビエ音楽祭10周年記念

NHK教育テレビでやっている処を途中で見掛けて釘付けになった。うわっ、アホなことを、と。メンバーは全員世界的著名ピアニスト。舞台に並んだスタインウェイは八台。室内管弦楽器八器ではない。ポリフォニック・エントロピー増大しまくりの、ピアノが八台なんである。喩えれば、楽器毎(しかもパート沢山)に分けたオーケストラ八隊を、指揮者八人でそれぞれ個別に指揮して、それでもって全体を合わせるようなもんなんである。・・・二台や協奏曲でも大変なのに。“合う”訳ないだろーが、そんなもん。プロ中のプロが、物凄く要らない苦労を強いられている。物凄い才能とお金を掛けて、滅茶苦茶勿体ないことをさせられている。みなさん、合わせることに神経を費やすあまり、出力が実力の30%くらいになっている。もう、誰が何なんだか(笑)。

しかしこれが一旦目にしてしまうと、ハラハラドキドキでチャンネルを変えられなくなってしまうのだった。やたらにスリリングなのだ。ああっ、頑張ってっ、持ち堪えるのよっ(悲鳴)、などと思いながら、思わず指で拍子を取ってしまう。あんなに技術も表現力もある人々が、「ちっ、ズレた(苦)」とか「っかーもうスケール合ってないだろ〜(溜息)」とか「ボクそれでも合わせるからっ、せーのっ、ハイッ(鼻息)」とか「何今の?(と右見る)」とか「って何よ?(と隣が左見る)」とか「・・・(ガマン集中一本の無表情)」とかいう顔をしながら、必死のパッチ(死語)で弾いているのである。しょっちゅうタイミングをはずしながら。多分プロ的には、素人観客の100倍くらい許せない気分で。自分を見失わないように、らぱぱんぱん、とかぶつぶつ言っている人も多数。せめてレヴァインを一人抜いて指揮させるとか、ダメなんですか、とか問いかけたくなる。ラン・ランは一人チャイナ服でアクションも大きいけど(ディレクターは分かってて端に配置したんだろうなアレ)、それでも横のキーシンになるたけ合わせようと努力しているコトに気付いてみたり。しかしキーシンは自分のことしか見てなかったり(オケがついてくんのと違うのよ、もちょっと気ぃ遣いなさいよ;)。星条旗のアレンジで、極微かに失笑が流れたり(この音楽祭、米資本出資なの?)。客席でマジ顔で拍手を拒否してる人が居たり(したげよーよ)。しかしそのうち、奏者の「こなくそ〜(ニヤリ)」なんていう表情を見て、こっちもなんだか笑えてきたり。

いっそ出来れば、ドキュメンタリーで全部見たかったなあ、と思う。企画が持ち上がった処から出演交渉(勿論難航)、リハ(苛立ちと絶望と開き直りが展開)、本番(上述)、打ち上げ(本音とお付き合いフレンドリネスの入り混じり)、みたいな感じで。「分かってたけど二度としないぞオレは!」とか「ここまで来りゃもっと時間作って徹底的に合わせたかったよねぇ」とか。本音的には、「あれだけ拍子固定って申し合わせといたのに、アイツ独人で主旋律歌いやがって、俺等ズレまくるし。大体こんなもんに真剣になるなよな」とか「なんでクラシカルのピアニスツがルンバなんだ、もとい、スイスで星条旗なんだ?」とか。言いたいことは一杯あるだろう、普通のコンサート以上に。

あ、音楽の感想書いてない。比較的音数が少なそうなルンバでもガタガタだったのに(リズムが性に合わないのか?)、最后のコルサコフの「くまんばち」の細かい筈のスケールはピッタリ合っていた(そりゃみんな若い頃から引き倒したような小曲なんだろうけどさ)(でも小曲ったって小犬のワルツじゃ絶対合わない訳で。上手い選曲だと)。餅は餅屋哉。何か兎に角、ヘンに面白かった。ほんと滅多なことでは見れない究極の曲芸ショーですわ。弾いていた人達はその晩、悪夢にうなされていたかもしれないけれど(笑)。








*■■■ チェン・ミン Xmas Dinner Show 2003 ■■■ @ホテルグランヴィア京都

ディナーショーは初めてだったのだが、先に食事をしてからショーが始まるプログラムになっているらしい。ワイワイ話し込んでご機嫌で食事をしていたら、食べ終わるのがギリギリになってしまった。ワイン、もうちょっと大人向きだったら良かったな(白は甘くて赤は軽かった)。食事はすごーく贅沢なお子様ランチみたいで可愛いかった。やっぱたまにワーキャー言いながらこういうのを食べるのは嬉し楽しくっていいなあ。

メインは二胡なので、シンセのオケでも使うんだろうかと思っていたら、バックは完全アコースティックな構成だった。木琴・ギター・チェロ・パーカッション。アルバムではそうでない曲も全て上手くそれ用にアレンジされていた。シンセサイザは余り使わない方がいい感じ。こっちの方が好きだ。

チェン・ミン本人は初めて見たが、凛として気の強そうなお姉さんだなあという印象。最近は癒し感を前面に押し出したプロデュースとなっていて、彼女自身も優雅にゆったりとした口調で話すのだけれど、何というか、隠しきれない上昇志向と気の強さがオーラとなって全身から湧き出ている感じ(笑)。普段はもっとチャキチャキ動く人なのでは、と思った。演奏はアルバム通りの大胆な歌いぶり、それでいてゆるぎない統制力。酒気も相まって気持ちよい。トーク(日本語)では、富士山の前での元旦ライブでは寒さに指が動かなくて困った、という話が印象に残った。お喋りはこれからもっと上手になるんだろう。広い客席(500人くらい?)で前から二番目のテーブルだった。目と鼻の先で演奏が聴けたのは幸運。

酔っ払って聞く生の音楽がこれほど贅沢で幸せなことだったなんて、長い間忘れていた。アルバムにサインを貰う。また来たいなあ。

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