(仮題)GRPでエンジンの有効回転数の下限が拡張されるなぞ(2)
サブタイトル:カムとタペットのあいだでなにが起こっているのか?
クランクとは逆に回転運動を往復運動に変える部分である
動弁系(カムまわり)の潤滑に注目してみました。


R259の場合、カム山とタペットの接触部分はタペットの中心にありません。
中心からずれたところを叩くようになっています。(多くの直打ちツインカムも同様です)

タペット回転軸のど真ん中を叩くとタペットはうまく回ってくれません。
回ってくれないと潤滑条件としてとても厳しいものとなり、
ちょっとしたことで潤滑がうまくゆかなくなり金属の直接触が起こります。
直接触の痕跡はカムの表面にむしれキズとなって残る場合も有ります。

中心軸からずれたところを叩けば、タペットはクルクル回ります、
カムとタペット間の潤滑状態はタペットが回る場合と回らない場合とでは大きく異なったものとなります。
双方が回転する事により接触面にオイルが巻き込まれ、EHL潤滑(弾性流体潤滑)となります。
その時の油膜は一万分の1mm位になります。
なお回転していなければ油膜厚さは数万分の1となります。

動弁系にロッカーアームを使用するものでは、
直接触によるむしれ(磨耗)の対策としてカムやアームの擦れ面に硬い金属をくっつけて表面処理としたり、アーム側にパッドとしてセラミックを当てたりしてます。
ようするに回転しない接触では、なんらかの処理をしないと耐えられないのです。

最近ではローラーロッカーアームというカムとアームの接触部分にローラーベアリングを仕込んで接触の仕方を直擦れから回転擦れに変えているのもあります。これは良い方法です。
いかにも高そうな部品なのですが、三菱がゆうには見た目より低コストで作れるとのことでした。

タペットがクルクル回っている時の摩擦面の、つまりカムとタペットの相対こすれ速度は極めて小さいです。
普通に走行している車のタイヤと地面の接地部分の速度差が小さい(ほとんど0)のと同じ事です。

しかし回っていない場合はカムの回転速度がこすれる速度となります。
 タイヤがロックしている状態で無理矢理動かすに等しいです。
 タイヤは転がっている時と比べて大きく磨耗します。

カムに掛かる極圧の原因の一つであるバルブを閉じるための強いバネの存在も大きいです。
バネが弱ければ極圧も下がり摩擦/磨耗も小さくなるのですが、
バルブ閉じるためには丈夫なバネが必要なのです。
ドカティに採用されているデスモドロミックはバルブを閉じる時も基本的にカムで動かします。
ですので動弁系のフリクションは比較すればうんと少ないです。
圧力が小さければ摩擦も小さくなり、ロスする力も少なくできます。

デスモといえば...ヘアピンみたいなバネをバルブ戻しの最後のつめにつかっています。
ヘアピンばねやねじれ棒は、コイルバネとは異なり往復運動部分にバネの重さがマトモに掛からないので具合よいのです。

なんだかわけ分からないまま妄想爆発モードで作成中です

1999.3/7 追記

機会があればカムを手で回してみると、いかに重いかが判って良いかもです。
デスモは比較にならないほど軽いです。

オイル添加剤の中には非常に薄い溶剤をベースにしているものもあります。
使用により一時的にオイル粘度が下がり過ぎてしまいカムに傷が入る場合もあるようです。
フラッシングオイル(シャバシャバ系)の使用も同様の理由でちと恐い部分があります。
カム周りはエンジン内部でも特に厳しい潤滑環境のようです。(特にロッカーアーム式)
また比較的見やすい部分でもあります。

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1999.4/7 追記

カムの磨耗は高回転時でなく、アイドリング程度の低い回転でより多く起こるらしいことがわかりました。
「磨耗が多い=摩擦も大きい」と考えて良いので、今回の経験とも合致します。

ホンダの新型オープンカー「S2000」では低フリクション化の方策として動弁系にローラーロッカーアームを採用しています。
特に低〜中回転域でのフリクション低減に大きな効果があるのだそうです。


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