


　　　　『行基年譜』

行基年譜
              　自巻至此闕
　行基師・願勝師・利鏡師等、野田村大歳松樹下至
　集、語諸刀祢云、率知識為大神修功徳、以利鏡師
　為画師造七佛薬師像、在障子也。百嶋家南作借
　屋、造件佛而収宿大神故内云云、後和銅元年戊申十
　月比、専掃清首麻呂家、終成寺院、遷彼佛像、今在
　両佛堂是也。今大鳥神宮寺神鳳寺是也。文武天
　皇諱軽、天武天皇孫、草壁皇子第二子也。又天津
 足、母元明天皇諱阿閉皇女、天智第四女也。即位
  大化三年丁酉、治天下十一年丁未六月十五日天皇
 崩、年廿五。十一月丙午火葬先皇安古山陵、持統
 天皇崩同年也。
行年卅七歳甲辰
　文武天皇八年甲辰、慶雲元年也、＃従少年至卅七歳、 棲
　息山林云云、如是等之間、或修行或安居、築池掘
　河、宗橋伏通樋、掘溝云云。 号日神崎院
　此歳掃清於本生家、為佛閣。即家原寺是。修行時、新
　羅國大臣恵基與行基共申阿弥陀佛、諸國遊行、
　号和泉國日根郡住人云云。件大臣和泉國日
  根郡日根渚、従新羅國被流天来云云。今日根禅
　興寺本願云云。又彼國村二祝奉法大臣卜云神是
　也。行基諸國遊行給、舊里時人々池側集、魚取?、
　勇人見行基以鮒鱠奉之、即食之吐出、彼鱠小鮒
　従口生入池、人驚敬咎悔、今池見在云云、 皆無片
　眼。古宗元興寺邑人大法會儲、請行基七日間法
　令説、于時有一女人、完脂付額髪、不知人、行基獨
　知之、大令慙之、女人欲出去、人弥奇驚敬禮無極
　云云、
堂一宇一間四面 塔一宇三重
　金筒文云
　今令衆生、往生極楽、頓證菩提、點点此所。於此所
　亦、起立塔廟。但縁堂薄、運在像末、若有一人、如我
　起立、當知是人即我身是。此文書金筒埋古塔下
　云云、後人得之、留文如本埋了。金筒正文
　為令衆生、出離生死、往生極楽、頓証菩提、数點此
　所、起立塔廟、但縁猶薄、運在像未、亦於此所、如我
　起立、当知是人即我身是、結縁此者速得成佛、○
　○此者、敬當勤習、發決定心、勿生疑惑、歳次戊寅
　沙門行基愍末代輩、記貽来葉云云。(※)
行年卅八歳乙己
　文武天皇九年慶雲二年乙己 引導生母、安居右
　京佐紀堂、盡力孝養。
　大修恵院高蔵十月始起、
　在和泉国大鳥郡大村里大村山
行年卅九歳丙午
　文武天皇十年慶雲三年丙午 天皇和泉国和泉郡横
　山郷内以横山、蜂田寺并四十九院修理料杣被
　施入。七月八日勅使正四位下犬上王・従七位下
　津守宿祢得麻呂・正八位上出雲國勝等、点定四
　至云々
行年四十歳丁未
　文武天皇十一年慶雲四年丁未 移生馬仙房、弥盡孝
  養之禮云々。
行年四十三歳　 
　日本根子天津御代豊国成姫天皇
　元明天皇三年和銅三年庚戍　正月母逝化。自尓以
　降、迄于和銅五年□亥、住生馬草野仙房、着麁服甞
　苦食云々、或云指三祇之遠期、荷日弘
　　　　　  之重擔紹隆為行、濟度為心云々、
　元明天皇阿閉、天智天皇第四女也。即位和銅　 
　元年戍申、治天下七年、在大和国添上郡陵、兆城東
 西三町南北五町、守戸五烟云云。養老五年元正七年
□酉十二月四日崩、生年六十一。葬椎□陵云々。
 行年四十九歳丙辰
　　日本根子高瑞足如天皇
　元正天皇二年丙辰霊亀二年、元正又云飲高、
　恩光寺
　在太和国平□郡床室村十月五日起
　元正天皇諱水高、文武天皇同母婦也。
　即位霊亀元年乙卯六月三日、治天下九年。養老五
　年□酉十二月四日大上天皇元明崩、年六十一云
　　云。
行年五十一歳　元正天皇四年養老五年戊午
　隆福院登美四月廿三日起
　　在大和国添下部登美村
行年五十三歳庚申元正六年養老四年庚申
　石凝院　九月十五日起
　在河内国河内郡早村
行年五十四歳□酉 元正七年養老五年　□酉五月三
　日、命交朝廷参上京都、二人得度、寺史乙丸以己
　居宅、奉施＃、即立精舎號菅原寺。五月八日一百
　箇人依於大安寺得度、之内和泉国云云、上記蜂
　寺奴云云、
行年五十五歳壬戌元正八年養老六年壬戌、喜光寺
　　菅原寺二月十日起讃日、最後涅槃所也。
　　　在右京三條三坊九坪・十坪・十四坪・十五坪・十
　　　六坪。
行年五十七歳甲子
　天璽国押開豊桜彦天皇
　聖武天皇神亀元年甲子諱勝寳感神聖武皇帝
　文武天皇太子也。治天下廿五年、天平勝寶八年
　　丙申孝謙天皇八年五月二日崩、葬佐保陵云云。
　清浄土院高渚 塔十三層云云、
　在和泉国大鳥郡葦田里今?穴郷
　尼院 同郡早部郷高石村
行年五十八歳乙丑聖武天皇二年神亀二年乙丑
　久修園院山埼 九月起
　在河内国交野郡一條内、九月一日将彼弟子修
　杜多行、到山埼川、不得暇掩留、河中見一大柱、＃
　問云、彼柱有知人矣、或人申云、往昔老舊船大
　徳所渡柱云云、大＃發願、従同月十二日始、度山
  埼橋云云、天皇歸依給云云、
行年五十九歳丙寅、聖武天皇三年神亀三年丙□
　槍尾池院 在和泉国大鳥郡和田郷
行年六十歳丁卯、聖武天皇四年神亀五年丁卯
　大野寺　在和泉国大鳥郡大野村、二月三日起
　尼院　同所今香琳寺歟、同年
行年六十三歳庚午、聖式天皇七年天平二年庚午
　善源院川堀三月十一日起
　尼院　己上二院、在摂津国西城郡津守村
　舩息院　二月廿五日起
　尼院　己上二院同国兎原郡宇治郷在
　高瀬橋院　九月二日起
　尼院　己上二院同国嶋下郡穂積村在
　楊津院　在同国河辺郡楊津村
行年六十四歳 □□聖武天皇八年天平三年辛未
　狭山池院　二月九日起
　尼院　己上在河内国舟(丹)北郡狭山里
　嶋陽施院　三月廿日起
　　在摂津国河辺郡山本村
　法禅院檜尾九月二日起
　　在山城国紀伊郡深草郷
　河原院　在同国葛野郡大屋村
　大井院　在同郡大井村
　山埼院　在同国乙訓郡山前郷无水河側
　隆福尼院　在大和国添下郡登美村、十月十五
　　　日起
行年六十六歳癸酉
　聖武天皇十年天平五年癸酉閏三月、朝廷與?車一
　両・得度卅五人給、爰＃　和歌付勅使献天皇云云
　止不久留未和禮仁多末部利以加仁東毛諸共
　尓古曽於久利和多佐女云云。于時、智光大法師
　云人有。智光名高経疏造、傳法弘世被貴、妄誹我
　智深大僧也、行基智淺沙弥也、何因云家彼貴、我
　捨、恨世、河内国行鋤田寺籠居、俄病受死。経十日
　甦云、閻羅王使我召行、道見金口荘造、使問、行基
　＃可生給所也云云。更行熱煙来覆、又問、汝可生地
　獄也云云。至着我打鐵火柱令抱、解骨砕、苦受事無
　量、閻羅王云、汝豊葦原水穂国坐行基誹謗、其罪
　勘給　召也云云。今将返云、使副免送了。仍難波堀江
  橋渡給所至。＃暗知咲云、何因来、智光悔咎云云。智
　光死後諸弟子等請奉＃為導師、霊令報息之日
　行基登高宣云、　孟□陀加修行仁以天示藤袴
  麻呂曽怒悲計牟行袴卜宣テ即下了給ヌ
　此ハ後七十六才ノ記カ
　同 年七月三日、乗舩下□善源寺 於寺内以二千
　余造花庄厳、以二千余造花浮於河水、迎送於出
　　　　　　　　　中天竺カヒラ門＃也、北天竺ノ　林邑国ノ佛哲也、
　 居。俄尓之間、三人僧乗舩到来。一人ハラ門僧、一人
　林邑僧、一人大唐僧云云
　救方院　同年十月十五日起
　薦田尼院　己上在河内国茨田郡伊香村
行年六十七歳甲戌聖武天皇十一年天平六年甲戌
　澄池院久米多十一月二日起
　  在和泉国泉南郡下池田村
　深井尼院香琳寺在同国大鳥郡深井村
 吉田院　在山城国愛賀郡
 沙田院 不知在所 摂津国住吉云云
　　　　　　私、住吉ノ社大海神ノ北ニ南向ノ小寺云云
　呉坂院　在摂津国住吉郡御津
行年七十歳丁丑聖武天皇十四年天平九年丁丑
　鶴田池院　二月九日起
　　　　　里ハ名鶴田里卜村ハ山田村也
　　在和泉国大島郡凡山田村
　頭陀院菩提九月一日起
　尼院　同年始起
　　　以上、在大和国添下郡矢田岡本村
行年七十一歳戊寅　私云、此年家原寺金筒銘
　　　　　　　　　　　　　　文被埋置歟
　聖武天皇十五年天平十年戊寅正月十日、於中宮得
　度三十二人。和泉国大鳥郡早部郷早部里戸主
　従七位上大鳥連史麻呂戸口大鳥連夜志久尓
　年分十箇人例、沙弥秦證年十九未定寺
行年七十二歳乙卯聖武天皇十六年天平十一年己卯
　安居久修園院、得度百八十四人
行年七十三歳庚辰聖武十七年天平十二年□□
　發＃院泉橘院、讃云此院ハ天王?行幸シ影像作テ安
　　　　　　　　　置シ給所也、
　隆福尼院 己上山城国相楽郡大伯村
　　橘橋歟
　泉福院
　布施院
　尼院　己上同国紀伊郡石井村
行年七十四歳□己或云此記ハ天平十一年云云
　聖武十八年天平十三年辛己三月掩留山城国
　泉橋院、十七日申時、天皇行幸給、奉拝大僧正矣。拝
　訖給、御座終日並談説給。尓時大僧正言、大国者
　有給孤獨園而養息孤獨徒。但吾日本国无給孤
　獨園、是以請為奈野而為給孤獨園卜白支。爰天皇
　答給ク歸命宣打、又演院々建立者、又天皇報答ク建
　立院々堺地世々不絶、不被官司摂録卜宣支云云、即
　奉施食封一百戸。同日申時宣命。同年六月十六日
　左大臣橘朝臣奉施食封五十戸、又使工匠造恋
　物頭現形像一体、侍従比丘像曰躯、安置於泉橋
　院。 同月廿六日、天皇玉舩、如馬巡於泉川、請大＃、
　終日燕楽。大臣弾琴云云、蓮葉ニ湛禮留水ノ玉ノ如比加
　禮留人尓安布曽右禮志佐云云、
　　　天皇感悦給、大＃奉禮咲含悦テト云云
　天皇和歌云
  皇花如久仁未留人ニ吾シ念部波故仁相ヌル、但
  所施封戸聖人不受、仍量大蔵省曰、遷化之後、大
 小寺誦経了云云、
 〔この間、九行分空白〕
天平十三年辛己記云辛己云ハ延暦廿三年三月十
　九日所司記云云
宗橋六所
　泉大橋 在相楽郡泉里
　山崎橋　在乙訓郡山崎郷神亀二―九月十二日始起
　　　己上二所山城国云云
　高瀬大橋　在嶋下郡高瀬里
　長柄
　中河
　堀江　　並三所西城郡
　　己上四所在摂津国
直道一所　在自高瀬、生馬大山登道、
　　己上河内国茨田郡・摂津国云云
池十五所
　狭山池　在河内国北郡狭山里
　土室池　在大鳥郡土師郷
　長土池　在同所
　薦江池　在国郡　深井郷
　檜尾池　在同郡　和田郷
　茨城池　在国郡　蜂田郷
　鶴田池 在同郡早部郷
　久米多池　在泉南郡丹比郡里
　物部田池　在同所
　　　 己上八所在和泉国
　崑陽上池　同下池、院前池、中布施尾池
　長江池　己上並五所、河邉郡山本里
　有部池　在豊嶋郡箕丘里
　　　 己上六所、在摂津国
溝七所　　　　　　在河内国茨田郡古林里
　 古林溝　　　　長三千二百丈　廣六尺　深四尺
 　崑陽上□溝  長一千二百丈 廣六尺 深四尺 在摂津国川辺郡山本里
　 同下池溝　　 長一千二百丈 廣六尺深六尺 在同所
　 長江池溝　　 長六十丈 廣深六尺 在同国西成郡
　 物部田池溝　長六十丈 廣深五尺 
　　　　　　　　　　　　　　　 在□泉国泉南郡、物部田池尻申候　
  久米多池溝　長二千丈 廣□五尺 在同国
樋三所
　高瀬堤樋　在茨田郡高瀬里
　 韓室堤樋　同郡韓室里
　茨田堤樋　同郡茨田里　
　　　己上三所、在河内国
舩息二所
　大輪田舩息　在摂津国兎原郡宇治
　神前舩息　在和泉国日根郡日根里、近木郷内申候
堀四所
 　 比売嶋堀川　長六百丈 廣八十丈 深六丈五尺 在西城郡津守村
　　白鷺嶋堀川　長百丈 廣六十丈 深九尺 己上在西成郡津守里
　　次田堀川　長七百丈 廣二十丈 深六尺 在嶋下郡次田里
　　　　己上三所、在摂津国
　　大庭堀川　　長八百丈 廣十二丈 深八尺 在河内国 茨田郡大庭里
　　　己上不記年號、仍不審多、或遊行時、或寺院
　　　之次、随便云々、
布施屋九所 見三所　 破損六所云云
　大江布施屋 在乙訓郡大江里
　泉□寺布施屋 在相楽郡高麗里
　　己上二所、在山城国云々
  崑陽布施屋 在河邉郡崑陽里
　垂氷布施屋　在豊嶋郡垂氷里
　度布施屋 在西城□津守里
　　　己上三所、在摂津国
　楠葉布施屋 在交野郡楠葉里
　石原布施屋 在丹北郡在原里
　　　己上二所、在河内国
　大鳥布施屋　在大鳥郡大鳥里
　野中布施□　在同郡土師里
　　　己上二所、在和泉国
行年七十五歳壬午、聖武十九―天平十四―壬午二月廿
　九日、使秦堀河ノ君足、記録大＃遊行事一巻、同四
　月五日、任大僧位諱行法大僧正
行年七十六□癸未天皇廿年天平十五年―癸未、十月十五日天
  皇信楽宮、發大願造金銅舎那佛像云云、又云天皇
　東大寺造給、供養講師行基請奉、＃辞給云、従外
　國大師可来、以彼可奉仕云云、供養比、摂津国難波
　迎大師云何給、云家申請百僧、曳将僧次行基弟
  百也、治部玄番雅楽等加天舩乗、音楽調行、難波
　津至見无、行基閼伽一具備テ迎遣、花盛香焼、湖上
　浮、無乱事遥西海行、漸有小舩、乗ハラ門僧正菩提
　云人来、閼伽又此小舩浮、无乱返来、ハラ門信稽首
　行基云、南謨阿梨耶曼蘇悉里菩地薩捶婆耶摩
　訶薩捶婆耶云云、 大＃答拝云、南謨阿梨耶波魯吉
  帝薩捶波羅耶菩地薩捶波耶摩詞薩捶波耶云云、即
　ハラ門僧正和歌云、伽毘ラ衛ニ聞テ吾来シ日本ノ文珠ノ御
  跡今ソ知リ奴留ト云云、則設无数供具、以盡主客之礼時
　大和国有■人、俗菅原臥云云、衆僧食時走来扣机
　歌云、六即ノ位ヲ経リ三覚ノ顕給ヘル此ハ如来云比天
　手ニ取レハ穢レモゾスル乍ラ立テ三世ノ佛ニ花奉マツル云云、
　或説行基＃云云、
　霊山ノ釈迦ノ御前二契リテシ真如不朽相見ツルカナリカナ云云、
　バラ門僧正答云、迦ビラヱニ共契シ甲斐有リテ文
  殊ノ御加保相見カナ云云、
行年七十七歳□□、聖武廿一年天平十六―甲申
　或云、天平十六―、行信僧都為勅使、奉施封戸九
　百□云々
　天平十七―正月十七日、以行基大徳為大僧正、
　降玄昉僧正、流于筑志、同廿年十一月廿六日、天
　皇行幸菅原寺、度一百廿人、
　大福院 御津、二月八日起
　尼院
　   己上、在摂□国西城郡御津村
　　 行信僧都為勅使、奉施封戸九百戸
　　 ＃不受返、信受天皇彌歸伏
　難波度院
　枚松院
　作蓋部院
　　　己上三寺、摂津国西城郡津守村
行年八十一歳□□、天皇廿五―天平廿―戊子十一月廿六
　日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　改乎
　天皇行幸菅原、一百人得度、菅原政花光寺ト云額
　給フ
行年八十二歳
　　　　　　阿閉天皇　日本第四八代高野天皇
　孝謙天皇即位元年天平二十一―天平勝寳元―八月十八日
　改正月十四日、於平城京中嶋宮奉請大＃而太
　　聖武
　上天皇中宮皇后并三人御出家、受＃戒、成＃御
　弟子也、
　太上天皇御名勝満、中宮御名徳満、皇后御名萬
　　福是也、即日改大僧正號大＃云云、後高野姫天皇
　　受戒為尼、法名法基、惣＃戒弟子緇素満於天下
　云云
又報恩院 在河内国交野郡楠葉郷
長岡院　在菅原寺西岡
　　　己上両寺、四九院之外也、不記年號云々
天平廿一年二月二日、於菅原寺東南院、右脇臥身
心安穏、数千弟子之中特抜光信摩頂告語、汝為世
間眼、我建立諸院今付属於汝、々能々住持云云、又
數誡諸弟子云、
口虎破身、舌釼断命、使口如鼻、死後無過、又云過守
如鼻令成、虎ハ死シテ皮遺、人死名有、汝等努力、即和歌云
借染ノヤト由女加留奈今更ニ物ナ念ソ佛トモナレ
借染ノハサシ加ルセソ今更二物ナ思ソ佛トヲナレ云々、
即日中夜入滅云云、行年八十二歳己丑云云、
御葬送大和国平□郡々　生馬山東陵云云、
爰京條云民緇素雲集啼哭云云、
大庭院　在和泉国大鳥郡上神郷大庭村
　孝謙天皇二―　天平勝寳二―庚寅三月十五日、追為報恩
　起立云云、如今者号行基院
以前記録、任去延暦廿四年三月十九日菅原別當
威儀師傳燈法師位茲脱、大鎮傳燈法師位福尋、 少
鎮傳燈大法師位□□、等記録并皇代年代両記等日
記状、粗略而記之、而我以菅見之浅智、何及聖慮之
深志矣、寔＃ハ垂利生之跡本朝、及濟度之計於東陸
故和泉之生所ト相似迦毘羅城之古所、大和之入
滅示提河沙羅雙樹之舊儀云云、抑＃入滅之三百余
歳之末、所々院々陵遅、或堂舎朽失有名無實、或殿
堂乍有破壊顛倒矣、傳聞五竺八塔聖跡拝人、皆滅
四重五逆之罪、震旦五山之霊崛参者、併遁三途八
難之苦云云、 然而彼者或総嶺弱水之道渺々、或滄湖
涛波之海漫々、凡類尚難攀、況東夷人乎、只我朝人
可拝於此聖跡、倩思大＃之利生濟度之方便、従在
世利生之願、至于今无止矣、
所謂、在世入海底尋五障令傍生、滅後出泉州度十
善之人生、震旦ト清涼山之霊崛崛、本朝宿神埼院之
□屋、従沙羅林月隠上□城音止以来、弘経大士雖
多在々所々、願生々世々能令助尺迦之化儀云云、
抑日、依弘経之＃者、出生有二縁云々、
所謂、貴種善種也、高志者貞知者、漢朝為貴種、日域
為善種矣、但王胤雖貴、他州客為民、賤家雖疎極、位
人己貴矣、譬如媼女産高祖、猶似鹿母宿獣腹矣、抑
齊朝養千駟、耻顕死後、首陽食紫蕨仁傳後代者也、
曲余者戎之賢臣也、秦繆公賞以客禮、王仁者漢之
文人也、我欽明顧以能地矣、自昔君惜於人、民仰於
仁云々、爰至聊有宿志、私馳本縁、卿公誰知、我及知命、
獨憶聖、唯是将慕年渡、一灑古人記文而己、昔時聖
跡之傅方有於己、今日眼前記真慙於人、□達之士
願嘲□之思失矣、于時安元元年乙未九月十日、氏司
二千石泉高父宿禰
　本云
　　建保二年甲戍七月十日書写了

「右
行基年譜
　水戸市常盤町　 彰考館文庫所蔵
　明治十八年七月　託写了　　　」
 
　　　註　　記

文字の大きさや改行など原文と異なる部分があります。



　「十月比」(ソツキ)卒記・比→美努王没

　「西」
　「大津」

　即位は「持統天皇十一年(六九七)丁酉」、文武天皇崩は、
　慶雲四年丁未と大化三年丁未は六十年差がある。
　同年は「大宝二年(七○二)」

　『続々』は「手偏に妻」とする。

　『続々』は「度」とする。「伏通樋」は三字。





　『続々』、「旧里」の上に「還」を補う。
　『続々』、「里カ」と註す。『勇魚取』

　『続々』、「右京」とする。「古京」がよい。
　『続々』、「人不知カ」と注す。


　三層でない。

　「為」がよい。「今」は「為」とする。
　「尚」がよい。



　「末」がよい。


　※『続々』、「戊寅年ハ行年七十一天平十年戊寅乎」
　「巳」が正しい。以下同様。



　大修恵山、為奈大村墓誌出土地大和国葛上郡穴虫

　『続々』、「午」・「?トウ・フタ」なし、カケル。
　「横山」は「木嶋」
　七八四七
　八四




行年四十三歳　 

　「四年」、『行状記』正月十五日母逝化。
　「壬子」、『続々』、二字「□」
　『伝』は、「捐三祇之遶期、荷四弘之重担、紹隆為業、
　弘濟為宗」とする。
　元明即位は「慶雲四年(707)」
　『続々』、「域」と直す。
　「陵」が正しい。
　「七」が正しい。「□」→「辛、山」脱。

　「日本根子高瑞浄足姫天皇」
　『続々』、「飯」に直す。「氷」が正しい。

　『続々』、「大」とする、「大和国平群郡」「群」(ムラ)なし。
　『続々』、「氷カ、姉カ」と註す。
　『続々』、「二カ」とする。
　『続々』、「辛」有。「七、太」が正しい。

　『続々』、「二カ」とする。「二年」が正しい。

　「部」『続々』、「郡」とする。


　「日下」の誤り。
　辛酉の「辛」脱。
　「受」とすべきか。
　『続日本紀』は、六日とする。
　「田」脱。
　「又女」


　『続々』、「妨」とする。「女の方=蜂」



　「廿六」が正しい。


　清浄土院『続々』は「清浄上院」
　「葦田里」他資料に見えない。『続々』、「□穴郷」。
　「日下部」

　『作者部類』、「行基、神亀二年六月、將二諸弟子一、行
　至二山崎一、河不レ得レ船、俄滝留、河中見レ有二一大柱一、
　大菩薩問云、彼柱有二知人一矣、或人申云、往昔尊船大
　徳所レ度橋柱云云爰大菩薩願、従二同月十三日一、始度二
　山崎橋一」『続々』、「崎」「耆」

　「寅」脱。

　聖武天皇四年は「神亀四年」基王誕、同五年没。




　「已」が正しい。以下同じ。





　「辛未」脱。

　「丹比」が正しい。
　『崑陽』、「施院」は「池院」の誤写か



　大屋郷なし




行年六十六歳癸酉


　「末」が正しい。

　『続々』、「疏」
　『続々』、「无家」、「公家」であろう。

　「口」は「以」、「荘」は訂正後。本ノまま「?」様。



　『続々』は「給召」の間に、「故」を補う。

　『続々』は「恩」
　「真福、片、志」の誤写か。□字体なし。
　　「行」は「片」

　　□は「公の下に心」の字、『続々』、「着」とする。




　「枚方」が正しい。『企救郡』『救民の企(一八三七)』


　「久米田寺」の寺号「隆池院」が正しい。
　「上」が正しい。

　「山背」、「宕」、又は「當」とすべき。







　『続々』、「施」とする。






　『続々』は「戸」を「尸」とする。
　『続々』は「弥」を「孫」とする。
　「己」が正しい。

　「庚辰」脱。
　「橋」が正しい。「＃=菩提」
　「狛」が正しい。
　『続々』は「橘橋歟」を欠く。



　「辛」脱。



　『続々』は無。
　『続々』は是。
　「支、卜白支」とすべきか。


　『伝』は「□（獣篇に句の字）顕」、『絵詞』は「応物体」とする。
　『続々』は「頭」を「顕イ」、「日」を「四歟」とする。
　『続々』は「舩」を「船」。
　『続々』は「部」がよいとするが、新川Ｇは否定する。
　『続々』は「右」を「古カ」。


　『続々』、「白玉ノ光イ」と註す。



天平十三年辛己記云辛己云ハ延暦廿三年三月十
　九日所司記云云
　『続々』、「架カ」とする、前では「度」とする。


　山背



　西成

　直道一所　、生馬大山登道


　「丹比郡」であろう。





　前出
　奈良時代「和泉郡」、「部」とすべき。

　「和泉監」、和泉国は天平十二年八月廃止。
　「屋」

　「面」かとする。『有岡・美努岡万』

　「六」

　「池」脱。


　追記、『続々』、改行「尻」から始まる。
　「深」脱、所在地脱。






　『続々』は「舩」を「船」。
　『続々』は「舩」を「船」。
　追記






　追記

　大枝

　「橋」脱カ。
　延暦十三年までは「山背」と書いた。
　「崑」は山偏に昆である。「混陽院」もある。
　「垂水」とすべき。
　「郡」脱。


　「石原」とすべき。在原業平


　「屋」脱。



　「正、法行」とすべき。『名が逆』
　『続々』、「歳」有。



　「何、云、弟」を「行、公、第」とすべき。
　『続々』、「蕃」


　「僧」とすべきか。
　『続々』、「提」

　『続々』、「提」


　■は病ダレに亜の字
　




　「甲申」なし。

　「戸」なし。

　『続々』、「肪」。




　「津」なし。




　『善蓋』『日本霊異記』へ

　「戊子」なし。

　「改、喜の草体」

　「感宝」が正しい。









　『ナガ・サイ』の暗号か。
　追記



　「教」とすべき。





　『続々』、「巳」とする。
　「郡」脱。
　「城」「公」とすべきか。
　『オオニワ=王仁ハ』


以前記録、任去延暦廿四年三月十九日　　　前出「廿三」とする。
　茲脱→「茲(ここ)脱す」













　『事典』「人生」とするが、「人主」が正しい。
　『続々』は、□屋、□城の□(草冠に弟の下部分)を「茅」に改める。




　『続々』→「已」
  首陽山→伯夷・叔斎




　『続々』→「已」
　一字空白
　一字空白




　『続々』、「右」以下なし。







『行基年譜』参考資料
『続々群書類従』428-437頁
井上薫編『行基事典』国書刊行会、1997年、255-275頁
井上光貞「行基年譜、特に天平十三年記の研究」『律令国家と貴族社会』竹内理三博士還暦記念会編、
　　　　　　吉川弘文館、1969年、255-275頁
PDF「Ⅱ『行基年譜』校註」『社会的結合としての行基集団に関する基礎的研究：研究成果報告書』
　　　　　　代表者新川登亀男、吉川弘文館、1999年、12-29頁
[行基論文集]

[忍海野烏那羅論文集]
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